【前田敦子インタビュー】東京の島でカワハギを“ちこちこ”釣りたい!

ドラマや舞台、映画と引っ張りだこの前田敦子さん。難しい役どころに挑戦した、2024年2月公開の映画『一月の声に歓びを刻め』の話を皮切りに、地元・千葉のおいしい話から大好きな釣り、息子さんとの旅のことも聞きました。

前田敦子

まえだあつこ/1991年、千葉県生まれ。アイドルグループ「AKB48」の第1期生として2012年まで活動し、卒業以降は俳優として活躍。2019年に映画『旅のおわり世界のはじまり』と『町田くんの世界』で第43回山路ふみ子映画賞女優賞を受賞。近年の主な出演作に、映画『もっと超越した所へ。』『あつい胸さわぎ』、ドラマ『かしましめし』『彼女たちの犯罪』『厨房のありす』など多数。

2024年2月9日公開の映画『一月の声に歓びを刻め』は、三島有紀子監督が長年向き合い続けてきた自身のあるつらい体験をモチーフにして創り上げた作品で、北海道の洞爺湖、伊豆諸島の八丈島、大阪の堂島を舞台に物語が描かれる。主人公は、かつて幼い娘を亡くした悲しみを抱えるマキ、突然の娘の妊娠にとまどう父親の誠、そして前田さんが演じた、過去の出来事がトラウマとなって好きな人と触れ合えない「れいこ」。

—— 映画出演の話があったときはどのように感じましたか?
前田 毎回出演のオファーをいただいたら、自分がやらせていただいてこたえることができるのかを考えますが、今回は特に考えました。1カ月くらい迷いましたが、その間、三島監督は催促するのでも、ほかの方を探すのでもなく、迷いなく真っすぐに待ってくださって。これなら監督に付いていくことができるかもしれないと思い、お引き受けしました。

—— 脚本を読まれたときの「れいこ」の印象は?
前田 三島監督自身の実体験やいろいろな思いが入っている作品ですが、それを問いかけてくるわけでもなく、押しつけるわけでも、訴えかけるわけでもなく、いろいろなふうに受け止めることができる脚本でした。
れいこについても、つらい思いを抱えていますが、狭い世界できゅっきゅっと小さくなって苦しんでいるのではなく、すごく壮大な世界を見せてくれる脚本で。気持ちよく深呼吸をしながら、れいこを演じられました。
実体験を入れているけれど、押しつけないし、余白をくれる作品で、作品性を大切にしながら映画を創られている三島監督がすごく素敵だなと思っています。

—— 前田さんの演技も押しつけがなく、観る側に考えさせる余地を与えてくれていました。
前田 撮影をした場所が実際の出来事が起こった現場で、その場所で監督がご自身の体験を淡々と話してくれました。それを、私のなかに落として、ミスがないよう観ている方に届けられたらいいなと。監督は「かわいそう」と思われる演技を一番やってほしくないとおっしゃっていたので、そうだよなと納得しながら、当事者を演じるのだけれど、どこか客観的に表現できたらと思いながら演じました。

観る側に考える余白をくれる 押しつけのない作品

—— 役作りはどのように?
前田 分析などは一切せず、頭をまっさらにして、そのとき感じたようにセリフを並べていけたらと思いながら演じました。
三島監督が、撮影の直前に自分の感情をいろいろ話してくれて。そのとき思いましたが、自分のことを伝えるときは淡々としているものだなと。つらいことだけれど、悲劇を悲劇的に語らない。それを感じたので、私が演じるときも、感情ばかりが高ぶってしまうと、大事なことが伝わらないと思いました。どこまで“無”になれるかが勝負だったと思います。

—— 前半はセリフも少なく、目の動きや佇まいで見せる演技ですが、後半、れいこが思いを吐露するシーンに向かっていきます。その静から動への演技が素晴らしかったです。
前田 れいこは初めは心を閉ざしているのですが、トトという人物に出会ったことを機に、世界が開けていくような感じがします。
でも、れいこが特別にかわいそうな人でもなく、誰だって大なり小なり、それぞれ絶対傷ついたこともあるし、悩みもあるのが人間だよなって思うんです。作品全体を観ていても、三つの物語があって、みんなそれぞれに傷ついていることがありますよね。でも、それが特別にすごくかわいそうな人でもなく、誰もが抱える思いのようなものの一部を描いているんだ、と思いながら演じていました。

—— なるほど。だから観ていて、前田さんに自分を投影するような感覚になったのかもしれません。
前田 そう言ってもらえるとうれしいです。誰でも落ち込むことはあるし、れいこのように叫びたくなることもありますよね。それはふっと湧いてくる感情かなと思うので、あまり特別なことではないのかなと思います。

