40~60代「最近気分が落ち込みやすい」…“男性の更年期障害”に効果的、意外で身近な食べ物【医師が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

最近耳にする機会が増えてきた「男性の更年期障害」。女性の更年期障害との違いや症状を改善するためのポイントはどのような点でしょうか? 日本初の男性更年期障害クリニック「オトコノクリニック」を開院した中村有吾院長が解説します。

「男性更年期障害」とは?

「男性更年期障害」は、男性が年をとる過程で経験する生理学的および心理社会的な変化を指す用語です。一般的に、男性更年期障害は40代から60代にかけての年齢層で現れることがありますが、個人差があります。以下に、男性更年期障害の特徴や心身への影響についてまとめます。

生理学的変化

男性ホルモンであるテストステロンのレベルが徐々に低下します。これにより、筋肉量や骨密度が減少し、体脂肪が増加する可能性も。性機能の低下が見られることがあり、性欲の減退や勃起障害が起こる場合があります。代謝率が低下し、体重管理が難しくなることがあります。

心理社会的変化

気分の変化やイライラ、不安、うつ症状が現れることがあります。これはホルモンの変化に関連している可能性があります。自己評価や自己価値感に関する問題が生じることがあります。仕事や家庭生活へのストレスへの対処が難しくなることがあります。

健康への影響

低テストステロン状態は骨粗しょう症や心血管疾患のリスクを増加させる可能性があります。精神的な健康にも影響を与えることがあり、うつ症状や不安障害の発症リスクが増加することがあります。

女性の更年期障害よりも、気付きにくい

男性の更年期障害は、いくつかの要因から女性の更年期障害と比較し、気付きにくいものです。

まず「症状の違い」です。女性の更年期は比較的明確な身体的な症状がありますが、男性の更年期障害は症状がより広範囲であり、かつ個人差が大きいため、気付きにくいことがあります。そのため、男性の更年期障害の症状はほかの健康問題と混同されやすいこともあります。

次に「ゆっくりとした進行」です。女性の更年期障害は生理的な変化により比較的急速に訪れる場合がありますが、男性の更年期障害は徐々に進行することが一般的です。そのため、症状がゆっくりと現れるため、男性自身や周囲の人々が気付きにくいことがあります。

続いて「文化的タブー」。男性の更年期障害に関する話題は、女性の更年期障害ほど一般的には語られません。このため、男性自身や周囲の人々が男性更年期障害の症状に気付きにくいことがあります。また、男性のなかには、自身の弱さや年齢の取り扱いに対する社会的なプレッシャーから、症状を認めたり、それについて話したりすることを避ける傾向がある場合もあります。

最後に「一般的な認識の欠如」。そもそもではありますが、多くの人々が更年期障害といえば、女性の更年期障害についてのみ認識しており、男性の更年期障害についての知識が不足していることが一因となっています。

症状を改善するのに欠かせない4つの生活習慣

更年期障害の症状を改善させるためにはいくつかの方法がありますが、自分でできる方法としては、下記の4つが重要になります。

1.質の高い睡眠

睡眠不足はテストステロンの減少を引き起こす可能性があり、更年期障害の症状の悪化に繋がります。そのため、質の高い十分な睡眠を確保することが重要です。毎日一定の睡眠スケジュールを保ち、寝る前のスクリーンタイムを減らし、リラックスできる環境を整えることで、睡眠の質を向上させることができます。

2.バランスのよい食事

食事の面では、やはりバランスの取れた食事を心掛けることが重要です。特に野菜、果物、全粒穀物、健康な脂肪(魚、ナッツ、オリーブオイルなど)を含む食事が推奨されます。またテストステロンの生産に必要不可欠な亜鉛が豊富に含まれている食材として牡蠣やレバーはよく知られています。ほかにも、意外かもしれませんが、ビタミンDが豊富な魚類やキノコ類もいいとされています。

一方、過剰なカフェインやアルコールの摂取は睡眠やホルモンバランスに悪影響を与える可能性があるため、適度な量に抑えることが大切です。

3.適度な運動

適度な運動はホルモンバランスにもいい影響を与えます。有酸素運動(ウォーキング、ジョギング、サイクリングなど)や筋力トレーニングを組み合わせると効果的です。特に筋トレはテストステロンの分泌を促進させますが、過度な運動はストレスホルモンのコルチゾールを増加させ、逆効果になる可能性があります。適度な量に留めることが大切です。

4.ストレス管理

ストレスはホルモンバランスに大きな影響を与え、更年期障害の症状を悪化させる可能性があります。深呼吸、瞑想、ヨガなどのストレス管理術を取り入れることでストレスへの対処可能です。また趣味に時間を割いたり、必要であれば専門家やカウンセラーからストレス対策のアドバイスを受けることも有益です。

更年期障害が疑われる場合は…

男性更年期が疑われる場合は、以下のような身体的、心理的な症状が現れたり、生活の質に影響を与えたりする場合があります。これらの症状が持続的であり、日常生活に支障をきたす場合は、医師に相談することが重要です。

・性機能の変化:性欲の減退、勃起障害、性的なパフォーマンスの低下などが見られる場合があります。

・気分の変化:イライラ、不安、うつ症状、情緒不安定などが現れる場合があります。

・疲労感:疲れやすさ、活力の低下、体力の減退などが見られる場合があります。

・睡眠障害:眠りが浅くなったり、寝つきが悪くなったり、夜中に目が覚めやすくなったりする場合があります。

・体力や筋力の低下:筋肉の減少、運動能力の低下、身体の柔軟性の低下などが見られる場
合があります。

・骨密度の低下:骨粗しょう症のリスクが増加し、骨折しやすくなる場合があります。

・脂質代謝の変化:高コレステロールや高血圧などの心血管疾患のリスクが増加する場合があります。

これらの症状は個々に現れる場合もありますし、複数の症状が同時に現れる場合もあります。

また、これらの症状は男性更年期障害に限らず、ほかの健康上の問題やストレスによっても引き起こされる可能性があるため、医師に相談して詳細な評価を受けることが大切です。医師は適切な検査や評価を行い、適切な治療法や管理方法を提案してくれます。もし更年期障害が疑われる場合は、一度クリニックを受診されてみてはいかがでしょうか。

中村 有吾
オトコノクリニック院長/なかむら産業医療コンサルティング事務所代表産業医

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