残り1周、衝撃の「ノー・パワー」で2位失ったプジョー9X8。スローダウンの原因はガス欠か

 3月2日、カタールのルサイル・インターナショナル・サーキットで行われた2024年WEC世界耐久選手権第1戦『カタール1812km』レースは、最終盤に大きなドラマが待っていた。

 初開催のサーキットで、1812km(335周)または10時間で争われた長丁場の開幕戦で、プジョー・トタルエナジーズのプジョー9X8はかつてない強さを発揮。スタート直後に94号車は接触からスピンを喫したものの、ミケル・イェンセン/ニコ・ミューラー/ジャン-エリック・ベルニュ組の93号車は序盤に一時トップを奪い、その後もレースの大部分で2番手を走行した。

 終盤、ベルニュがステアリングを握った93号車は2番手のまま、ハーツ・チーム・JOTAの12号車ポルシェ963と、ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツの5号車ポルシェを背後に押さえ込み、9X8にとって過去最上位、かつ2023年モンツァ戦以来となる表彰台獲得が見えていた。

 レースは334周目に入り、このままトップの6号車ポルシェに続いて2位でフィニッシュするかに見えたベルニュが突然スローダウン。「ノー・パワー」と悲痛な無線を入れながら、後続車両に立て続けに抜かれていき、1周おくれの7位でチェッカーを受けるとフィニッシュラインの先に93号車を停めた。

■最終ピットでの燃料補給に問題か

 ステランティス・モータースポーツのディレクター、ジャンマルク・フィノーによると、プジョーは燃料補給の問題により表彰台獲得を逃したが、「リザルト以外のすべて」に満足しているという。

 フィノーはレース後に集まった記者団に対し、プジョーはまだ問題を完全に特定し理解するために取り組んでいるところではあるものの、燃料補給の問題が悲劇の原因である可能性が高いのではないかと疑っている、と述べた。

 ベルニュは335周のレース中、318周目に燃料補給を行うため93号車をピットに呼び戻したが、ここで問題が発生した可能性が高い。

「残念ながら最終ラップで起こったことは、予期していなかった」とフィノーは語った。

「分析する必要があるが、スプラッシュ&ダッシュをした際のクルマの燃料補給に問題があったと思う。我々が予期した燃料補給量がなかったのだ。分析しなければならない」

 この結果ベルニュは燃料切れとなり、ハイブリッドパワーで最終ラップを完走したとフィノーは明かした。表彰台はポルシェが独占する形となった。

「つまり、ハイブリッドモビリティはモータースポーツにも役立つのだ」とフィノーは冗談めかして語った。

「我々はゼロ・エミッションでピットに戻った。だが、我々には間違いや問題があったと思う。我々はその結果に値した。次回はもっと良くならなければいけない」

【追記】その後、スチュワードは93号車に対して失格の裁定を下している(https://www.as-web.jp/sports-car/1048955

レース終盤、ピット作業を行う93号車プジョー9X8

■ルサイルのコース特性が9X8にマッチ

 終盤の悲劇にも関わらず、今回のレースは、ミューラーが6番手からスタートして開始1時間で首位に浮上し、これまでの9X8のWECにおける最高のパフォーマンスを見せつけるものとなった。

 プジョーは次戦イモラでマシンにアップデートを投入することが予定されている。“ウイングレス”仕様での最後のレースとみられるカタールでのパフォーマンスについて、フィノーは満足感を口にした。

「これまでのところ、2023年仕様のマシンが速く、良いレースができたことに非常に満足している」と彼は語った。

「我々が得たパワーと重量を考えると、2021年のレギュレーションに基づいて設計されたこの車両のデザインは大丈夫だということになる」

「チームが成し遂げたことを誇りに思う。今週末のオペレーションには、まったく問題がなかった」

「最初の1時間でレースをリードし、表彰台や勝利を目指して戦うとは予想していなかった」

 フィノーによれば、初開催となったルサイルのコース特性も、過去に9X8が好成績を収めた他のサーキットと比較して、クルマの強みを発揮できた要因となった可能性が高いという。

「このクルマの場合、31cm(幅)タイヤでトラクションが失われる低速コーナーが少ない。富士やバーレーンに比べると、はるかに少ない」と彼は語った。

「また、非常に滑らかな舗装なので、何の混乱もなく、ポーパシングの危険もなく、すべてのグランド・エフェクトを享受することができる」

「モンツァやル・マンのように、2023年仕様のデザインに非常によく合う種類のサーキットだ」

 フィノーはまた、今回のレース結果は、トヨタが終盤の問題で総合優勝を逃したことで有名な「2016年のル・マンを思い出させる」と語った。

「我々はこれを消化する必要がある」と彼は言った。

「そして、我々は(第2戦のイタリア・)イモラへと戻ってくる」

「(第2戦導入の)2024年のアップグレードにより、このクルマは競争力のあるものになると考えている。それは我々の車重とパワー次第だが、我々は良い方向に進んでいる。今回は、リザルト以外はすべてがポジティブだ」

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