北海道石狩市/都市型ロープウエー対話調査結果、建設費・人件費高騰を懸念

北海道石狩市は2月29日、「官民連携手法による新たな軌道系交通の導入」に関するサウンディング(対話)型調査の結果を公表した。同市と札幌市を結ぶ都市型ロープウエーの導入を目指す事業で、事業に対しては「多くの自治体にとって先駆的な取り組みとなる点が魅力的」と期待の声が上がる一方で、採算性を求める意見や将来的な建設費、人件費、燃料費などの高騰を懸念する意見も上がった。
石狩市は、札幌市との移動人口が多いが、公共交通は路線バスに限られるため、冬季間の輸送能力や定時性の確保が課題となっている。これまでもモノレールなどの軌道系交通施設の導入構想が検討されてきたが、コスト面から断念してきた。
しかし近年、交通に関する新たな技術開発が進められていることや、市内に再生可能エネルギーが豊富に賦存していることから、再エネの地産地消とセクターカップリングによる脱炭素と地域公共交通の課題解決を目指し、都市型ロープウエーの導入調査に着手した。
現在想定しているルートは、▽新港地区~花川地区~手稲駅▽新港地区~花川地区~麻生駅▽新港地区~花川地区~緑苑台地区~栄町駅~丘珠空港-の3案。いずれも距離は12~15キロで、1~2キロ程度おきに駅を設けることを想定している。
事業スキームは▽市が整備したあとにコンセッション(公共施設等運営権)事業として運営▽市が整備した後に施設貸し付けによる運営▽PFI方式のBTO(建設・移管・運営)またはコンセッション事業▽PFI方式のBOT(建設・運営・移管)の4パターンで検討する。
事業期間は設計期間に2年程度、建設期間に3年程度、運営期間に15~40年程度を想定している。
こうした検討状況を踏まえ、対話調査では事業内容や事業スキーム、事業条件などについて民間事業者の意見を募った。
調査結果を見ると、事業への基本認識では「同様の課題を抱える多くの自治体にとって先駆的な取り組みとなる点が魅力的」「事業パートナーは既存交通事業者のほか、モビリティ関連のスタートアップも想定しうる」などの意見が上がった。
事業内容については「ルート検討に際しては採算性を最重要視する」という意見や札幌市との連携や施工性、関係者調整などを重視するとの意見が出た。事業スキームについては「事業の運営を第三セクターが担う場合、参画は検討可能」「施設整備・所有は市が行うべきである」など市の関与を望む意見が多かった。
事業期間については「長ければ収益を確保しやすくなる」とする一方で、「需要変動リスクや期間中の設備更新リスクがある」との意見があり、コスト面では「将来的な建設費、人件費、燃料費等の高騰を懸念する」との声が上がった。

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