宮沢氷魚が表現する好青年の“複雑な内面” 朝ドラ、大河、日曜劇場でお茶の間を席巻

TBS日曜劇場『さよならマエストロ~父と私のアパッシオナート~』で、芦田愛菜が演じる夏目響と職場仲間として親しくなり、次第に関係を深めていく森大輝を演じている宮沢氷魚。

大輝は晴見フィルハーモニーのトランペット奏者であり、晴見市役所観光課の職員でもある。ポジティブな性格のおじいちゃん子で、トランペットの練習も人一倍熱心だが、音程はすこぶる怪しく、感情がそのまま音に出てしまうため、演奏を台無しにするという難点も。そんな大輝を好演する宮沢は、好青年役が多い印象だが、映画に出演する際は、全く違う面を見せている。

モデルからキャリアをスタートし、2017年に『コウノドリ』(TBS系)に出演して、俳優としても一躍有名になった宮沢。ペルソナ総合医療センターの研修医・赤西吾郎を演じた彼は、その後も『トドメの接吻』(日本テレビ系)、『僕の初恋をキミに捧ぐ』(テレビ朝日系)などのテレビドラマに出演し、2019年には『偽装不倫』(日本テレビ系)で主演の杏の相手役・伴野丈役に抜擢された。

明るい二枚目半的なキャラクターが似合う俳優として人気を博すようになった宮沢は、2020年に『エール』でNHK朝ドラに初出演し、女性にモテモテのロカビリー歌手・霧島アキラを好演。アキラは、窪田正孝と二階堂ふみが演じる主人公夫婦の娘・華(古川琴音)と結婚するという役柄で、視聴者からも注目を集めた。

2022年に『ちむどんどん』で再び朝ドラに出演した宮沢は、後に私生活でもパートナーとなる黒島結菜が扮したヒロイン・暢子の夫・和彦を演じた。2度目の朝ドラ出演でヒロインの夫という大役を担った彼は、2025年の横浜流星主演のNHK大河ドラマ『べらぼう ~蔦重栄華乃夢噺~』にも出演が決定。宮沢が演じるのは、渡辺謙扮する田沼意次の嫡男で、後継者となる田沼意知だ。公式サイトによると、“悲劇のプリンス”と紹介されており、若くして若年寄に昇進して異例の出世をとげるものの、江戸城内で予期せぬ事件に巻き込まれるキャラクターとのこと。初出演となる大河ドラマで、どんな演技を見せてくれるのか楽しみだ。

朝ドラや日曜劇場などで、明るい好青年ぶりを披露してきた宮沢だが、近年の出演映画では、テレビドラマで見せている顔とは、かなり違った印象の役を演じている。2023年公開の『レジェンド&バタフライ』では、木村拓哉が演じる主人公・織田信長の命を狙う明智光秀役を怪演した宮沢。普段のイメージとはあまりにも違っていたため、パッと見ただけでは宮沢だと分からなかったほどだ。

同じく、2023年に公開された『エゴイスト』で宮沢が演じたのは、主演の鈴木亮平の恋人・中村龍太役。鈴木が演じる斉藤浩輔にパーソナルトレーナーとして雇われ、やがて浩輔と恋に落ちた龍太。彼はシングルマザーである母親を支えるために、パーソナルトレーナーの仕事のほかに、お金をもらってゲイの男性たちの相手をしていた。龍太は好青年ではあるが、宮沢がテレビドラマで演じてきた役柄とは違い、どこか影があり、複雑な内面を抱えたキャラクターだ。

3月1日に公開されたばかりの最新映画『52ヘルツのクジラたち』で宮沢は、杉咲花が演じる主人公・三島貴瑚を好きになり、その気持ちが執着へと変わっていく新名主税を演じている。主税は貴瑚の職場の社長の息子で、最初は好青年に見え、貧しい生活をしてきた貴瑚にとって眩しすぎる存在だった。貴瑚にリッチな体験をさせ、愛情も注ぐけれど、嫉妬心が強すぎる主税。宮沢は主税の豹変していくさまを熱演しており、本作でもまた新境地を開いている。

まだまだ、たくさんの引き出しを持っていそうな宮沢。大河への出演も控え、お茶の間を席巻中の宮沢だが、テレビでは見られない映画での彼の斬新な演技もぜひチェックしてみてほしい。
(文=清水久美子)

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