【プロランナー川内優輝】1歳の息子をもつパパとしての顔。夢は息子と親子マラソンを走ること!

2023年12月の防府読売マラソン大会では、大会最多となる5度目の優勝を。

“最強の市民ランナー”と呼ばれ、現在はあいおいニッセイ同和損保所属のプロランナーとして活動しているマラソンランナーの川内優輝さん。記録よりも記憶に残るレースを心がけているということでも知られています。
実業団のデンソーで活躍した妻の侑子さんとの間に2022年11月に待望の長男、渉夢(あゆむ)くんが誕生しました。
「たまひよONLINE」ではそんな川内夫妻に初めての子育てのことから、プロランナーとしての目標など、さまざまな話を聞きました。全2回インタビューの1回目です。

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川内夫妻の出会いは天国にいちばん近い島、ニューカレドニア!

家族3人、夫婦岩前でパチリ。優輝さんの遠征先に家族も一緒に行くことも多いそう。

――昨年12月の防府読売マラソン大会で大会最多となる5度目の優勝を果たしたあと、家族3人での表彰台が印象的でした。まずは川内家の生活スタイルを聞かせてください。

川内優輝さん(以下敬称略、優輝) 2019年にあいおいニッセイ同和損保とプロ契約をしてから、プロランナーとして活動しています。
一般的な会社員の家庭であれば、多くの父親は平日、仕事をして週末はゆっくり家族と過ごしているのではないかと思います。しかし、わが家はその逆で、私の仕事のメインが週末のレースに参加することです。日本全国で週末に行なわれているレースに出場するために、平日は練習を中心にスケジュールをたてています。講演会などが入ることもあるのですが、基本的には練習以外の時間は家族と過ごします。また、週末のレースも可能なときは家族とともに移動し、家族に見守ってもらいながら走っています。

――練習は侑子さんのサポートもあるのでしょうか?

優輝 妻はときどきベビーカーに息子を乗せて、息子と一緒にジョギングにつき合ってくれたり、タイムを計測したり、レース前後のサポート等もしてくれます。

――2人の出会いのきっかけについて教えてください。

優輝 私は、学習院大学3年生のとき、ニューカレドニアで開催された国際マラソン大会に招待選手として招かれました。そのときに妻も同じように日本学生陸上競技連合から派遣されていました。実は私は、派遣されるべき選手が箱根駅伝のための夏合宿で全員辞退されたので、繰り上げでの参加。妻は実力があり、1位での派遣でした。

――出会ったときの印象をそれぞれ聞かせてください。

優輝 真面目そうな人だなという印象と、本当に強い選手だったので素直にすごいなと思っていました。また所属が三重大学だと聞いて、国立大学でこんなに頑張っている選手がいるんだと、とても驚いたことを鮮明に覚えています。 ニューカレドニアのレースはアベック優勝をしました。今となっては本当にいい思い出です。しかし、そこからすぐにおつき合いが始まったわけではなく、私は埼玉県庁に就職して公務員ランナーに。妻は実業団・デンソー(三重)に所属しました。その後も、2人ともレースを続けていたこともあり、大会で会う機会が増えて、少しずつ連絡をとるようになりました。

川内侑子さん(以下敬称略、侑子) 好印象ではありましたが、まさか結婚することになるとは思ってもみませんでした。

――結婚は2019年だそうですね。

優輝 そうです。つき合い始めたのは2014年くらいだったと思いますが、そのころは埼玉と三重で離れていましたし、お互い仕事もしていたので頻繁に会える環境ではありませんでした。年に数回、お互いの住まいの中間地点のような名古屋などで会っていました。

渉夢くんはバンクーバーで一時保育デビュー?

「第54回防府読売マラソン大会」優勝後、防府市・池田市長と共に。

――結婚する前から何度かアベック優勝をされたようですね。

優輝 2013年の熊日30キロロードレースでは、お互いがすごく納得のいくレース展開ができた末の優勝だったので、表彰台で再会したときはうれしかったです。結婚式の2週間前の、カナダのバンクーバー・マラソンでも共に優勝しました。そのバンクーバーの大会に今年は家族で招待してもらっていて、実は今日、息子のパスポートの申請に行ってきたところです。開催される2024年の5月をとても楽しみにしています。

――侑子さんも走るのでしょうか?

侑子 出産してからこれまで、自分の親以外に息子を預けたことがないんです。フルマラソンを走るのは息子を預けなくてはならないので、時間的に厳しいかなと思っています。でも短時間でも息子を預けることができるような状況が作れたり、現地で息子を預けることに不安がなかったりしたら、楽しむことを目的としたランニング、ファンランなど、短い距離なら走れるかなと考えているところです。

――渉夢くんはバンクーバーで一時保育デビューするかもしれないのですね。フライトも長時間になるかと思いますが、心配なことはありませんか?

優輝 息子は、生後5カ月くらいから私の遠征先についてきてくれていて、飛行機移動も経験しているのでそこまで心配はしていません。北は北海道、南は沖縄の久米島まで飛行機で移動しましたが、いつも泣かずに静かにしてくれています。バンクーバーまでのフライトも大丈夫じゃないかなと期待しています。

“ランパパ”、“ランママ”と子育てトークも

笑顔が絶えない渉夢くん。将来の夢は、パパやママのような長距離ランナーでしょうか?

――渉夢くんの育児で心配なことと、成長を感じることはありますか?

