教員採用試験 鳥取人気は全国有数、なのに採用辞退者多数 背景に何が・・・

 2023年末に文部科学省が公表した22年度の公立小学校の教員採用試験競争率(倍率)で鳥取県は4.6倍、島根県は1.9倍となり、大きな差が出た。文科省は都道府県や政令指定都市の教育委員会などが22年度に実施した試験結果を調査し、倍率の全国平均は2.3倍で過去最低を更新。小学校と中学校の試験区分の一部を分けずに選考している3都府県を除く都道府県別で鳥取県は2番目に高かった。島根県は28番目だった。

 鳥取県が高い要因は、1次試験を他の都道府県の大半が7月に行う中、先行して6月に実施しているからだ。22年度の1次試験は全国で2番目に早い6月19日に設定。倍率が全国最高だった高知県(9.4倍)は最も早い6月18日、島根県は7月10日だった。

 鳥取県が受験者の確保を目指す背景には、県外の学生を取り込まざるを得ない特有の事情がある。県教委によると、県内の大学には全国で唯一、教育学部がなく、教員を目指して教育学部への進学を希望する地元高校生は島根大など県外の大学に進学する。

 受験者の確保に向け、10年ほど前から徐々に受験日を前倒し、19年度から6月に1次試験を行い、大阪市内にも試験会場を設けている。18年度に224人だった受験者数は19年度は484人と急増し、倍率は2.1倍から5.5倍に跳ね上がった。20年度以降も全国平均を上回る高水準を維持している。

 ただ、合格者がそのまま採用に結びついていない。22年度の試験は497人が受験し、合格者は203人、採用者は108人で、採用予定者数の150人に届かなかった。受験日が他県より早いため、学生の中には、本命の地元の採用試験前の「練習」として受験し、合格しても内定を辞退する傾向がある。

 県教委教育人材開発課の亀井修平教育人材開発主査は「倍率が高いことが良いとは限らない。学生は地元や大学生活を送った土地を好み、縁のない土地を選ぶ人は少ない」と嘆く。県内で教員になった県外出身者がいずれ地元に帰る懸念もあるという。

 県教委は対策として24年度、他県の合格発表前を狙い、9月中に関西圏で合格者と県内の若手教員との交流会を企画する。全国に先駆けて鳥取との接点づくりを図り、県内での採用につなげる狙いがあり、亀井主査は「少しでも鳥取に来たいという気持ちを高めたい」と話した。

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