SKE48・荒井優希「ファンの皆さんに引き戻してもらった選抜復帰」

2月28日にリリースされるSKE48の32ndシングル『愛のホログラム』で、荒井優希が約2年ぶりに選抜復帰を果たす。じつに4作ぶりの選抜入りとなるのだが、これはなかなか大変なこと。一度、選抜として活躍したメンバーが再び返り咲くのは、かなり難しいからだ。

新曲が出るたびに初選抜の新メンバーが誕生していくので、選抜のイスはなかなか空かない。そのチャンスをうかがっているうちに、荒井優希はアイドルにとって大きな節目となる10周年も迎えている。これだけの厳しい条件が揃ったなかで、彼女はなぜ選抜復帰の日を待ち続けることができたのだろうか、ニュースクランチがインタビューで聞いた。

▲SKE48 荒井優希(©Zest, Inc. / AMC)【WANI BOOKS-“NewsCrunch”-Interview】

ファンの皆さんこそが最強だと思っているので!

「いま、こうやって振り返ってみると、たしかに2年って長い時間なんですけど、実際に活動していくなかで“長いなぁ〜”とは感じたことはないんですよね。もちろん、不安や焦りもありましたけど、だんだん考え方が変わっていったというか、良い意味で“このままでいいかな”と思ったときもありました。

選抜ではなかったけれど、私もお仕事はたくさんあったし、周りを見ても、ものすごく充実しているメンバーもたくさんいて“あぁ、選抜だけが絶対じゃないのかもな”って。ひょっとしたら自分の視野が狭かったのかな? もう選抜にこだわらなくていいかなぁ〜って思い始めていた時期はたしかにありました」

そういう生き方もあるし、否定することはできないのだが、もし、そのまま諦めてしまっていたら、今回の選抜復帰はおそらくなかっただろう。荒井優希が思いとどまり、再び選抜の座を視界に入れて活動してきたからこそ道は拓けた。それを後押ししてくれたのはファンの声だった。

「絶対に選抜に戻ろうね!って、たくさんのファンの方が言ってくださって。それで諦めちゃダメだって。本当にファンの皆さんに引き戻してもらったなって思います。焦りがある反面、心のどこかで“いつかは必ず選抜に復帰できる”という強い気持ちもあって。それはファンの皆さんが応援してくださっている姿を見ていたからです。私のファンの皆さんこそが最強だと思っているので!

だからこそ、ファンの皆さんを悲しませたくなかったし、私も負けず嫌いだから“このまま(選抜復帰できない)で終わったら、絶対に後悔するだろうな”って諦められない気持ちになっていたんです」

アイドル×プロレスの二刀流として活動

2021年5月からはプロレスラーとして東京女子プロレスに本格参戦。アイドルとプロレスの二刀流として活動してきたが、皮肉なもので選抜でなくなってから、プロレスラーとしての評価がどんどん高まっていった。両方がドカーン! とうまくいく、というのは理想像であって、現実はそうそううまくは話が進まない。

どうせなら選抜落ちした悔しさをリングで表現してみたらどうか、そうプロレスの取材をしながら考えていた。間違いなく話題になるし、その話題性で選抜復帰の道も拓けるのではないかと思ったからだ。しかし、荒井優希はそれをヨシとしなかった。あくまでもアイドルとしての力だけで選抜に復帰する……そう、今回の復帰劇はどこまでもピュアなものなのである。

それだけの想いがあったら、選抜復帰を知ったときには、感情が爆発して、感涙にむせんだのではないか、と思いきや……。

「いや、泣いちゃうとかないですよ(苦笑)。本当に冷静に“えっ、いいんですか?”って。もちろん、うれしかったんですけど、最初に聞いたときにはまったく実感がなくて。やっぱりファンの方がそれを知って喜んでくれている姿を見て、初めて私も実感が沸いてくるんだろうなぁ〜って。

でも、メンバーやスタッフさんからたくさん“おめでとう!”と言ってもらえて、あぁ、こんなに喜んでくれる人がいるんだって。私、もう11年目だし、若手でもなければ初選抜でもないのに(笑)。発表された翌日に東京女子プロレスの試合があって、特典会にたくさんファンの方が来てくださったんですけど、“おめでとう!”って伝えてくれるだけじゃなくて、泣いちゃう方がいっぱいいたんですよ。

もちろん、みなさんがすごく応援してくれていることはわかっていたけど、やっぱり目の前で涙を見てしまうと“あぁ、そこまで想っていてくれたんだ”って、私もグッときちゃいましたね。みんなの愛を改めて感じました」

▲ファンの愛を感じたと語る荒井優希(©Zest, Inc. / AMC)

SKE48としては久しぶりの失恋ソング

こうやってファンが応援してくれるのは、選抜を離れていた2年間も、アイドルとして進化しつづける姿を発信しつづけてきたから。特に2022年12月11日にスタートしたTeam KⅡの新公演『時間がない』は、アイドルとしての荒井優希の「見え方」を大きく変えてくれた。

