「俺はお前を誇りに思うぞ!」憧れのデローザンから称賛されたトルコ出身の万能戦士オヌラルプ・ビティム<DUNKSHOOT>

少年時代から憧れていた選手と一緒にNBAのコートに立ち、ともに勝利を手に入れ、その本人の口から、「誇りに思う」と称賛される――。

想像しただけでも夢のような話だ。

シカゴ・ブルズに所属するトルコ代表のシューティングガード、オヌラルプ・ビティムが体験したのが、まさにそんな出来事だった。

昨夏、ビティムはブルズと2WAY契約を締結し、2月24日にスタンダード契約に更新されると、28日のクリーブランド・キャバリアーズ戦で、本契約後初の出場を果たした。

試合は2度のオーバータイムにもつれこむ大接戦となったが、ブルズが132-123で制し、ビティムは約28分間の出場で10得点、6リバウンド、コビー・ホワイトと並んでゲームハイの+16を残した。

特筆すべきはシュート成功率の高さで、3ポイントは2本中2本成功、フリースローも2/2、4本打ったフィールドゴールのうち落としたのは1本のみと的確なプレーで勝利を引き寄せる一端を担った。

「今の気持ちを言葉で表現するのは難しい。それは英語だからという意味じゃなくて、僕の母国語でもね(笑)。それほど、この瞬間を待ち焦がれていたから」
試合後のインタビューで、本契約選手として初出場した感想を語ったビティム。

「とにかく、その時がいつ来てもいいように準備をしていた。チームメイトやコーチも、すごく助けになってくれた。いつかチャンスが来ることはわかっていたけれど、それがいつなのかはわからなかった。選手にできるのは、常にフィジカル的にもメンタル的にも準備万端にしておくこと。だからひたすらそれを続けていたんだ」

ビティムは2WAY契約期間中も、NBAのコートに2度立っているが、いずれも5分以下の出場で無得点に終わっていた。そのため、このキャブズ戦が彼にとってNBAで初めてネットを揺らした試合となった。

「コートに立ってからは緊張しなかったよ。僕はバスケットボール選手で、これが自分のやることだからね。コートに立った時はワクワクして、信じられないような気持ちだったよ」

試合後、両軍最多の35得点を叩き出したデマー・デローザンがビティムをハグで称えたが、エースがビティムにかけた言葉が、「俺はお前を誇りに思うぞ!」という熱いものだった。

「僕にとってこの言葉が意味することは大きいよ。彼の姿を見て育った僕にとって、彼は憧れの選手の1人だからね。そんな彼と一緒にコートに立って、一緒に勝利を手にすることができた。彼からの言葉は、信じられないくらい光栄なことだった」
そうビティムは喜びを口にしたが、デローザンはマイクの前でも彼の活躍を称賛している。

「今日のような重要な試合で活躍して、勝負を決め切るのは素晴らしいことだ。(ビティムとは)それほど一緒に練習できていなかったけど、僕らの攻撃をしっかり理解してリズムも掴んでいた。彼がやってのけたのは、信じられないくらいにすごいことだよ」

実際、ダブルオーバータイム終盤、ビティムが冷静にフリースローを2本とも沈めたシーンは、リードを6点に広げてブルズの勝利を手繰り寄せる大きなプレーとなった。

デローザンだけでなく、同じ欧州出身のニコラ・ヴュチェビッチ(モンテネグロ)らチームメイトたちは、試合の最中も頻繁にビティムに声をかけてくれていたそうだ。

「チームのみんなもいつも励ましてくれた。こんな仲間やコーチがいるチームにいられて、僕は本当にラッキーだ」
両親ともバスケットボール選手(母親はトルコ代表)というサラブレッドの24歳は、若い頃から注目を集めるプロスペクトで、2015年の欧州選手権では、トルコ代表のトップスコアラーとしてベスト4進出に貢献。大会MVPのジャナン・ムサ(ボスニア・ヘルツェゴビナ/元ブルックリン・ネッツ)らとともにオールトーナメントチームに選出されている。

大会後はアメリカのハイスクールに進学したが、卒業後はトルコに戻って父も活躍したアナドール・エフェスに入団した。

ビティムの強みはシューティングで、とりわけ局面に応じて繰り出せるバラエティの豊富さも魅力だ。厳しい体勢からもシュートを決められるボディバランスを備え、相手を欺くフェイクやステップの手技も多く、フィジカル能力やディフェンスへの意識も高い。さらに母国リーグではスラムダンクコンテストで優勝するほど、身体能力も折り紙つきだ。

Gリーグのウィンディシティ・ブルズでは、12試合に先発出場して平均16.7点、3.9リバウンド、4.1アシスト、3ポイントは成功率(43.3%)と成功数(39)でチーム最多をマークしていた。

ルーキーとはいえ、今月31日で25歳。NBA参入前からプロとしてプレーし、体力的にも絶好機を迎える段階にある。

トルコの万能戦士は、プレーオフ圏内を目指して追い上げを図るブルズの起爆剤となれるか。

文●小川由紀子

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