現役時代に「年収1000万円」でも、老後は年金だけだと「生活苦」に!? 実際の手取り額についても解説

年収1000万円の会社員の年金額

公的年金は、納めた保険料と期間によって金額が決まります。また、会社員が受け取れる公的年金は老齢基礎年金と老齢厚生年金です。ここでは20歳から60歳まで働いた東京都在住の会社員で、これまでの収入を平均した年収は1000万円だと想定して計算していきます。

老齢基礎年金

老齢基礎年金は、受給資格期間が10年以上あれば誰もが受け取れる年金です。受給資格期間は、保険料を納めた期間と保険料を免除された期間を合算して計算します。満額受け取れる場合は年間で79万5000円です。

老齢厚生年金

老齢厚生年金は、老齢基礎年金を受け取れる人が厚生年金保険料を納めていた場合に受け取れる年金です。老齢厚生年金は報酬比例部分、加給年金、経過的加算の合計額となっています。ここでは簡略して報酬比例部分のみと考えて計算します。

報酬比例部分は「平均標準報酬額×5.481÷1000×平成15年4月以降の厚生年金保険加入期間の月数」の計算式で求めることができます(平成15年4月以降に厚生年金保険に加入している場合)。平均標準報酬額については年収を12ヶ月で割った金額を等級に合わせます。

事例のように年収が1000万円の場合を計算式にあてはめると、「65万円×5.481÷1000×480月(勤続年数40年の場合)」です。報酬比例部分は年額で170万72円となります。この金額が厚生年金保険の年金額です。

年金額は約250万円

老齢基礎年金が79万5000円、老齢厚生年金が171万72円なので、合計額は250万5072円です。月額に換算すると20万8756円を受け取れます。しかし、この年金額から税金や健康保険料が引かれてしまうので注意が必要です。

手取りは約37万円も引かれてしまう!

年金額は年間で250万5972円ですが、介護保険料や健康保険料、所得税、住民税が引かれてしまうので手取り額は額面よりも少なくなってしまいます。

介護保険料

介護保険料は自治体によって金額が異なります。
東京都新宿区を例にすると、本事例の場合の介護保険料は月額8960円です。年額は10万7520円になります。

健康保険料(後期高齢者医療保険料)

健康保険料は年金額から所得控除を引いた年金所得によって決まります。東京都新宿区の早見表を確認すると、本事例の場合の健康保険料は月額1万2760円です。年額は15万3120円になります。

所得税

公的年金は所得税も引かれます。年金にかかる所得税は、各種控除を引いた所得金額に所得税率5%をかけることで計算可能です。

本事例の場合は年金額が250万5072円、公的年金等控除が110万円、社会保険料(介護保険料と健康保険料の合算)が26万640円、基礎控除が48万円なので、66万4432円が所得金額になります。66万4432円に5%をかけると3万3221円です。

住民税

住民税は所得割と均等割の2つで構成されています。所得割は年金収入から各種控除を引いたものに10%の税率をかけたものです。均等割は一律で5000円になります。

所得割を計算すると、年金額が250万5072円、公的年金等控除が110万円、社会保険料(介護保険料と健康保険料の合算)が26万640円、「住民税」の基礎控除43万円なので、71万4432円が課税所得です。ここに10%をかけるので7万1443円が所得割になります。均等割と合わせると7万6443円です。

手取り額を把握し、生活費を考えてみましょう

平均年収1000万円の会社員の年金額は年250万5072円ですが、実際の手取り額は年213万4768円です。約37万円が引かれてしまうことが分かりました。年金額を月額に換算すると17万7897円と、20万円をきってしまうことが分かります。

月収17万円であれば1人暮らしには十分と考える人もいるかもしれません。しかし、現役時代の年収が高い場合、定年後の収入に生活水準を合わせられないと生活苦におちいってしまう可能性もあります。

年収が多いと年金額も多くなりますが、引かれてしまう金額も多くなるので注意が必要です。額面通りの金額が受け取れるわけではないので、手取り額がいくらになるかを確認し、生活費などについて考えることをおすすめします。

出典

日本年金機構 老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・年金額
日本年金機構 老齢厚生年金の受給要件・支給開始時期・年金額
日本年金機構 は行 報酬比例部分
日本年金機構 令和2年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表(令和5年度版)

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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