再送WTO会議、改革合意できないまま閉幕 デジタル関税停止は延長

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Emma Farge Rachna Uppal

[アブダビ 2日 ロイター] - アラブ首長国連邦(UAE)の首都アブダビで開かれていた世界貿易機関(WTO)の閣僚会議は、主要な改革について意見の一致を得られないまま2日未明に閉幕した。

2月26日に始まった交渉は農業、漁業などの分野で行き詰まりを打破することができなかった。ただ、電子商取引のデータ送信に対する関税賦課の一時停止(モラトリアム)は2年間延長され、企業にとっては安心材料となった。

WTOのオコンジョイウェアラ事務局長は閉幕式で「今週、われわれは懸命に働き、いくつかの重要なことを達成したが、その他のことをやり遂げることはできなかった」と総括した。

欧州高官は「ギブ・アンド・テイクの精神がなかった」と語った。

延長された会議の5日目、ほとんどの閣僚はすでに帰国していたが、インドのゴヤル商工相と欧州委員会のドムブロフスキス上級副委員長(通商担当)は最後まで残った。

<欧州がインドを非難>

ドムブロフスキス氏は漁業、農業、より広範な改革についてコンセンサスが得られなかったことに失望を表明し、インドを非難。声明で「合意は手の届くところにあり、圧倒的多数の加盟国によって支持されていたが、最終的には一握りの国、時にはたった1つの国によって阻止された」と述べた。

インドは農業分野で、公的備蓄に関する恒久的な解決策を主張したが、一部の先進国はこれに反対。ゴヤル氏は閉幕近くに「われわれは何も損をしていない。私は満足して帰国する」と記者団に語った。

インドは南アフリカと共に、デジタル貿易関税モラトリアムの延長に反対していたが、主催国UAEの要請で折れた。

<貿易システムの弱体化に警告>

米通商代表部(USTR)のタイ代表は2月29日夜、ロイターとのインタビューで、もし交渉が失敗すればインドや中国などの新興国で構成されるBRICS内の亀裂が一因だと述べていた。

インドと中国は、投資など重要な問題で意見が対立。インドの閣僚は中国閣僚がアブダビを去った後に会議に参加した。

また、太平洋島しょ国は水産資源保護に向けた提案が十分でないと主張していた。

国際商業会議所のジョン・デントン氏は今回のWTO会議を受け、「地域的にも世界的にも、社会における貿易の役割についてより精緻で建設的な議論が必要との警鐘を鳴らすものだ。弱体化した多国間貿易システムから利益を得る国はない」と警告した。

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