大人になっても続く親からの"虐待"フラッシュバック…日常生活に深刻な影響が 【虐待サバイバー】「孤立させない」支援 頼れる場所の提供を

親などからの虐待を受け、生き延びてきた「虐待サバイバー」。大人になって心や体の不調を感じることが少なくありません。そうしたサバイバーを支える動きが始まっています。安心して朝を迎えたことはありません。「完全に布団で体を覆って、触れられないように守る。いつも浅い眠り」(ケイさん 仮名)

心や体の不調を感じることが少なくない

養父から性的な虐待を受けていたケイさん。外出するときは必ずイヤホンをします。自分の心を守るためです。「ほぼ毎日、『胸大きくなったなとか、最近お尻出てきたな』と言って触ってくる。抵抗するんですけど、力が強くて。養父母と歳が近い人たちがやっぱり嫌ですね。気持ち悪くなったり、震えが起きたりします」(ケイさん)周りの音を遮り動画に没頭することで、気をそらし、フラッシュバックが起こるのを防ぎます。

小学生と中学生の娘2人暮らし

小学生と中学生の娘2人暮らしています。身体や心の不調で仕事や家事を十分にすることができません。「ママ休むわ、おやすみ」(ケイさん)姉妹が家事を担い母親を支えます。ケイさんには、よく見る夢があります。「高校のときに仲良かった友達たちがみんな出てきて、そろそろ卒業式だなってみんなでしゃべったり、記念に打ち上げしたり…」(ケイさん)実際、高校は中退しました。始めたアルバイトの給料は全て養父母が管理していました。修学旅行のため貯めていたお金にも手をつけられ、行くことはできませんでした。通いつづける意味が分からなくなりました。

複雑性PTSDとうつ病と診断される

長年、身体や心に不調を抱え、訪れた病院で2023年「複雑性PTSD」と「うつ病」と診断されました。「複雑性PTSD」は幼い頃の虐待などが原因で、感情の制御や対人関係がうまくいかず、社会生活に支障が出ます。支えになるのは2人の娘たち。周囲が怖くて外に出られない時、買い物にも付き添ってくれます。

支えになるのは娘たち

「人通りが多かったんですけど、今日は2人がいたのでなんとか」(ケイさん)「きょうはいつもより大丈夫だった。できるだけ周りを見ようと」(長女・聖良さん 仮名)「子どもたちにも申し訳ない。動けない自分にもどかしさやいらだちとかもこみあがってくるので…。苦しいですね、まだ」(ケイさん)虐待サバイバーを孤立させないための取り組みが始まっています。

"虐待サバイバー"を孤立させないための取り組み

サバイバーが集うカフェ「おならカフェ」

2月13日、東京でサバイバーが集うカフェが開かれました。名前は「おならカフェ」ユニークな名前は苦しい気持ちをため込まず、表に出せるようにという願いを込めました。「苦しい気持ちを心の中にため込むとさらに苦しくなってしまうので、私たちのところで吐き出して、心を回復してもらいたいなという思いで『おなら』という名前にさせてもらっています」(一般社団法人Onara 丘咲 つぐみ さん)「こんにちは~、ありがとうございます」(丘咲さん)ごはんを食べたり、ゲームをしたり、おしゃべりしたり…アットホームな雰囲気の中でそれぞれが自由に過ごすことができます。

生活の困りごとを聞く丘咲さん

丘咲さんは、さりげなく声をかけて心や体の状態のほか、生活の困りごとを聞いていきます。「私がこうなったのは、自分の生き方、行い、発達障害ではなく虐待だと気づいた。だからこの1年、親を恨むことでしか生きていけなくて」(参加者)「そっか…、うん」(丘咲さん)丘咲さんも両親から暴力などの虐待を受けてきたサバイバー。悩みに静かに向き合います。「体調は良くなったり悪くなったり」(参加者)「この一週間はちょっと良いかなというかんじなんだね」(丘咲さん「そうそう、でも焦っちゃうというか」(参加者)「貯金がね」(丘咲さん)「どんどん無くなっちゃって」(参加者)抱えてきた苦しさ、生活の不安、ここでなら話すことができます。

安心できる場所を

「これまで過去を隠してきたタイプなので、いままで人に話したことはなかったです。丘咲さんの人柄にひかれたのと『この人なら大丈夫』と安心感がありましたね」(参加者)「虐待の後遺症で病気を抱えながら仕事を続ける難しさなど、そういう悩みが多かった印象です。虐待を受けてきた人たちが集まれるような場所がこれまでなかった。必要にしている人が結構いるんだなということは改めて感じました」(丘咲さん)大人になっても続くサバイバーの生きづらさ。苦しいときに安心して頼れる場所が求められています。

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