首都圏と屋久島がジェット機でつながる…滑走路延伸計画、24年度事業化へ大詰め 観光、物流活性化へ地元期待高まる

滑走路延伸が計画されている屋久島空港。現在はプロペラ機のみ就航する=2月28日、屋久島町小瀬田

 ジェット機就航を目的にした鹿児島県・屋久島空港の滑走路延伸計画で、空港管理者の県が進める環境影響評価(アセスメント)手続きが大詰めを迎えている。2023年11月にアセスの最終まとめとなる評価書を国に提出。現在、評価書に対する国の意見を基に補正評価書を作成中だ。年度内を目指す補正評価書の公告・縦覧で全てのアセス手続きは終わり、県は政府の24年度予算で事業化が決まれば、用地取得と測量に乗り出す。

 国土交通省は滑走路延伸に向けた調査費を計上したとみられ、予算成立後の年度末前後に発表する見通し。県も24年度予算案に各離島の空港整備費12億1800万円を充当した。前年度より36%増えており、延伸化を念頭に増額した。

 県が20年度に策定した基本計画では、滑走路1500メートルを2000メートルに延ばす。併せて旅客ターミナルや駐機場を増設する。

 ジェット機就航で関東方面からの観光客などを呼び込もうと、屋久島町とともに早期事業化へ国に要望を重ねてきた。現在、鹿児島、福岡、伊丹の3空港間をプロペラ機が1日14便就航。22年度利用者は過去最多の18万7000人に上った。町政策推進課の三角謙二課長は「プロペラ機より多くの生鮮品を即日首都圏の消費地に運べるようになり、物流の利点もある。住民の合意はできており、国の予算化を待っている状態」と期待する。

 工期は8年程度を見込む。基本計画策定時の概算事業費は約150億円だが、建設資材や人件費の高騰で膨らむ見通し。多くは国の補助で整備する。約9割の地権者から同意を得ているという。

 アセス評価書では大気環境や騒音、動植物など20項目について、現地調査に基づいた予測や評価をまとめた。天然記念物など保護上重要と位置付けられた動植物123種を確認。このうち複数種で生育環境への影響があると予測したが、「環境保全措置を実施することで影響は回避、低減される」とし「環境保全への配慮は適正」と結論付けた。

 評価書に対し国交相は、空港利用者の増加による環境への影響を減らす対策が必要と指摘。現地でハヤブサなど鳥類の繁殖が確認された場合、繁殖期を避けた工期を設けるよう求めた。

 環境アセス手続きは調査手法などを記した20年の方法書が始まり。住民の意見を踏まえ、段階的に準備書、評価書をまとめた。県港湾空港課は「海を埋め立てない計画を立て、自然への配慮を大前提にしてきた」と強調する。

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空港近くの県道沿いに掲げられたジェット機就航を期待する看板=2月28日、屋久島町小瀬田

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