「これが自分たちの勝ち方」アビスパ福岡はいかにして攻撃自慢の横浜をスコアレスに封じて勝利できたのか【コラム】

日産スタジアムで3月1日に行なわれたJ1リーグ第2節で、アビスパ福岡が横浜F・マリノスを1-0で破った。

後半開始まもない51分、左サイドからMF重見柾斗が折り返したボールをFW紺野和也が左足で蹴り込んだ。Jリーグのデータによれば、福岡は過去12度の対戦で1分け11敗と、横浜とのアウェーゲームで一度も勝ったことがない。長谷部茂利監督は「嬉しい」と素直に喜びを口にした。

【厳選ショット】紺野和也の得点を最後まで守り切り、“天敵”から勝利をもぎ取る!|J1第2節 横浜0-1福岡

「これが自分たちの勝ち方だったと思う」と就任5年目の指揮官は振り返った。福岡といえば堅守速攻で勝利を手繰り寄せるイメージ。ホームで行なわれた2月24日の開幕節は、昨シーズンのJ1で得点数3位の北海道コンサドーレ札幌と0-0の引き分け。この横浜戦も、同じくJ1最多得点を誇った相手にシュート数で5-17と圧倒されながらも、無失点で凌ぎ切った。

攻撃力の高い相手をスコアレスに封じる守備力を持つチームが、いかにして得点を奪い勝利につなげることができるか。まず福岡が活かそうとしたのが、186センチのFWウェリントンの空中戦。前半は左のFW岩崎悠人、右のDF湯澤聖人のクロスから、ヘディングシュートで相手ゴールを脅かす。過去に福岡を守備一辺倒に追い込むこともあった横浜が「『アビスパ、やるな』と感じてくれたのではないか」と、長谷部監督は手応えを語った。

「普通にやって勝てる相手ではない。何かをぶつけて戦わなければならない」(長谷部監督)、「普通にやっても太刀打ちできないというのがある」(DF奈良竜樹)というのが、福岡側が感じている横浜との立ち位置。そこで、守備ではお得意の5バックでスペースを消すとともに、ゴール前を固める堅守を築き、攻めては左サイドのDF前嶋洋太を相手陣内に送り込むなど策を凝らした。

決勝点のシーンも、その前嶋が絡んで左サイドを崩し、MF喜田拓也の背後を巧みに突いてMF前寛之からの縦パスを受けた重見が、浮き球のクロスを警戒する横浜守備陣の裏をかくようなグラウンダーのクロス。ウェリントンが相手を引きつけて作ったスペースに走り込んだ紺野が決めた。

福岡にとって、これが後半唯一のシュート。その後は横浜の猛攻にさらされる時間が続いたが、奈良を中心に身体を張った守りでゴールを割らせず。GK永石拓海の守りも安定感にあふれ、86分にペナルティーエリア内で放ったFWヤン・マテウスのシュートを渾身のセーブで防いだ場面は、勝敗の行方を左右するハイライトのひとつだった。

福岡の次節は3月9日(土)、ホームに戻っての湘南ベルマーレ戦。勢いに乗って今シーズンのホームゲーム初勝利を目ざす。

取材・文●石川 聡

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