「そうですね。プロレスをやってきたことが評価されて、それがわかりやすい形で見えるようになったのが『時間がない』公演だと思います。プロレスのことを連想させるような歌詞があったり、プロレスを彷彿とさせる動きや演出があったり」

実際、この公演において、荒井優希がリングの上よりも凛々しく、カッコよく見える瞬間がたくさんある。たしかに考えてみたら、既存のSKE48の楽曲にそういったものを落としこんでいくのは難しい。すべてが書き下ろしの新公演だからこそ、荒井優希の「いま」をダイレクトに反映させることができた。まさにアイドルとしてのターニングポイントである。

さらに昨年10月に開催された『SKE48 リクエストアワーセットリストベスト100 2023』では、彼女がセンターを務める楽曲『あの頃のロッカー』が堂々の第1位を獲得。日々の劇場公演で見せる進化と、リクアワという晴れ舞台で残した実績。これはもう納得の選抜復帰である。

ただ、2年という月日はSKE48の風景を大きく変えていた。

「環境はものすごく変わりましたね。今までは選抜に入ると、Team KⅡの先輩方と一緒に時間を過ごしてきたんですけど、この2年で皆さん卒業されてしまって。選抜メンバー全体を見ても、私より先輩は2人しかいないんですよ。そう考えたら、後輩たちにすごく“見られている”ことを意識しましたね。だから、自分の行動とかも大事だし、今までの選抜とは全然違うんだなって。

今までと違うといえば、MV撮影のときにはハプニングが起きる、というのがSKE48あるあるだったんですよ。沖縄でロケをしていたら、天気がものすごく荒れて、撮影がまったく進まなくなったり、体調不良のメンバーがたくさん出て、撮影していくうちにメンバーがどんどん減っていたりとか(苦笑)。

でも、今回の撮影ではそういうハプニングがまったく起こらなくて、めっちゃ円滑にスケジュールが進んでいったんですよ! なんかSKE48がものすごい優等生集団に見えました(笑)」

今回のMVはアイドルとしてはちょっと異色な作品で、メンバーはいっさい笑顔を浮かべないし、飛び散る汗もない。

「私たちは人形という設定なんですよ。そういう世界観が好きなので、私としてはうれしかったんですけど、“人形だから瞬きはNG”という指示がちょっと大変でした(笑)」

▲『愛のホログラム』選抜メンバー(©Zest, Inc. / AMC)

もちろん、これはMVでの世界観。この先『愛のホログラム』がステージやテレビで披露されていくなかで、どんどん楽曲が育ってくる予感でいっぱいだ。

「SKE48としては本当に久しぶりの失恋ソング。何度も聴いていただきたいし、MVも繰り返し見てもらいたいですね」

▲北川愛乃(写真左)と2ショット(©Zest, Inc. / AMC)

『愛のホログラム』から広がる新境地へ

ただひとつ、心配なことがある。選抜メンバーとして、これまで以上にSKE48としての活動が増えている今、プロレスとの二刀流は大丈夫なのか? スケジュール的にはかなり大変になりそうだが……。

「今なら大丈夫ですよ。最初の頃は、名古屋と東京を往復して道場に通うだけでも“大変だなぁ〜”と思っていましたけど、すっかり移動にも慣れました。5月でプロレスラーとして3周年を迎えるんですが、試合が終わったあとの体のケアの仕方も覚えたので不安はないですね」

1月4日にはプロレスラーとして初のシングル王座となるインターナショナル・プリンセス選手権を戴冠。2・10後楽園では早くも初防衛に成功し、3月31日に両国国技館で開催されるビッグマッチでは、写真集を出版するなどグラビアタレントとしても活動している上福ゆきの挑戦を受けることが早くも決定した。

つまり、荒井優希は両国国技館のリングにチャンピオンとして、そしてSKE48の選抜メンバーとして立つことになる。二刀流を始めてから約3年。これはひとつの快挙である!

▲チャンピオンとして、SKE48選抜メンバーとしてリングに上がる(©東京女子プロレス)

「よく間違われがちなんですけど、私、プロレスラーになってから初めて選抜入りするわけじゃないんですよ。プロレスを始めたときは選抜に入っていたので(笑)。でも、こうやってプロレスでベルトを巻けて、SKE48の活動もどんどん多くなってきて、ファンの方に楽しんでいただけることが増えてよかったなって思います。

今回の『愛のホログラム』をきっかけに、SKE48をいろんな人に広げていきたいので、アイドルとしても、プロレスラーとしても応援よろしくお願いします」

荒井優希にとっても、SKE48にとっても、さらなるジャンプアップが期待される新境地が『愛のホログラム』から広がっていきそうだ。

(取材:小島 和宏)

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