茨城・高萩市と茨城交通 AIバス、生活支える 予約で最適経路、乗客増

人工知能を駆使したバス「マイライドのるる」=高萩市高萩

茨城県高萩市と茨城交通(同県水戸市)が運行する人工知能(AI)を駆使したバス「マイライドのるる」が、市民の足として定着しつつある。AIが最適な経路や運行ダイヤを導き出すのが特長で、本格運行から1年余りで利用者数は延べ3万人超。運転免許証を返納した高齢者などの生活を支える貴重な移動手段となっている。

■アプリで予約

のるるは、利用者の呼び出しに応じて運行する乗り合いバスで、専用アプリか電話で予約できる。利用者が少ない日中の路線バスを転用する形で2022年10月に本格運行を開始した。

運行に当たっては、路線バスの停留所96カ所に加え、標柱のない仮想バス停141カ所も開設。利用エリアが拡大したことで、運行本数が少ない日中の時間帯に利用しやすくなったり、待ち時間の減少につながったりしている。

市企画財政課によると、平日午前8時半~午後3時の平均利用者数は、同社が路線バスとして運行していた21年1月の81.7人に対し、AIバス本格運行後の23年11月には94.4人と10人以上増えた。

昨年に運転免許証を返納したという同市肥前町の永井滋さん(87)は、仮想バス停を使って週6回以上は買い物などに出かける。「とにかく便利。AIバスなしに生活が成り立たないほどだ」と話す。

■活用幅を拡大

人口減少や担い手不足などに伴う路線バスの減便が相次ぐ中、市は「利用客が減れば、公共交通の存続が厳しくなる」と危機感をのぞかせ、持続可能な交通手段としてAIバスに期待を寄せる。

同市人口に占める65歳以上の割合は21年1月現在で36.5%と、3人に1人以上が高齢者だ。運転免許証の自主返納も進む中、市民からは公共交通機関の維持を望む声が寄せられており、同課担当者は「便利なバスと知ってもらい、活用してほしい」としている。

利用増や認知度向上に向け、市と同社は案内パンフレットや動画の制作、出張相談窓口の設置なども推進。アプリを使った利用者限定の割引や市内飲食店と連携したサービスも提供するほか、バスを所有していない幼稚園や小学校の校外活動などにも活用の幅を広げている。

■狭い道通れず

今後の課題は、バスが通行できない一部地域の運行だ。

市などによると、同市秋山や島名など狭い道が多い地域の一部では現在、仮想バス停を設置できない。また、同社の路線バスを活用しているため、車両を小型化すると朝夕の通勤通学時間帯に対応できなくなる。同社営業所は日立市内にあるため戻ってバスを交換することも難しいという。

エリア拡大を望む要望について、市は「現状では厳しい」としながらも、課題解決へ向け同社と打開策を探っている。

市は、AIバスの利用拡大は地域活性化にもつながるとみており、「市民や事業者と協議しながら、より良い公共交通の在り方を考えたい」としている。

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