前日ダブルボギーの15番で抜け出した 岩井千怜の強くなった心

西郷との“一騎打ち”を制して右拳を掲げた(撮影/高藪望)

◇国内女子◇ダイキンオーキッドレディス 最終日(3日)◇琉球GC(沖縄)◇6595yd(パー72)◇曇り(観衆6133人)

前日にダブルボギーをたたいた15番が、岩井千怜のポイントだった。西郷真央と“一騎打ち”になった最終日。1番で西郷がバーディを奪うと2番で奪い返し、西郷が2個目のバーディを決めた3番から並走が始まった。気持ちを切らさないよう、岩井は「無心で攻め続けていた」という。

キーホールで抜け出した。14番のバーディで一歩リードして迎えた15番。「きのうダボを打ったし、ここらへんから“動き出す”だろうなって」。慎重にティショットに臨んだ。「右だけは避けたい。あとは振り切って」。1Wでしっかりフェアウェイを捉え、2オン2パットのパーにまとめた。ピンに寄せきれずグリーンエッジに外し、ボギーにした西郷に残り3ホールで2打差をつけ、抜け出した。

「絶対勝つ」という気持ちは切れなかった(撮影/高藪望)

「ずっと『絶対に勝つ』という気持ちで。耐えて、耐えて結構つらかった。西郷さんも絶対に伸ばしてくる。その中で自分のゴルフ、リズムでいけるかが優勝のキーになるとも思っていた」。終わってみればボギーなしの「65」。大会コースレコードを4打更新する通算18アンダーまでスコアを伸ばし、最終18番グリーンで右手を突き上げた。

緊張が解け、オフの辛さもフラッシュバックし、優勝スピーチでは涙が出た。「トレーニングがつらくて、気持ちも乗らなくて。それをするための早起きもつらかった。でも、やるしかないって」。ウエートトレーニング、ランニングなどで自分を限界まで追い込んだ。「ご飯がのどを通らない」日も乗り越えて、精神的に鍛えられたという。

サウジアラビアの欧州ツアー、タイの米ツアーで調子を上げての国内初戦(撮影/高藪望)

双子の姉・明愛と切磋琢磨しているが、すべては「自分のため」だ。「負けたくない。世界に行きたい。(ファンやサポートしてくれる人の)笑顔が見たい。後悔をしたくない」。今回の優勝で世界ランキングも66位から浮上する見込み。3月18日時点で40位以内に入れば4月のメジャー初戦「シェブロン選手権」に出場できる。

「考えていなかったけど、頑張って良かった。今年は複数回優勝をしたい」と今後の目標を掲げる。サウジアラビアの欧州女子ツアー、日本勢トップの13位になった前週の米ツアー「ホンダLPGAタイランド」を経て、国内開幕戦で優勝。世界ランクが選考基準になる8月「パリ五輪」代表は「2枠~最大4枠」で今は日本勢8番手だが、逆転も夢じゃない力が備わってきた。 (沖縄県南城市/石井操)

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