【インタビュー 21歳の肖像│後編】広島レジーナ柳瀬楓菜「『楓菜、行け~!!』って声がすると、一気に元気になる。みんなのために戦いたい、広島はそう思えるチーム」

いよいよWEリーグ再開、「得点、狙います!」。3/3ピースウイングで新潟Lと対戦へ。

サンフレッチェ広島レジーナへの溢れる愛情を前編で語ってくれた柳瀬楓菜(やなせ・ふうな)だが、21歳という年齢でプロフェッショナルのアスリートとしてのキャリアを着々と積み重ねている。後編では、そんな彼女のプライベートや素顔に迫ってみたい。

――柳瀬選手が今シーズン、新たに力を入れていることは?

柳瀬楓菜(以下、柳瀬) 一番は攻撃です。特にシュートには力を入れています。得点、狙います! ボランチとしては流れをもっと読んで、状況によってプレーを変えられるようにしたいです。それを全員が共通理解としてできるチームになれれば、本当に無敵だと思います。

――11人いれば必ずズレは生じますが、どこまで合わせていけるか、ですね。

柳瀬 それができてくると無駄に走らず済むし、相手を走らせることもできます。個々で力がある選手が揃っているので、それほど時間はかからないと思っています。(昨シーズン終盤)その時期にみんなで“こうありたい”という話をして少しずつ形が出始めて。そこから成し遂げられたWEリーグカップ優勝でした。

――最もその意識が出ていたのがプレッシングではないかと。相手は何とかかわしても、そこにまたカバーリングが来ていて……相手は本当に嫌だったと思います。

柳瀬 そこ、本当に頑張れるチームなんです。ボールへの執着心はゾンビですよ、ゾンビ(笑)!

ボランチとして副キャプテンも担う広島の柳瀬楓菜。写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA

――柳瀬選手はピッチを離れても、サッカーのことをいろいろ考えるタイプですか?

柳瀬 いや~継続って無理なんですよ。あ! この発言、マズいですか(笑)? でも同じことをずっと続けるって難しいですよね、飽きちゃうんです。だからオン・オフはしっかり分けています。でも計画は立てられないし、立てても守れない(苦笑)。だからオフの時は、ひらめき派ですね。

――どんな行動をひらめくことが多いですか?

柳瀬 自然に触れます。景色がキレイなところに行って眺める(笑)。よく近さん(近賀ゆかり)とかにも「若くないね~」って言われます……。でも一人は嫌なので、必ず誰かを連れ回しますね。

――充実していますね(笑)。

柳瀬 そうですね、サッカーも楽しいし! やっとケガから回復してピッチに集中できて、余裕も出始めたので、新しいトレーニングにも取り組んでいます。成長を実感できて、もっとこれができるんじゃないか、もっとこれをやってみたいっていう欲が出てきています。

「全部のボールを狩り取ってやりたい(笑)!」写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA

――一番追い求めているものは?

柳瀬 ボール奪取のところを磨いてるので、全部のボールを狩り取ってやりたい(笑)! あと以前よりパスの精度も正確になってきたと感じます。より自分のものにできている感覚があって、やっと口に出して自信持って言えるようになりました。もっと磨いていきたいです。

――これからが楽しみです。

柳瀬 まだまだですよ! 今は貪欲でいろんなメニューをこなしていきたくなり、「次のメニューどんどん下さい!」って前のめりです(笑)。試合中にもそういった姿勢が少しずつ出てきているので、どんどんボールに向かって刈りに行っていたら、「今日の楓菜は調子がいい!」と思っていただいて大丈夫です(笑)。全然ボールに触っていなかったら、声援をいただければ……一気に元気になって頑張れると思います! 褒められると伸びるタイプです(笑)。

――立ち上がりに上手く行かない時の修正方法は?

柳瀬 WEリーグカップの決勝、前半あまりボールを奪えずにいました。そうしたなかで一回、アルビレックス新潟レディースの上尾野辺(めぐみ)さんのボールをバン! と奪えたんです。その瞬間、いい感覚を取り戻せました。立ち上がりは緊張していたんでしょうね(苦笑)。流れに乗れずにいて……そこでは近さんのプレーに心を打たれました。そんななか、右サイドでめちゃくちゃ身体を張って守ってくれていた。それを見て「自分は何をやっているんだ。もっと頑張らなきゃ!」ってハッとさせられました。

――近賀選手、楽しそうでした。

柳瀬 それを見て勝手に奮い立っていました。自分もやらなきゃ! って。そのようにプレーに響く選手が広島には多いんだと思います。だから誰かのプレーでスイッチが入る。それは誰にでも起こることだし、それが今の広島の強みでもあるんです。

WEリーグカップを制して広島レジーナ初の主要タイトルを獲得!写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA

――どの試合でも「魂」を感じることが多いのは、そういうことなんですね。

柳瀬 本当にみんなのために戦いたいって思うんです。広島のベンチでは福さんが率先していつも声を張り上げてくれています。あの声が、みんなに広がってるいるんです。広島のベンチは自慢です。みんなが大声を張り上げて、チャンスになれば「楓菜、行け~~~!!!」って声がする。私、ベンチが総立ちなのを広島に来て初めて見ました。だから、みんなで戦うことができるチームになれるんだと思います。

【インタビュー 21歳の肖像│前編】広島レジーナ柳瀬楓菜「ボールを奪えたり、点を獲れたり、いいプレーができれば、疲労なんてゼロになります」

※なでしこジャパン(日本女子代表)がパリ・オリンピックの出場権を獲得し、WEリーグは今週末に再開される。サンフレッチェ広島レジーナは3月3日14時から、新スタジアムのエディオンピースウイング広島で、アルビレックス新潟レディースと対戦する。

取材・文・写真/早草紀子

広島レジーナの柳瀬楓菜。写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA

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