「残業」か「自己研さん」か 医師の働き方改革、曖昧な境界線 県内病院でも実態把握難しく

更新したシステムで医師らの勤務時間を確認する獨協医大の福田副院長=壬生町北小林

 4月に始まる医師の働き方改革。大学病院などでは、「労働」と時間外に知識や技能の習得を図る「自己研さん」の境界が曖昧で、医師の過重労働が見えづらくなると指摘されている。勤務時間の適正管理や質の高い医療の提供に向け、県内の病院でも労働時間を正確に把握するための模索が続いている。

 厚生労働省は2019年、上司の指示や業務と関連があれば労働、それ以外は自己研さんとする通知を出した。22年、神戸市の甲南医療センターの専攻医(当時26)が過労自殺した問題をきっかけに、その線引きが注目されるようになった。今年1月には一部改正されたが、依然として曖昧なままだ。

 約650人の医師が働く獨協医大病院では、23年12月に勤怠管理システムを更新し、医師がパソコンから労働か自己研さんかを細かく申請して上長もそれを確認する手続きに改めた。更新前に求めていたのは出退勤の打刻だけで、自己研さんの範囲も医師個人の判断に委ねていたという。

 同病院の担当者は「大学病院は教育、研究、診療の3本柱で成り立つ。医師に求められる役割も多く、どうしても勤務実態の把握が難しかった」と振り返る。

 22年夏から働き方改革を本格化し、医師の宿直体制の見直しや業務の振り分けなども並行して進めた。その結果、時間外労働が年1860時間以上の医師はいなくなったという。多くの診療科の医師は、4月からの上限年960時間内に収まっているとされる。

 他の病院でも、正確な労働時間把握に向けた対策が進む。県のまとめによると、芳賀赤十字病院や自治医大病院はスマートフォンなど情報通信技術(ICT)を活用した勤怠管理に取り組んでいるほか、足利赤十字病院は医師の副業・兼業時間を含む労働時間を把握できるシステムの導入を目指すという。

 獨協医大病院の福田宏嗣(ふくだひろつぐ)副院長は「長時間労働すると注意散漫となり、医療ミスが起こりやすいことはデータからも明らか。勤務時間をしっかり管理し、質の高い医療の提供につなげていく」と話した。

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