1079万円の使途不明金「元会長が主導」 さいたま市PTA協が調査報告書 事務局員へのパワハラ行為も調査へ

さいたま市P協不明瞭支出、元会長が主導と認定

 埼玉県さいたま市PTA協議会(市P協)は1日、2019~22年度にかけて不明瞭に支出された1079万円を調査していた第三者委員会の調査報告書をホームページに公表した。第三者委は報告書で、元会長男性による「協議会の私物化といってもいいような状況が認められた」とした上で、「支出は全体として、元会長が主導的な立場で行われたことが認められる」と指摘した。市P協は報告書を受けて、元会長らの処分を検討する。

 調査報告書によると、元会長は16~18年度に会長を務めていた。19~21年度は別の男性が会長に就いていたが、元会長は顧問や委員会の活動などを通して、「強い影響力を維持し、本協議会の私物化といってもいいような状況が認められた」としている。

 使途不明金の1079万円はいずれも、「防災事業委託費」名目で、市内の保険代理店に支出された。最初の支出は19年11月の143万円で、元会長が事務局を訪れ、事務局員に振り込みを指示。事務局員は予算案に計上されておらず問題とする旨の指摘をしたが、指示通りに送金した。

 20年10月の176万円と21年6月の275万円の送金は、元会長が事務局員に電話で指示。事務局員が請求書を代理店からもらうよう複数回求めたが、元会長から提出されなかった。22年4月には、元会長らが通帳を持ち出して銀行を訪れ、現金100万円を出金し、385万円を送金した。

 保険代理店は元会長が保険会社に要望して関与するようになり、両者の間に何らかのつながりがあると認定。これらの事情から、報告書は「支出は全体として、元会長が主導的な立場で行われたことが認められる」と明記した。

 元会長や保険代理店の役員らはいずれも、第三者委の調査に応じなかった。使途不明金は、市P協が保険代理店に照会した直後の23年2月に全額返還されている。報告書は、保険代理店が契約書類の有無を回答せず、一方的に返金していることから、「防災事業委託費を預かっていたと認定することは、不自然、不合理な点があり困難」とした。

 元会長は第三者委に対して、23年11月7日付の文書を送付し、「(市P協役員らに)適正な手続きのもと計上されたものと説明している。改めて私が説明することは不要と考えますので、協力要請に応じかねます」と調査を拒んだ。

 報告書は市P協の組織運営の問題点も指摘。役員の役割の明確化、会計処理や文書管理の改善を求めている。

 市P協は23年3月、使途不明金が判明したと発表。弁護士と税理士による第三者委が同年5月に設置され、今年1月31日付の調査報告書を市P協に提出した。

■パワハラ行為調査へ 会長「信頼回復に努める」

 さいたま市PTA協議会の郡島典幸会長は1日、「深くおわびいたします。責任は全て当協議会にある。一部の役職者やOBに権限が集中し、長期間にわたる関与を止めることができなかった。二度と起きないよう、対策を強化して信頼回復に努める」とするコメントを発表した。

 元会長らが第三者委員会の調査に協力しなかったことについて、「このような姿勢は善良なボランティア精神での組織運営を根底から揺るがし、本会やPTAの信頼を大きく損なう行為と考えます。引き続き公正な場で説明責任を果たしてもらいたいと思います。公益性の高いPTAなどの組織と二度と関わることがないように願います」と指摘。

 一方、事務局員2人が本人の意思に反して退職し、その過程でパワハラ行為があったとされ、調査を行うと明らかにした。調査報告書は「事務局員が退職の理由は元会長から暴言やどう喝を受けたことが原因と述べた」としている。

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