「円預金より金利が高い=お得」と考えている人にFPが具体例で示す、外貨預金の「落とし穴」

円安が進み、米ドルの定期預金金利を引き上げる銀行が相次いだことなどから、注目度が増している「外貨預金」。しかし、円預金よりも金利が高いからと、やみくもにお金を預ける前にきちんとデメリットを理解しておくことが大切です。本記事では、ファイナンシャル・プランナーの横川由理氏の著書『知らなきゃ損! インフレってなに?』(自由国民社)から、外貨預金の基本的な仕組みや注意すべき点について解説します。

登場人物

かあさん(横川由理)
FPとして活躍する本書の著者。「正義の味方になる」「迷ったらやる」「専門用語を使わない」をモットーに、資産運用に悩む人たちにわかりやすくアドバイスを行う。桃太郎の育ての母。

猫の桃太郎(ももちゃん)
生まれたばかりで迷子になり、横川さんの息子の由比(ゆい)君に保護された♂猫。横川家に迎えられ、かあさんが哺乳瓶でミルクをあげてすくすくと育った。人間と話ができる不思議な能力を持つ。

外貨預金は本当にお得?基本的な仕組みとは

桃太郎:外貨預金について教えてー!

かあさん:外貨預金のしくみ自体は日本の預金とまったく同じよ。違うのは、外貨で運用するところだけで、普通預金と定期預金があるわ。

桃太郎:へ〜。

かあさん:ただし、日本円の定期預金と違って、満期前の途中解約できないケースがあるので気をつけないと。

桃太郎:まぁ、外貨預金なら安全だねー。

かあさん:安全ということは、利益が少ないことだってわかる?

桃太郎:えっ?

かあさん:外貨預金のしくみについて説明するわ。ある日本の銀行の米ドル外貨定期預金の金利が0.6%って書いてありました。でもこの日のアメリカの国債1年物の利回りは5.4%なの(2023年10月20日)。銀行はアメリカの国債を買って5.4%の金利をもらう。そして、私たちに0.6%の金利を払う。差額の4.8%はどこに行っちゃったのかしら?

5.4%-0.6%=4.8%

桃太郎:銀行の儲けだ! ありえない!!

かあさん:ネット銀行や最近の金利はもう少し高いと思うけどね。さっき、外貨で運用するためには、自分の持っている円をドルに両替するっていったでしょ? 両替するときにも、さらに高額な手数料を取られるから気をつけないとね。

往復の為替手数料で高い金利が相殺されるという「落とし穴」

桃太郎:高額な手数料!? 4.8%も黙って懐に入れたのに! 「盗人猛々しい」とはこのことだね。

かあさん:あはは。大きな銀行では、1ドルにつき1円が為替手数料。手数料が1ドル1円ということは、1ドル100円でも120円でも1円が為替手数料になる。ということは、たとえば、1ドルが120円のときは0.833%が手数料になる計算よ。100円なら1%ね。ネット銀行なら50銭など、少し安いわ。

1円÷120円×100=0.833……%

1円÷100円×100=1%

桃太郎:そっか〜。でも仕方ないよね。

かあさん:ももちゃん、ちょっと待って。ドルでお金を持っていてどうするの? 海外旅行に行くならともかく、円に両替しないと使えないでしょ。この為替手数料は2回払う。

[図表1]為替手数料の仕組み

桃太郎:なんで?

かあさん:最初に円をドルに替える。満期になったらドルを円に替える。手数料は2回。外貨預金をスタートするときと満期のときの為替レートが120円で変わらない場合、0.833%の2倍の1.666%が自動的に手数料に消えるのよ。たとえ、「金利2%。円の預金より高いからお得!」って書いてあっても、手数料でほとんど消えて残らないわ。

2%-1.666%=0.334%

桃太郎:いやだー!

かあさん:だから、銀行には行ってはいけないのよ。でもね、問題はそれだけじゃないの。1ドル120円で外貨預金を始めたとして、その後1ドル110円になったらどうなると思う?

桃太郎:えっと。120円から110円になる。円高になる=ドル安になる。僕はドルを持っているから、損をする!!!!!

かあさん:正解。ドルを持っていてドル安になるんだから損するわね。でも、反対にドル高になると利益がでるわ。このように外貨預金は為替レートの動きによって損をしたり、得をしたりするの。

桃太郎:じゃあ、満期が来たときに円高だったら、どうするの?

かあさん:外貨のまま外貨預金に預け直して、円安になるのを待つしかないわね~。でも気をつけて。金融機関によっては、満期が来たら必ず円に両替することを義務づけているところがあるわ。ずるいわよね。両替手数料で儲けようとしていることが見え見えよ!

[図表2]銀行が儲かる仕組みになっている

横川由理
ファイナンシャル・プランナー

※本記事は『知らなきゃ損! インフレってなに?』(自由国民社)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。

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