長崎のひな祭り

 きょうは女の子の健康と幸せを願う「ひな祭り」。3月3日に小さな人形(ひとがた)を川や海に流して厄よけをした中国の風習と、平安時代に貴族の幼女が紙人形で遊んだ「ひいな遊び」が結び付いたのだといわれる▲江戸時代後期の「長崎歳時記」には、長崎のひな祭りの様子が記されている。それが何とも楽しげだ▲女の子は化粧し、知るも知らぬも連れだって、ひな人形を飾っている家を訪ね、人形をめでた。家では菓子や祝い酒を出してもてなした。そのため酔った女の子たちがはしゃいで通りを行き交う様子は、実ににぎやかだった▲翌4日は男女が誘い合って大浦の浜辺へ遊びに行った。重箱にごちそうを詰めて家族で海辺や野山に遊ぶのは、対馬や壱岐、五島など県内各地でもみられた風習だ▲旧暦の3月3日は今の暦で大体4月上旬になる。桃の節句と呼ばれるのは、ちょうど桃の花が咲く頃だから。春らんまんの陽気に誘われ、ひな祭りを楽しむ人々の心は一層浮き立ったのだろう▲長崎県で昨年生まれた赤ちゃんは8174人だった。戦後最も多かった1949年の7分の1ほどに減った。このまま少子化がさらに進んでしまえば、未来のひな祭りが寂しいものにならないか、などと心配にもなる。いつまでも子どもたちが健やかに育つ世の中であれ、と願う。(潤)

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