1台5役で使える革新的なノートPC『Zenbook DUO』を使って分かったコト

2024年3月4日に、ASUSから新しいノートPC『Zenbook DUO(UX8406MA)』が発表された。上下に2枚のディスプレイをもつ革新的なノートPCで、様々なスタイルでの操作性を可能としている。詳細についてはイベントレポートの記事もご覧いただきたいが、製品発表に先駆けて『Zenbook DUO』を借用できたので、ここにインプレッションをお届けしたい。上下2画面のノートPCは、実際のところどれほどの恩恵があるのか。その感想を述べていこう。

■馴染みあるデザインをベースにした拡張性

『Zenbook DUO』は極めて個性が強い製品なのに、外箱などのパッケージデザインは他シリーズと同様にシンプルだ。開封するとPC本体の他に、ACアダプターとケーブル、ASUS Pen 2.0が付属している。ACアダプターの出力は65W。重量は102gで、この性能のアダプターとしては軽量な部類といえる。改めて本体を見ていこう。まずは天板デザインについてだが、『Zenbook DUO(Duo)』の名を関したモデルは過去にいくつもリリースされている。多くは同心円状のヘアライン加工を施していたが、本モデルには幾何学的なモノグラムを採用。2024年初夏モデルとして登場した他のZenbookも同様の天板デザインになっており、全モデルでデザインが統一されたカタチだ。

いざPCを開いてみると、特に変哲のない一般的なデザインだ。歴代の『Zenbook Duo』であれば、キーボード上部に横長のセカンドスクリーンがあったが、本モデルは一味違っており、キーボード+トラックパッド部分が丸ごと着脱可能。まさに真のセカンドスクリーンを実現したモデルとなっている。ディスプレイ品質は上下とも同スペックで、14インチのタッチ対応有機ELパネルを採用。解像度は2,880×1,800ドット、リフレッシュレートは120Hzだ。こうした上下にディスプレイを備えたノートPCといえば、Lenovoの『Yoga Book 9i Gen 8』があり、筆者も触ったことがあるが、あちらはフルキーボードやトラックパッドを備えておらず、感覚としては大型化した折りたたみスマホに近い。同じ2画面ノートであっても、性格はかなり異なる。

PCとキーボードはマグネットで合体しており、取り外したキーボードはBluetooth接続でワイヤレスキーボード化が可能だが、合体時は非ワイヤレスで動作する。このキーボードは指先でつまめるほど薄型軽量で、単体の製品としても完成度が高い。言ってしまえばノートPCライクな操作性とトラックパッドを備えたワイヤレスデバイスなわけで、タブレットなどと繋いでも活用できそうだ。キーボードの左側面には充電のためのType-C端子が備わっている。PC本体のインターフェースは、左側面にUSB 3.2 Gen1とThunderbolt 4端子が2口、右側面にフルサイズのHDMI端子とヘッドホン端子を搭載。エアフローのための排気口も見える。

■5つのモードをチェック

『Zenbook DUO』のスペックを簡単にまとめよう。CPUはCore Ultra 9 185H(Intel Arcグラフィック内蔵)、メモリは32GB、ストレージはNVMe M.2のSSD 1TB。重量はキーボード込みで約1.65Kg。75Whの長寿命バッテリーを搭載し、バッテリー駆動時間は約16.6時間(Bluetoothキーボード接続時、JEITA測定法2.0に基づく)。上下2画面を持ち味とする本機だが、5つのモードが公式から提案されている。「ノートパソコンモード(物理キーボード)(バーチャルキーボード)」、「デュアルスクリーンモード」、「デスクトップモード」、「共有モード」の5つだ。

それぞれのモードの簡単な使い心地を紹介しよう。まずは「ノートパソコンモード」だが、こちらは通常のノートPCと同様の使用感となる。特に操作上の違和感もなく、高性能スペックな軽量PCといった印象だ。物理キーボードを取り外すと、下画面に仮想キーボードを表示することができる。これがもうひとつの「ノートパソコンモード」であり、2画面PCらしさを感じる部分だ。キーボード上部の横長スペースには、仮想的なコントローラーやランチャーを表示したり、ブラウザや動画を配置することも可能。歴代の『Zenbook Duo』と似たスタイルといえる。仮想トラックパッドを右側に表示させて、前モデルの『Zenbook Duo』の操作性をトレースすることも。ここからさらにファンクションキーの表示もできるため、キーボードエリアのカスタマイズ性は高い。あるいはキーボード下部に仮想トラックパッドを表示させて、物理キーボードそのものをトレースすることも可能。なんだかんだでこのスタイルが使いやすいのは事実だ。

2画面を縦に並べた「デュアルスクリーンモード」では物理キーボードを取り外した状態で使うことで、2画面すべてに情報を表示できる。感覚としては14インチディスプレイを2枚使ったマルチディスプレイ環境に近く、作業効率はかなり高い。見た目のインパクトは大きいが、2画面のノートPCを使うのであればぜひこのモードを使いこなしたいところだ。このモードを実現するのに欠かせないのが、底面に内蔵されている金属製のキックスタンド。40~70度の間を無段階に調整可能で、PC本体をしっかりと支えてくれる。配置次第では普通にノートPCを置く際よりも接地面積を抑えることができ、カフェテーブルのような狭い場所でも置くことが可能だ。

■また、キックスタンドを最大まで広げた状態で90度回転させれば……。

ディスプレイ2枚を横に並べた「デスクトップモード」へと移行できる。安定感が気になるかもしれないが、キックスタンドの角が「デスクトップモード」を想定した角度で切られており、押してもグラつかないよう設計されている。横長にディスプレイが並ぶため、大きな一枚のディスプレイを見ている感覚になれるのがこのモードの特徴。公式は「19.8インチのディスプレイ」と謳っているが、あながち間違いではない感覚。そもそも縦画面はブラウジングや事務作業に向いており、例えば左画面で表計算をしつつ右画面には資料を出しておく、といった使い方も。意外にもビジネス向きなモードといえる。最後は「共有モード」を紹介しよう。これは下画面に表示している情報を上画面に反転してミラーリングするモードだ。主な利用シーンは対面の人に向けて画面の資料を見せたい時で、プレゼンや会議といったビジネスでの活用が期待できる。ディスプレイをペタっと180度展開することになるため、ASUS Pen 2.0とも相性が良いだろう。

■操作性と大画面を両立した、次世代のノートPC

これらの機能を活用しながら、さらに持ち歩けるのが『Zenbook Duo』の最大の魅力だろう。ノートPCの作業領域を増やすにはモバイルディスプレイやタブレットなどの別途デバイスを活用するのが一般的だが、本機なら一台で2画面をカバーできる。さらに従来通りのキーボードを搭載している点も見逃せない。例えば前モデルの『Zenbook Duo』であれば、セカンドスクリーンの代償としてキーボードやトラックパッドの面積が縮小してしまったが、ディスプレイの面積も増やしたい。しかし従来のノートPCと変わらないインターフェースも確保したい。結果として、本機は2画面の本体のなかに薄型のワイヤレスキーボードを盛り込む方法を採用したが、結果として従来通りのノートPCらしい操作性と2画面性の確保に成功している。実に見事なアイディアだ。

総じて、大画面性と操作性の両面を実現することに成功したのが、2024年の『Zenbook DUO』だと言える。普段は従来のノートPCとして使いつつ、ここぞという時には大画面に変身。まるで真の実力を隠した能力者のようなカッコよさがあるじゃあないか。

文・写真=ヤマダユウス型

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