「噛みつくから」と飼育放棄されたボーダーコリー 保護犬猫カフェの代表には噛みつかない理由 ワンコと人間の関係性を示唆

噛み癖がなかなか治らないたあくん

「噛み付くから」という理由で飼育放棄されたボーダーコリーがいます。名前はたあくん。保護したのが東京・足立にある保護犬猫カフェPETS(以下、PETS)です。

PETSの代表は、一般に嫌がられがちな咬傷犬でもそうでないワンコと区別することなく世話を続けており、たあくんもしばらくの間、他のワンコたちと一緒に生活しました。

別のスタッフには噛み付くのに、なぜか代表には…

PETSに来たばかりの頃のたあくんは、たびたびスタッフに噛み付くことがありました。しかし、代表には噛み付くことはありません。

どうしてたあくんが噛みつかないのか、代表に尋ねると「言葉では言い表すことができないから、感覚だと思う」と言います。おそらくはワンコと人間の「関係性」「絆」だと思います。たあくんは代表に対し不思議なほど特別な思いを抱いているようです。

そんなたあくんでしたが、程なくして「迎え入れたい」という里親希望者さんが現れました。優しそうな方で「この方なら!」と代表も太鼓判。たあくんはめでたくPETSを卒業していくことになりました。代表は「新しいお家ではもう噛みつかないでね」と念押し、飼育放棄された経緯を持つたあくんが、幸せをつかんでくれたことをおおいに喜びました。

「この1年、噛みつきまくられてきました」

1年ほど経った頃、たあくんを迎え入れた飼い主さんから相談を受けました。

たあくんはあれから1年間、飼い主さんを噛みつきまくり、狂犬のような振る舞いをすることもあり深刻な問題になっていると言います。

しかし、この飼い主さんはたあくんのかつての飼い主と違って諦めることはありません。「なんとかして、たあくんが噛みつかなくなるようにしたいのですが、どうすれば良いでしょうか」と言います。代表は前述のような「感覚」の話をしましたが、しかしうまく伝わりません。

そこで、代表は飼い主さんとたあくんを連れてワンコの訓練会へと一緒に参加することにしました。

甘やかせすぎもダメ。厳しすぎるのもダメ

訓練会でのたあくん

久しぶりに代表に会ったたあくんは超大喜び。代表に向かって目をハートマークにせんばかりに好き好きアピールで飛び跳ねてきます。

保護当初のたあくんの悲しそうな表情を知っている代表は、うれしそうな様子を前につい甘やかせてしまいそうになりますが、ここは我慢。こういった場面でしっかり言うことを聞かせるためには、毅然とした態度を取らなければいけません。だからと言って、厳しいばかりでも絶対ダメ。ワンコがストレスを抱えるようになり、「こいつ、俺のやりたいことを全部否定しがやがるな。ガブッ!」となりかねません。

まずはたっぷりの愛情を注ぎ「絆」を作りあげるのが基礎中の基礎。その上で、甘やかせる時間と厳しく接する時間のメリハリを作れば、ワンコも信頼を寄せるようになるのです。ひいては「この人は大事な味方なのだ」として、噛み付くことはなくなり、あの代表への好き好きアピールのような、甘えん坊になってくれるようになります。

これだけ熱心で優しい飼い主さんならきっと大丈夫

訓練会はPETSと懇意の団体・東京わんにゃんシェルター&アダプションが実施するものでした

訓練会ではたあくんと飼い主さんだけでなく、代表自身にとっても大きな学びの機会になったと言います。そして、元気いっぱいのたあくんとの時間が、あっと言う間に終わってしまったことを少々寂しく思う代表でした。

そして、代表は「今はまだ大変かもしれないけど、これだけ熱心で優しい飼い主さんならきっと大丈夫」とも思いました。たあくんはきっと飼い主さんの思いを受け取り、やがて噛み付くことはなくなることでしょう。そんなふうにたあくんのさらなる成長を願い、再会の日を楽しみにするのでした。

__保護犬猫カフェPETS
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(まいどなニュース特約・松田 義人)

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