特養「輪島荘」6月にも再開 要介護者、帰れる場所を

床にひびが入った室内を片付ける猪谷理事長=2日、輪島市光浦町の輪島荘

  ●市立病院でも受け入れ 役割「しっかり果たしたい」 

 能登半島地震で被災し、休業している輪島市光浦町の特別養護老人ホーム「輪島荘」が6月にも再開することが2日、分かった。市内の入所型高齢者施設はいずれも利用できない状況で、再開は初めて。市外に避難した入所者らを受け入れる。避難生活が長引き、被災地で要介護者を十分にケアできる場所の確保が課題となる中、市立輪島病院は4月からベッドの一部を要介護者向けにするなど、関係者が受け皿づくりを急いでいる。

 輪島荘は社会福祉法人「健悠福祉会」が運営する市民だけを対象とした地域密着型の特養で、定員は29人。日本海を見下ろす高台にあり、地震直後から津波を警戒した近隣住民18人が避難していた。

 建物は床や壁にひびが入り、断水が続くほか、浄化槽回りの配管が破断している。敷地内の舗装には段差ができ、アプローチの市道に土砂崩れや小さな陥没がみられる。地震当初は停電しており、入所者は1月11、12日、金沢などの施設に移った。

 施設は社会福祉施設等災害復旧費の国庫補助金を利用して修繕する方向だが、事務手続きなどに時間が掛かるという。同法人理事長の猪谷圭一郎さん(51)は「気持ち的にはすぐに再開したいが、国の災害査定を待ってからの工事になる。早ければ6月にも再開させたい」と話す。

  ●入所者全員が市外

 市などによると、輪島地区では特別養護老人ホームのほか、介護老人保健施設やグループホームなど高齢者福祉施設が10カ所ある。計409人の定員に対し、1月1日時点で377人の入所者がいたが、全員が市外に避難し、いずれの施設も再開できていない。

 このため、市立輪島病院は来月から一般病床18床を介護医療院に転換し、入院患者が退院した後の受け入れ先を確保する。

 輪島荘の再開方針について、輪島病院の河﨑国幸事務部長は、介護を受けられていない被災者の受け皿が増えるとして歓迎。さらに他の施設にも再開の動きが広がれば、「被災者のいる市外の福祉施設の疲弊も軽減され、病院にとっても元の一般病床に戻せる」と指摘する。

 輪島荘では要介護度の高い低い問わず幅広く市民を受け入れる。猪谷さんは「誰かがやらなければ市民が輪島に帰ってこられない。社会福祉法人としての役割をしっかり果たしたい」と話した。

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