櫻井翔『新空港占拠』黒幕の正体がたいして気にならない致命的な “しょぼさ”…敵の獣たちが馴れ合いすぎるのも萎え萎え

黒幕「山猫」はいったい誰なのか!? ……が、たいして気にならないのが致命的な気がしてならない。

2月24日(土)に第7話が放送された嵐・櫻井翔主演のサスペンスドラマ『新空港占拠』(日本テレビ系)。昨年1月期に放送された『大病院占拠』の続編だ。

前作は、奇怪な鬼のお面をかぶった武装集団に病院が占拠されてしまい、刑事・武蔵三郎(櫻井)が鬼たちに翻弄されながらも事件解決を目指す物語だった。今作は新設された空港が、獣(けもの)のお面の武装集団に占拠されてしまうストーリーになっている。

世帯平均視聴率(ビデオリサーチ調べ/関東地区)は第1話7.5%でスタート。第4話で5.1%まで下がり、先週放送の第7話は4.8%まで下がっているが、本作はコア視聴率が高いので日テレ的には問題ないらしい。

■黒幕の正体が明かされても、きっと驚かない

10人以上いる獣たちはすでにほぼ全員がお面を外した姿を明かしており、リーダーの「龍」を高橋メアリージュンが演じ、SixTONES・ジェシーが演じていた謎の男が「鼠」だったことなどが判明している。

ただ、前作『大病院占拠』に比べ、今作『新空港占拠』は仮面のキャストたちが知名度の低い役者が多く、素顔が明かされてもあまり驚きはなく、「え、誰?」となる視聴者が続出。そのため、前作よりコストカットされているという声が噴出しているが、とりあえずそれは置いておこう。

問題は、劇中で最大の焦点となっている黒幕「山猫」の正体について。

山猫は政財界を裏で牛耳る力を持つ人物で、要するに巨悪。山猫を恨む獣メンバーたちは正体を暴き、罪を償わせることが目的のようだ。つまり、山猫が誰なのかは劇中のキャラクターたちにとって重要なファクターであると同時に、視聴者への最大の引きにもなっている。

だが正直、そこまで興味が惹かれない。

山猫の正体はすでに登場しているキャラクターの誰かなのだろうが、ショッキングさに欠ける人物が山猫の可能性が高い。端的に言うと、登場しているキャラクターたちが役者の格としてラスボスを担うには荷が重いのだ。

考察をしているSNSユーザーの声を見ると、主人公・三郎の姉である武蔵二葉を疑う声が多いが、演じているのがバイプレイヤー・奥貫薫なので、ラスボスを演じるには知名度としていまいち。

また、行方不明となっている三郎の兄・武蔵健一が山猫だという説も根強く、整形手術をして偽名を名乗っているというような可能性もあるが、健一ぐらいの年代の登場人物で大物俳優はいない。

せめてもう少し、大物俳優を配置しておけば、「山猫はいったい誰なのか?」に興味を持てたと思うのだが、このままでは誰が山猫でも「ああ、そうですか」ぐらいの感想しかない “しょぼさ” なのだ。

たとえば、前作から登場する、比嘉愛未演じる三郎の妻や、ソニン演じる三郎の同期の管理官など、主人公が信頼を置くレギュラーキャラが実は山猫だったという真相であれば衝撃的だが、さすがにそれはないだろう。

■ブラッド・ピットの『セブン』なみの衝撃を!

山猫の正体がたいして気にならないこと以外にも、個人的にどうにも萎えてしまったのが獣たちの生ぬるさ。獣たちがやさしすぎたり、仲間意識が強すぎたりして、お涙ちょうだいを狙っているのが見え見え。

捕まったメンバーを助け出すために爆弾を止めようとする獣がいたり、空港占拠の数カ月前、アジトで訓練中に仲よく談笑したりと、馴れ合いしすぎているのも萎え萎え。これでは安っぽい美談になってしまう。

ジェシー演じる鼠は単独行動で暴走しており、三郎の妻を殺そうとしているのだが、おそらく無事に救出されるのだろう。だが、視聴者の予想を裏切る斜め上の展開としては、本当に猟奇的に殺害されてしまうぐらいのストーリーでもいい気がする。

ブラッド・ピット主演の映画『セブン』(1995年)の結末は、30年ほど経った現在でも映画ファンの間で語り草になるほど衝撃的だったが、それぐらいのインパクトを目指してもいいのではないか。

べつに猟奇的なシーンや展開を求めているわけではない。ただ、想定を超えないストーリーで終始するのはやめてもらいたい、ということだ。

――今夜放送の第8話で、視聴者の予想を大きく裏切り、物語にぐいぐい惹き込まれる展開になることを期待したい。

堺屋大地

恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。『日刊SPA!』にて恋愛コラムを連載中。ほかに『現代ビジネス』『文春オンライン』『集英社オンライン』『女子SPA!』などにコラムを寄稿

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