直江津を「蔵の街」に (仮称)土蔵を救う会 能登半島地震被災の土蔵 解体より修復を 文化財保存専門家招き事例視察 上越市

外壁の下側が崩落した土蔵。内側は無事で、補修もできるという

能登半島地震で被災した上越市直江津地区の土蔵を保存しようと、「(仮称)土蔵を救う会」の活動が始まった。直江津の土蔵は建屋で覆われた内蔵が多く、その貴重さと修復が可能であることを周知するもので、2日、事例視察会が行われた。

呼びかけ人の一人、中野一敏さん(48)は建築家、一級建築士。直江津出身の建築家、渡邊洋治設計の「斜めの家」を保存する会の代表を務めている。中野さんは東京から文化財保存の専門家を招き、被害に見舞われた同市中央2の土蔵を見てもらった。

土蔵は外側の土壁の下側が剥離しているが、壁の内側を含め内部に問題ない状態だった。土蔵は地震の際に外壁が崩れることで衝撃を吸収し、内部を守る構造になっており、骨組みが残っていれば壁を塗り直すことができる。中野さんは「見た目のダメージが大きいので解体するしかないと思ってしまいがちだが、残せることを知ってほしい」と話す。

かつて火災が多発した直江津では、家財を守るため土蔵を造る家が多く、雨屋と呼ばれる建屋を巡らして内蔵、座敷蔵となっている例が多く見られる。中野さんは「外から見ると分からず、土蔵のことを意識しにくいが、被害に遭った際は風雨を防いで崩落の進行を止める」と説明した。

同会は、まず解体の必要がない土蔵が解体されないための周知を行い、直江津地区を対象に緊急窓口を設けて応急処置を行う業者を紹介する。その後は建築士会と連携し、将来的には直江津の内蔵を高田の雁木のような存在にしたいと考えている。中野さんは「一軒の土蔵は文化財に指定されていないが、数が多くそろうことで『蔵の街』という魅力が生まれる」と話した。

緊急窓口は斎京四郎事務所(上越市中央1―1―7、電025・512・7560、ファクス025・512・7875、電子メールsaikyo4takanago@joetsu.ne.jp)へ。また地震の被害を受けた歴史資料の保存、一時預かりなどの相談は上越市立歴史博物館、同市公文書センターで受け付けている。

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