[食の履歴書]たけるさん(お笑い芸人) 身近にあったブドウ 東京での価格に驚き

たけるさん

食べることが大好きなんです。自分で料理を作るのも好きですし、外に食べに行くのも好きです。実家で母親が作ってくれた味を、なんとなく覚えてるじゃないですか。それを再現しています。

母はどちらかというと洋食を作ることが多かったと思います。魚料理ならムニエルとか。僕もそういう料理が好きだったし、母も好きだったんでしょうね。よく食べた記憶があるのはポトフです。野菜を入れた上で、ウインナーソーセージがたくさん入っていました。僕はウインナーソーセージが好きなので、強く印象に残ってますね。

実家では、しょうゆやみそは、京都のしっかりとしたところから取り寄せていました。しょうゆはだしの味が強いものでしたし、みそは合わせみそでした。それで育ったので、東京に出てからスーパーで買ったのを使うと、「あ、ちょっと違うなあ」みたいに感じたものです。

スーパーで驚いたといえば、果物や野菜の値段。実家のある岡山は、果物が豊富です。収穫の時期になれば家に「シャインマスカット」や「巨峰」が普通に置いてあって、隣近所の人からブドウをもらったなら、家にあるブドウでお返しする。それくらい身近にあるものでした。

また野菜は、祖母が8畳くらいの広さの菜園で育てていました。料理をする前に取りに行く感じで、母のポトフにも祖母が育てた野菜を使っていました。当たり前のように食べていた「シャインマスカット」が、東京のスーパーで2000円くらいで売られているのを知ってびっくりしました。実家で過ごしていた時期は、食材についてとてもぜいたくだったんですね。

最近は野菜をちゃんと食べていますが、芸人を始めた頃は食生活が乱れていました。バイトをしていたので、バイトが終わった夜中の0時過ぎに、外食したりテイクアウトして家で食べたりという生活を続けていました。若いから腹を満たすことを優先して、肉系ばかりガッツリ食べていたんです。野菜は、ほぼほぼ取っていなかったんですね。やがて、気だるさや肌荒れ、寝てはいるんだけど疲れが取れないなど、いろいろなところに不調を来しました。

そこで自分で料理を始め、野菜をたくさん取るようにしたところ、体調が良くなって。野菜は火を通した方が好きで、サツマイモやレンコンなどの根菜やアスパラガスのようなちょっと歯応えのある野菜を、フライパンで蒸して食べています。

この仕事をしていますと、けっこう地方での仕事が多いので、事前に調べてその土地のおいしい料理を食べるようにしています。1年くらい前から「食事屋ノート」というものに食べた店と料理をメモ。自分なりに星を付けています。

中でもおいしかったのは、鹿児島の黒豚ですね。しゃぶしゃぶでいただいたんですけど、脂がとにかく甘い。一緒に湯がくレタスもおいしい上、肉から出ただしによく合って。すごく印象的でしたねえ。

香川で食べた和牛ホルモンつけうどんというのもよかったです。こしの強いうどんがおいしいだけでなく、こってりした和牛ホルモンつけ汁と一緒だと食べ応えもあって。その店で食べたオリーブハマチも脂が乗っていて、歯応えもありました。

もう1軒。東京・代々木の、おひつでご飯を出す定食屋さんも素晴らしいです。金華サバの定食をいただいたんですけど、おひつからよそうお米の一粒一粒が立っているんです。甘味があって、金華サバに負けないうまさでした。「米、うまっ」と思ったのは、それが初めて。ご飯に対する印象が変わり、おかげでご飯が大好きになりました。このように、地方の素晴らしい食材を東京で味わえるのも、ありがたいことですよね。 (聞き手・菊地武顕)

1995年、岡山県生まれ。2歳の時から備中神楽(岡山県の伝統芸能)を習い、神楽師の資格を持つ。2014年からショーゴさんとともに「東京ホテイソン」を結成(立ち位置は向かって左)。備中神楽のはやし言葉調の独特なツッコミで、人気を博す。M-1グランプリ2020のファイナリスト。3月5日から、東京ホテイソン単独ライブツアー「銀鼠」を開催。全国8都市で11公演を行う。

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