うずら卵で小1死亡...給食時間の長さは問題なのか 教員が急かすのは通常は「考えられない」、残るのは「イレギュラー」の可能性

福岡県内の小学校で2024年2月26日、小1男子児童が給食のうずらの卵を喉に詰まらせたとみられる死亡事故が発生した。事案は大きな話題となり、SNSでさまざまな意見が寄せられる中、「小学校の給食時間が短く、児童が急いで食べなければならないことも問題ではないか」とする意見も反響を集めた。

このような問題は、実際に存在するのか。小学校教師はJ-CASTニュースの取材に対して、教師が食べるのを急かすような状況は「通常は考えられません」とする一方で「イレギュラー的に摂食時間が短くなることは考えられます」と説明している。そんな状況でも事故を防ぐために必要なポイントを聞いた。

SNSでは「そもそも給食時間が短いんだよ」の指摘も

各メディアの報道によると、男子児童が給食中に吐きそうになったため担任教師が吐かせようとしたが何も出なかった。教員らが心臓マッサージや人工呼吸などをし、その後ドクターヘリで搬送されるも、死亡が確認されたという。急いで食べなければならない状況があったかどうかは不明だ。

27日には保護者説明会が開かれ、うずらの卵を当面の間給食で使用しない方針が発表されたという。また同日、文部科学省が全国の教育委員会に給食指導や窒息への対処方法について注意喚起の通知をしたことも報じられている。

Xでは、「そもそも給食時間が短いんだよ」「給食って、食べる時間が圧倒的に少ないんだよね」といった声のほか、子どもが「10分で食べなければならないときもある」と発言したいたという旨の投稿もみられ、給食時間の短さを指摘、問題視する声が複数寄せられている。

給食時間が短く児童はゆっくり食べられず、また、教師は急かさなければならないという状況があるかどうかについて、公立小学校の教師で、教育に関する書籍を多数執筆している山田洋一さんは28日、J-CASTニュースの取材に、「通常は考えられません」とした一方、「イレギュラー的に摂食時間が短くなることは考えられます」という。

今の給食指導は「時間内に食べられる、自分に合った量を子どもが食べる」が基本

山田さんは、「給食における摂食時間は20~30分程度です」と説明する。大人(会社員)が昼食にかける時間は、「2017年サラリーマンのお小遣い調査」(新生銀行グループが実施)によると、男性で22分、女性で約30分だ。

山田さんは、「もちろん、これに比べると子どもは食べるのに時間がかかると考えられますから、もう少し長くした方がいいだろうと考えることはできます」としつつ、

「しかし、数十年前の給食指導とは違い、現在は、『時間内に食べられる、自分に合った量を子どもが食べる』という給食指導が、基本となっています。教員が、急かして食べさせるということは考えられません」

と、指導方針を説明した。

一方で、「小学校低学年の場合、準備や片付けに時間がとられたり、給食前後に行事が入っている場合など、摂食時間が圧迫され、イレギュラー的に摂食時間が短くなることは考えられます」と指摘。さらに、「センター方式で、給食が各学校に配送される場合、配膳や片付けの時間は融通が利きません。やはり、何か事情がある場合など、十分な摂食時間が取れないことは考えられます」と可能性を挙げた。

給食時の窒息事故を防ぐために重要なことは

今回のような事故を防ぐために必要なことについて、山田さんは3つの観点から見解を示した。1つ目は、低学年やイレギュラー時の摂食時間の確保だ。

「低学年や給食前後に行事がある場合などは、摂食時間が短くなることが予想されますので、管理職や学級担任ではない教員が、配膳や片付けなどを手伝い、摂食時間を確保する必要があると思います」

次に、家庭を含めた場での食育の必要性について言及した。

「学校給食の目的には、『学校における食育の推進を図る』というものがあります。食材に応じた安全な食べ方を事前に指導すること、またその際当然ですが、家庭での指導もお願いすること」

さらに、児童の食に関する情報共有も重要という。

「新学期になったら、食物アレルギーのほか、その子の食に関する情報(好き、嫌い。うまく食べられない食材)などの情報を家庭と学校が共有することが重要でしょう」

しかし、「これらを担任教員がすべて把握することは、業務量的に難しいのが現状です」とも指摘。「その際は、栄養教諭の配置人員や業務補助員の増員なども考える必要があります」という。

(J-CASTニュース編集部 高橋佳奈)

© 株式会社ジェイ・キャスト