児童養護施設で料理振る舞う、京都の中華料理人「奉仕調理」の会が解散へ 1340回で幕

児童養護施設で42年間ボランティアで料理を振る舞ってきた楊さん(亀岡市薭田野町・青葉学園)

 児童養護施設で料理を振る舞う「奉仕調理」をしている京都府内の中華料理人たちの「琢磨会」が、3月末で解散する。「多くの子どもたちにおいしい料理を食べてほしい」と42年前からボランティアで活動してきたが、メンバーの減少と高齢化で1340回を区切りにすることにした。施設関係者からは惜しみつつも、感謝する声であふれている。

 会の結成は1982年。京都市下京区で「中華処 楊」を営む会長の楊正武さん(78)が「なかなか外食する機会がない施設で暮らす子どもたちに、自分たちが何かできることはないか」と、知り合いの福祉事務所の職員に相談。亀岡市薭田野町の「青葉学園」を紹介された。同年6月に同学園で鍋を振るったのを機に、趣旨に賛同した仲間と活動が始まった。

 主に楊さんの店が定休日の水曜に実施し、材料費は施設側が負担。当日だけでは間に合わないため、下処理や仕込みは店の営業の合間にも行ってきた。「人数が多いと3日前からやることもあって、大変だった」と、楊さんは苦笑いする。

 最盛期には約80人のメンバーがいて、老人ホームや障害者施設などでも活動。近畿圏を中心に京都や滋賀など26府県に赴き、95年の阪神大震災では炊き出しにも参加した。

 同会では出張調理以外にも、楊さんの店で96年から毎年3月に「中卒会」を開いている。児童養護施設で暮らす中学3年たちを無料で招待し、卒業記念としてフルコースを提供している。

 しかしメンバーは年々減少し、15年ほど前から活動するのは4人になった。高齢化も進み、楊さんが年初に手帳に書き込んだ「目標1340回」を区切りに解散を決断した。

 1月24日、活動の出発点になった青葉学園で、1335回目の奉仕調理を行った。会のメンバー2人と施設のスタッフが、鶏がらのスープをかけた「中華風カツ丼」やエビのケチャップ炒めなど5品を作り、子どもと職員約50人が味わった。

 感謝セレモニーもあり、子どもたちから楊さんに花束やメッセージを書いた色紙が贈られた。中学3年生の男性(14)は「カリカリで甘い大学芋と、ジューシーな鶏の唐揚げが大好きだった。もう食べられなくなるのは悲しいけど、感謝の気持ちでいっぱい」。江口昌道理事長は「楊さんが来る日は、早く帰ってくる子が多かった」と振り返った。

 「夢を持っている子どもたちに、どんな環境であってもちゃんと育ってほしいという思いでやってきた。大人になっても元気に頑張ってくれるのが、私の一番の希望です」と楊さん。一方、「この活動のおかげで、大きな病気にもならず生きてこられた」と、今後も個人として奉仕調理を続けることに意欲も見せている。

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