侑子 どういうわけか、息子は私と2人のときはよく泣くんです。私がトレーニングに行っていて、夫が息子と過ごしているときはとてもご機嫌なようなんですが、夫がトレーニングに行って私と2人になると、機嫌が悪くなるんです。「なんで?」と思っています。あとは1歳になる直前の昨年11月に突然立ち上がってから、なかなか一人で歩かず心配していましたが、今年の2月に入ってから歩けるようになりました。よく食べて夜泣きもなく、朝までぐっすり眠ってくれることに成長を感じています。

優輝 私も妻も走ることが大好きなので、歩けるようになった息子が走り出すことがとても楽しみです。
“ランパパ”、“ランママ”には、息子と同じくらいの年齢の子どもがいる人が多いので、育児の話をよくします。
レース前に子どもの夜泣きがひどくて睡眠不足になった、なんていう話も聞くのでその点、息子はよく寝る子なので助かっています。

――“ランパパ”、“ランママ”と子育ての話しをすることもあるのですね。

優輝 はい、合同練習をする実業団の仲間と育児の話をよくしています。身近なところで子育ての情報交換ができるのは話していても楽しいですし、疑問が解決できることもあるのでとても助かっています。

遠征先に家族が同行することを、もっと理解してほしい

2023年10月に開催された「久米島ハーフマラソン」で出産後初のハーフマラソンに出場した侑子さん。渉夢くんが見守る中、女子の部トップでゴール!

――遠征はほぼ侑子さんと渉夢くんも一緒ですか?

優輝 参加するレースの半分くらいはついてきてくれています。もう少し大きくなったら、もっとたくさん一緒に行けるかなと思っています。
日本の選手は、遠征に子どもを連れて行くことは少ないですが、海外で開催される大会は家族の同行を歓迎しているので、赤ちゃんや子どもを連れてレースに参加する外国人選手が多いんです。

――日本はまだ子連れでのレース参加に抵抗があるのでしょうか。

優輝 日本では、子どもを連れていると本気度がたりないと思われる傾向にあると感じています。そのため単身で参加する選手が多いようです。
でも、最近はママさんランナーも増えてきているので、日本もこれから海外のように家族での参加が寛容になるといいなと思っています。これはマラソン業界に限らず、どんなスポーツ選手も家族が遠征先に同行することに理解が深まるといいなと思いますね。

――川内家はできるだけ家族で遠征に行くことを検討しているのですね。

優輝 はい、やっぱり離れていると寂しいですし、レース中に家族の応援があると力になります。

「お父さんって速いんだね」と認識してもらうまでは走りたい

「東北・みやぎ復興マラソン2023」で優勝した優輝さん。これからも多くの大会で優勝する姿を楽しみにしています。

――優輝さんといえば、2018年に世界六大マラソン大会の一つ、ボストンマラソンで悪天候の中、すばらしい走りを見せてくれました。

優輝 これまでフルマラソンに130回以上出場していますが、引き続き日本全国、世界も視野に入れて毎週末、走っていきたいなと思っています。そして、自己ベストを更新して、一つでも多くの大会で優勝したいです。また、行ったことのない土地で走り、自分の可能性を追求し、家族にもいろんな世界を見せてあげたいなと思っています。近い将来ですと、親子マラソンに出場して息子と一緒に走ることが夢です。

――優輝さんは何歳まで走り続けたいと考えていますか?

優輝 私は基本的には「生涯現役」だと思っています。
2018年にボストンマラソンで優勝したときは31歳でした。この大会は優勝すると50年後に招待選手として呼んでもらえるので、81歳のときにボストンでフルマラソンを走ることを目標にしています。そのためには、丈夫な体を保たなければいけないと思っています。とりあえずは、息子に「お父さんって速いんだね」と認識してもらうまでは走っていたいです。そして、息子がマラソンランナーになってくれて私に引導を渡してくれたら本望ですね。

お話・写真提供/川内優輝さん、侑子さん、あいおいニッセイ同和損保 取材・文/安田ナナ、たまひよONLINE編集部

オンラインインタビューは1歳になったばかりの渉夢くんも同席してくれました。パパとママが話している間、驚くほどおとなしくてびっくり。そして、時折見せてくれる笑顔が本当にかわいかったです。将来、パパとママと一緒に走る姿が想像できました。

川内優輝さん(かわうちゆうき)

PROFILE
1987年生まれ、東京都出身。両親にすすめられ小1のときにマラソンを始める。学習院大学では箱根駅伝に関東学連選抜チームで2度出場し、大学卒業後、「楽しく走る」をモットーに埼玉県庁の市民ランナーとして活動する。14年仁川アジア大会銅メダル、17年ロンドン世界陸上9位、18年ボストンマラソン優勝などの好成績を収め、現在は「あいおいニッセイ同和損保」所属のプロランナーへ。趣味は「旅行」と「マラソン」。

川内侑子さん(かわうちゆうこ)

PROFILE
1985年生まれ、岐阜県出身。高校時代、1500mと3000mでインターハイに出場。三重大学に入学後は、日本学生女子ハーフマラソン選手権で優勝。2008年に参加したニューカレドニア・モービル国際マラソンで川内優輝と出会う。大学卒業後はデンソーに所属。2010世界クロカン日本代表。2013年の熊日30 kmロードレース、2017年函館ハーフマラソン、2019年のバンクーバー・マラソンで優勝をはたす。2019年に結婚、2022年には長男を出産。

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