地震被災地の石川県七尾市で読書を 京都市図書館の電子書籍サービス提供 児童書を強化

電子書籍サービスを紹介する京都市図書館のホームページ

 京都市教育委員会は、タブレットやスマートフォンで読書ができる市図書館の電子書籍サービスについて、能登半島地震の被災地、石川県七尾市の住民も利用できるよう、提供先を拡大した。避難所でも読書を楽しんでもらうのが目的。地元の七尾市立図書館は閉館が続いており、同市は「再開を求める市民の声に応えることができない中、ありがたい支援だ」としている。

 京都市図書館は昨年2月に電子書籍サービスを始めた。タブレット端末を使えば、図書館を訪れなくても読書を楽しむことができる。これまで提供先は市内在住、在勤・在学者に限っていたが、関西広域連合で定められた市の支援先「カウンターパート」が七尾市に決まったことを受け、同市在住者約4万8千人も利用できるようにした。

 利用可能な電子書籍は約4600点。5日からの七尾市民への利用拡大を機に、予約なく複数の人が同時に読める児童書の「読み放題パック」を約340点追加した。市教委は「子ども向けコンテンツを強化した。読書という文化面で被災地を支援したい」としている。

 七尾市教育委員会によると、市立図書館も一部被害を受け、職員が被災者対応に追われていることもあり、開館のめどはたっていないという。図書館担当者は「再開を求める市民の要望は寄せられているが、開館できる状況にない。七尾市に電子書籍サービスはなく、市民の読書ニーズを満たすことができる」と感謝し、ホームページなどで周知しているという。

 電子書籍の普及に取り組む業界団体「電子出版制作・流通協議会」(会長、浅羽信行・大日本印刷常務執行役員)によると、同様の支援は、2011年の東日本大震災で大手出版社が漫画をネット上で無料公開した事例があるという。同会担当者は「災害時には図書館に加え、書店も営業できなくなる。被災者向けに医療や健康、娯楽など多様なジャンルの電子書籍を提供する支援は、今後増加するだろう」と注目する。

 ただ、電子書籍を導入している自治体は新型コロナウイルス禍で増加しているものの、まだ3割程度にとどまる。「電子書籍は通信インフラさえ復旧すれば図書館サービスを継続できる。災害対策や支援にも応用できる機能を周知し、自治体への普及促進に努めたい」(同会担当者)という。

 京都市教委によると、2月15日現在で36人の七尾市民が利用登録をしている。利用を希望する七尾市民は、市教委の指定するメールアドレスに必要事項を記載し、利用に必要なパスワードを受け取る。利用は7月まで。問い合わせは京都市教委生涯学習部075(801)8822。

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