—— ロケ地の堂島の印象は?
前田 撮影期間が2日間しかなく、撮影場所のホテルに缶詰めだったこともあって、大阪を観光することはできず……。といっても、堂島は観光スポットというより、夜の活気あふれる町!という印象でしたね。でも撮影はしやすかったですよ。ホテル街とか、高架下とか、人目を気にせず撮影できるような環境だったので、お芝居に集中できました。

旅は大好き! 2023年は少なくとも10カ所へ

—— 作品に出てくる洞爺湖や八丈島に行かれたことは?
前田 残念ながらないんですよ。国内はいろいろなところに行っているんですけどね。2003年1年だけでも、プライベートで10カ所は行きました。

—— 10カ所も! 旅が本当にお好きなんですね。
前田 大好きです! 国内旅行が好きで、4歳の息子とよく行きます。最近は仕事で宮崎に行きましたが、そのまま息子と一緒に福岡にお墓参りに行って、さらに足を延ばして島根の出雲大社にも行きました。
東京から島根に行こうと思うと、かなり時間がかかってしまいますが、福岡からは近いので「よし、このまま行っちゃおう!」って。
この間は大阪に行きましたし、北海道にも1週間行きましたよ。

—— フットワークが軽いですね。 北海道ではどんなことを?
前田 北海道の友だちにいろいろなところに連れていってもらいました。ちょうどカニがおいしい時期だったので、思いっきり堪能しました。

映画のロケ地に使われた八丈島の、大坂トンネルからの展望。黒潮の恵も受けており、海釣りのスポットとしても人気が高い。(写真=八丈島観光協会)

—— カニといえば海産物つながりで。釣りが趣味だと聞きました。始めたきっかけは?
前田 やってみたいと思ったのは12~13歳の頃でした。初めて釣りに挑戦したのが、17歳のときに出演させていただいたNHKの『にっぽん釣りの旅』という番組です。そのときにカワハギ釣りを体験させてもらったのですが、それ以来、すっかりハマってしまって。なかでも一番好きなのはウマヅラハギ釣りです。

—— カワハギ釣りの魅力は?
前田 カワハギ用の仕掛けって、釣り糸から針が3本出ていて、そこに一つずつエサを付けるんです。そして海底に針をたらし、さおを少し上げたり下げたりして“ちこちこ”釣るんです。疑似餌を付けてさまざまな動かし方で魚を釣るルアー釣りよりも、カワハギ釣りのように、真っすぐ糸を落として、“ちこちこ”釣るのが好きですね。

—— 大物が釣れたことは?
前田 大きいのはそんなに釣れていませんね。たまたまタイが釣れたことがあるくらい。イナダくらいの魚が釣れたことはありますが、サメに食べられてしまって……。でも引きが強い魚も楽しいので、どんどん挑戦したいですね。

—— 釣りに行きたい場所は?
前田 伊豆諸島の八丈島や大島です。東京の島に行って沖釣り、したいですね~。釣り好きのおじちゃんたちと並んで、夕方くらいまでのんびり釣りをするのもいいですね。

この続きはぜひ本誌で インタビューの続きは『旅の手帖』2024年3月号に掲載されています。ぜひ雑誌でご覧ください。 『旅の手帖』2024年3月号

映画 『一月の声に歓びを刻め』

2024年2月9日よりテアトル新宿ほか全国公開

© bouquet garni films

次女を亡くした悲しみを抱えながら北海道・洞爺湖近くで暮らすマキ(カルーセル麻紀)。娘の突然の妊娠に戸惑う東京・八丈島の誠(哀川翔)。そして、元恋人の葬儀で大阪・堂島を訪れたれいこ(前田敦子)の物語。過去のトラウマが原因で、好きな人と触れ合えないれいこは、声をかけてきたレンタル彼氏のトト(坂東龍汰)と一晩を過ごすことを決意して—— 。
脚本・監督/三島有紀子 配給/東京テアトル
出演/前田敦子、カルーセル麻紀、哀川翔 ほか

映画『一月の声に歓びを刻め』公式サイト

聞き手=岡崎彩子 撮影=千倉志野
『旅の手帖』2024年3月号より一部抜粋して再構成

スタイリング=Yusuke Arimoto (7kainoura)
衣装協力:トップス スタイリスト私物、ボトムス ¥46,200 AKANE UTSUNOMIYA ☎03-3410-3599、イヤーカフ ¥25,300 PLUIE ☎03-6450-5777
メイク=RIHO TAKAHASHI (HappyStar)

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