パリ五輪世代FW木村勇大は「チームを勝たせるゴール」に集中。結果を出し続ければ「いずれ上の舞台に繋がっていく」

[J1第2節]浦和 1-1 東京V/3月3日/埼玉スタジアム2002

2021年から京都の特別指定に登録された木村勇大は、プロ1年目の昨季は夏に金沢へ育成型期限付き移籍。プロの世界で過ごした過去3シーズンで奪ったリーグ戦でのゴールは、金沢で挙げた1得点のみだった。

迎えた今季はジュニア時代を過ごした東京Vでリスタートを切ったなかで、パリ五輪世代のストライカーは5万863人の観衆が詰めかけた埼玉スタジアムで、待望のJ1初得点を挙げた。

3月3日に行なわれた浦和とのJ1第2節。開幕戦に続いてスターティングメンバーに名を連ねた木村に、42分、最大の見せ場が訪れる。

見木友哉の左CKがファーに流れる。こぼれ球を拾った山田楓喜が後ろに戻すと、深澤大輝がクロスを送り込む。これを山越康平が折り返し、染野唯月が競ってこぼれたところに木村が反応。反転して豪快に右足でボレーシュートを放ち、チームに貴重な先制点をもたらした。

「難しい体勢だったけど、入って良かった。チームとしてもシュートがなかなか打てていない状況だったので、強引かなと思ったんですけど、良い感じでミートして入ってくれた」(木村)

チームは89分にPKをアレクサンダー・ショルツに決められ、土壇場で勝点3を逃した。だが、この試合で木村が示した可能性は確かなものがあり、J1でも戦えることを証明したのは間違いない。

最前線で泥臭く身体を張って起点となり、献身的な守備でもチームに貢献。84分にピッチを後にしたが、運動量は最後まで落ちなかった。世代別代表や京都時代は試合中に“消える”時間帯も少なくなかったが、プレーに継続性が出てきた点も成長の証だろう。

【動画】ヴェルディ木村勇大の鮮烈弾!
その一方で課題も散見された。とりわけポストプレーの精度は改善の余地を残す。ショルツとマリウス・ホイブラーテンのCBコンビに手を焼き、思うようにタメが作れなかった。

「前節に比べ、自分とソメ(染野)が前線で孤立する場面が特に前半は多かった。センターバックの圧が凄くて、(浦和サポーター)の圧も今までに経験したことがないものがあったんです。そういう意味でも改めて、凄いチームだと思った。いかに前線で、いかに時間を作れるかが、チームが勝つためにはすごく大事。もっと時間を作って、みんなを押し上げられるようにしたい」

横浜F・マリノスとの開幕戦(1―2)では前線で収め、周りをうまく使いながら攻撃の起点になった。しかし、浦和戦では助っ人CBに苦戦し、良さを出し切れなかった印象が強い。

視察に訪れていたU-23日本代表の大岩剛監督も、2トップでコンビを組んだ染野を含め、「欲を言えば、90分の中で攻撃のクオリティを出せるようになってほしい。J1の中でもその強度が出せればいいのかなと思う」とし、さらなる成長に期待した。

課題もあったが、まずはゴールという結果を残したことが何よりも明るい材料だ。パリ五輪のアジア最終予選(U-23アジアカップ)も4月半ばに控えており、木村もここからアピールが必要だろう。

ただ、「代表のことはあまり考えていない。まずはヴェルディで1年しっかりやりたいという想いが強い」と木村は言う。「チームを勝たせるためのゴールを挙げていけば、いずれは上の舞台に繋がっていく」という言葉を残した点取り屋は、地に足をつけて、まずは新天地で絶対的な存在になるために挑戦を続けていく。

取材・文●松尾祐希(サッカーライター)

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