【カモマイル】の栽培方法と活用アイデア3選|桐原春子さんの育てて楽しむハーブ生活

「ハーブは暮らしに役立ててこそ、楽しい!」と話すのは、長年にわたってハーブを育て、その利用法を研究してきた桐原春子さん。本連載では、毎回1種類のハーブを取り上げ、栽培方法や活用方法、歴史などを教えていただきます。第26回は【カモマイル】です。

本連載の他、桐原春子さんの記事はをご覧ください。

ピーターラビットの絵本にも登場する【カモマイル】

ティーや入浴剤でおなじみのカモマイル。カモミール、カミツレの呼び名もあります。ピーターラビットの絵本にも登場するハーブですが、一歩踏み込んで魅力を探ってみましょう。

別名/カミツレ(和名)、カモミール
科名/キク科
性質/ジャーマン種・一年草、ローマン種・多年草
草丈/50~80㎝

甘くやさしい香りをティーやポプリに

花や葉に甘いりんごのような香りがあるカモマイル。いくつかの種類がありますが、代表的なものはヨーロッパや北アジア原産のジャーマン・カモマイルと、ヨーロッパ南部原産のローマン・カモマイルの2種で、ローマン種は商業用に広く栽培されています。

桐原春子さんによると扱いやすいのはジャーマン種のほうで、「ローマン種は茎が横に伸びる性質があるため、芝生として利用することもできます。以前、イギリスの庭園で石のベンチにローマン種を這わせたカモマイルベンチを見て感動し、自宅で再現を試みたのですが、暑さで蒸れて枯れ込み、きれいに育てるのは難しいと感じました。今はもっぱらジャーマン種を育て、ティーやブーケ、ポプリ、クラフトに活用しています」。

ジャーマン種にはアズレン、ファルネセンなどの精油が含まれ、抗炎症、駆風、鎮痙、発汗などの薬効作用にすぐれるといわれます。

疲れやショックを和らげる効果が

桐原さんによるとカモマイルは紀元1世紀の書物にも薬用として記載され、古くから疲れや精神的ショックを和らげる治療薬的な役割を果たしてきました。

「ピーターラビットのお話でも、カモマイルが登場しています。ただし、ローマン種の生花をティーに使うと胃壁を荒らすことがあるので注意しましょう。ジャーマン種はフレッシュでもドライでも利用できます」

ドライにするときは、中央の黄色の部分が盛り上がってきたら摘み取り、風通しのよい場所で乾燥させます。

「花を切らずにおくとこぼれ種で翌年も咲きます。性質は丈夫ですが、葉にアブラムシがつきやすく、早期発見が重要です。水を強く噴射して防除しましょう」

薬効にすぐれるジャーマン種

素朴で愛らしいジャーマン・カモマイルがテラスをやさしく彩ります。直立した茎からたくさん枝分かれし、羽根状の葉もふわふわと印象的。

5月に咲く白い花は、黄色の部分が甘く香ります。

カモマイルには多年草のローマン種と一年草のジャーマン種があり、花姿はよく似ています。ジャーマン種には精油分が多く含まれ、薬効にすぐれるとされます。

活用アイデア①② タッジーマッジー&モイストポプリ

タッジーマッジーとはハーブで作る小さな花束のこと。中世ヨーロッパで魔除けや疫病を防ぐ目的で用いられました。バラを中心に、青紫のコーンフラワー、カモマイルの順に同心円状にまとめます。茎がしだれるのはカモマイルの自然な姿です。ここからカモマイルの花を摘まんでティーにしても楽しい!

モイストポプリは粗塩の上にバラとカモマイル、香りつながりでアップルゼラニウムの葉ものせました。不織布の小袋にすくい入れ、バスソルトとしても使えます。

活用アイデア③ カモマイル風味のホットミルク

温めた牛乳にジャーマン・カモマイルの花を4輪ほど入れて、お休み前にどうぞ。花はフレッシュでもドライでも使えます。鎮静作用があるカモマイルの香りが、疲れた心と体を安らかにほぐし、心地よい眠りへと誘います。

ちなみにカモマイルティーも、熱湯に花を4、5輪入れて作ります。ローマン・カモマイルの場合は、ドライの花を3輪ほど。桐原さんのお気に入りはジャーマン・カモマイルにミント、レモングラスをブレンドしたものだそう。こちらもお試しあれ。

撮影/川部米応

※この記事は「ゆうゆう」2022年7月号(主婦の友社)の記事を、WEB掲載のために再編集したものです。


監修者
園芸研究家 桐原春子

英国ハーブソサエティー終身会員。長年、自宅でさまざまな植物を育て、家庭での実用的かつ美しい庭づくりを提唱。国内外の多くの庭を訪れ、ハーブの歴史、育て方、利用法を研究。カルチャースクールでハーブ教室の講師を務める。『知識ゼロからの食べる庭づくり』(幻冬舎)など著書多数。ブログ「桐原春子のハーブダイヤリー」やインスタグラムでも情報を発信中。

© 株式会社主婦の友社