痛み分けのジェイク・リーと藤田和之のスーパーヘビー級バトル 期待が膨らむGHC王座をかけた再戦の行方

【柴田惣一のプロレス現在過去未来】

“ノアの論客” ジェイク・リーと “野獣” 藤田和之のスーパーヘビー級対決(プロレスリング・ノア3・2愛知・名古屋国際会議場)は、拳王が「他では見られない」と驚嘆するスーパーバトルとなった。

192センチの長身を誇るジェイクに、ゴリラもひるむブ厚い体を誇る藤田。しかもジェイクは柔術、藤田はレスリングの猛者。そして、ジェイクはノアのルーツである全日本プロレス育ち、藤田は闘魂DNAを引き継ぐ者と、何かと注目を集めた一戦だった。

好勝負への期待と共に、果たしてかみ合うのかと一抹の不安が膨らんだが、予想を上回る攻防となり30分があっという間に過ぎ去った。時間切れ引き分けの痛み分けは、見所たっぷりだった。

パンチ、エルボー、キック…感情むき出しに打撃をぶつけ合う両雄。グラウンドの攻防。ブレーンバスター、バックドロップなど豪快な投げ技の応酬などで、会場を沸かした。時には固唾を飲んで声もなくリングを見守る静寂も訪れた。二人の雄叫び、舌戦が響き渡たり緊迫感がみなぎった。

ゴング前に、藤田に赤マムシをコスチュームの中に吐きかけられたジェイクの全身から発する怒りも迫力満点だった。ジェイクの出で立ちは、本人始め何人もの人間が話し合い関わって制作している。思い入れたっぷりの作品に、赤マムシの洗礼は禁じ手そのもの。

加えてジェイクは超のつくほどのきれい好き。洗濯洗剤アリエールがお気に入りで洗濯は毎日欠かさず。多い時は日に何度も洗濯するという。ところがコスチュームに赤マムシを吹きかけられた。汚された、シミにならないだろうかと、怒髪天だったことだろう。

ジェイクは3月31日、東京・後楽園ホール大会でGHCヘビー級王者イホ・デ・ドクトル・ワグナーJr.に挑戦が決まっている。半年振りのベルト奪還を狙っており「決めた。ベルトを取ったら、アイツ(藤田)を指名してやる」と一気にまくし立てた。いつものクールな論客ぶりとは一線を画する感情むき出しのコメントを残している。

藤田は試合前は舌鋒鋭くジェイクを非難していた。「リーさんがノアにきて、ノアが潤ったのか」「グッドルッキングよりもグッドマネーが大事」…毒をこめた台詞を投げかけていた。

ただし、冷風吹き荒れる名古屋の街に熱風を呼び込んだホットバトルの後には、一転してジェイクを認めている。互いの力、技術をぶつけ合ったファイター同士の心に、通じ合うものがあったようだ。

となれば、再戦が楽しみになってくる。GHC王者ジェイクとのタイトルをかけた決着戦に、もちろん藤田も異存はない。思えば藤田は2022年2月、中嶋勝彦に勝利し第37代王座に就いている。V1を果たしたものの、V2戦を前にコロナ陽性となり無念の王座返上となった。再戴冠への思いがあるはず。

ジェイクは3・3富山・高岡大会では「もう気持ちは切り替えた。ベルトのことしかない」と、GHC王座奪還に集中。藤田との再戦はタイトル戦として実現するのか。再び論争が始まるのか。いよいよノアマットから目が離せない。

<写真提供:プロレスリング・ノア>

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