『アクターズ・ショート・フィルム4』監督登壇イベントレポ 森崎ウィンは監督の肩書に大興奮

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俳優が短編映画を監督するシリーズ第4弾、WOWOW『アクターズ・ショート・フィルム4』の一挙上映&監督登壇イベントが、3月3日に都内映画館で実施され、千葉雄大監督、福士蒼汰監督、森崎ウィン監督、仲里依紗監督がそれぞれの上映会に参加した。

『ハルモニア』千葉雄大監督 登壇イベント

一ノ瀬颯らが出演する群像劇『ハルモニア』を手掛けた千葉監督。『アクターズ・ショート・フィルム』への監督参加は、『あんた』に続いてこれで2度目となる。今回の監督業再オファーについて「ビックリしました!」と驚きつつも「前回も楽しかったので、またやりたいと思って飛び込みました」と前向きに取り組んだという。

前作との心構えの違いについては「今回は良くも悪くも『こうしたいああしたい』という欲みたいなものが具体的にありました。撮影現場でも前回と同じスタッフさんが多かったので、1回目よりもチーム感があって話もしやすかった」と再挑戦ならではの変化を実感。前作は主演も兼ねていただけに「前回は演技をしながら自分でカットをかけたり、(共演者の伊藤)沙莉にかけてもらったりして難しかったけれど、今回は全部自分でスタートとカットをかけました」と胸を張った。

一方、同席した宮田プロデューサーは千葉の監督としての変化について「前回は主演もされていたので、演出しながら芝居をして……と忙しそうでした。でも今回は演出に集中されていたので頼もしく、安心して見ていられました。俳優の演技を一番に考えた現場作りをされていました」とその姿を伝えていた。

観客とのQ&Aでは客席から監督としての次回作を要望する声が挙がると、宮田Pも「それは僕も思います。是非とも長編を撮ってほしい!」と期待。千葉監督はこれら声援に「お仕事、お待ちしております!」と満更ではない様子を見せていた。

最後に千葉監督は、本作のテーマに絡めながら「皆さんの身の回りには絶対に小さな幸せのひとつは転がっているはずなので、それを見逃さずに健やかにお過ごしください」と優しく呼び掛けていた。

『イツキトミワ』福士蒼汰監督登壇イベント

清水尋也と芋生悠が共演するビターなラブストーリー『イツキトミワ』を手掛けた福士監督。「監督の福士蒼汰です」と監督デビューの初々しい挨拶をすると、満席の会場からは拍手が沸き起こり、福士監督は恐縮しきり。

オファーを受けた際の心境を問われると「俳優として監督を目の前にして仕事をする中で、監督は難しくて出来ないだろうと感じていました。けれどオファーをいただいて色々と考える中で『昔やってみたかったよな』という思いがあり、そんな気持ちと時期的にタイミングも合って受けることにしました。自分の想いを作品として残してみるのも自分の人生において良いのではないかと思いました」と話した。

福士蒼汰監督

監督のみならず脚本も手掛けており「当初は監督としてのオファーだったので、脚本はやるつもりはなかったけれど……」と苦笑いを浮かべながら「プロットを書いて和田プロデューサーに見せたら『書けそうですね、書いてみましょうよ』と言われて」と経緯を説明。執筆については「予算内であればなんでも良いと言われたけれど、逆になんでも良いって難しい。制限があった方が書きやすい」と苦労したよう。

同席した和田Pからは「初顔合わせの際に福士さんから渡されたプロットが、しっかりとした物語の形になっていた」と絶賛され「福士さんは仕事の早い監督。スケジュールの都合上、脚本の段階で変更せざるを得ない所があっても、次の日くらいには『直しました!』と提出してくれる。判断と決断、直しが早い。もちろんディテールにはこだわるけれど、そこから先が早い監督でした」と高評価を得ていた。

一方、福士監督は主演の清水について聞かれると「清水君は最強! 撮っていても魅力的だしめちゃくちゃいい奴。撮影初日も『緊張して寝られなかったですよ!』と教えてくれたりして……。めちゃくちゃ可愛いなと。無表情でいたら何かを起こしそうな顔をしているけれど、素顔はメッチャ可愛くて好青年」と魅力を熱弁。

観客からお気に入りのシーンを聞かれると、酔っぱらった一葵(清水)と三羽(芋生)が夜道を歩く場面をピックアップ。「自分の中で一番キラキラキュンキュンさせたくて、ここで最大の明るさと青春を描きたかった。その結果、トレンディーになり過ぎて『恥ずっ!』と思ったけれど、それが逆に良いなと。寝ないで書いたセリフをそのまま使ったり、入れ替えてみたり、セリフにもこだわりました。あのシーンには自分のエッセンスが結構詰まっています」と自信を覗かせていた。

監督初挑戦に手応えを得ている福士監督。和田Pから「福士監督からはすでに次回作のアイデアも聞いています。それだけ監督業を楽しんでくれた」と言われると「そうでしたっけ!?」ととぼけながらも、監督業再挑戦に向けて前向きな表情を浮かべていた。

『せん』森崎ウィン監督登壇イベント

中尾ミエを主演に、田舎に住む老婆の日常をミュージカル調で描く『せん』を手掛けた森崎監督。満席の会場に向けて挨拶を求められると「このたび『せん』の監督を務めました……。うおおお!」と監督という念願の肩書に大興奮で、ファンからも盛大な祝福の拍手を送られていた。

ミュージカル映画を監督することを自身の目標に掲げてきたという森崎監督。「まさかこんなに早く願いが叶う日が来るとは思わず、今回のオファーは純粋に嬉しくて、撮影も本当に楽しかった。俳優業とはまた違うワクワク感があって、ゼロからものを作り上げることに携わったことで新たなモノづくりの魅力と深みを実感しました。自分がエンターテインメントという素敵な世界に携われている幸せを改めて噛みしめることが出来ました」と大興奮だった。

森崎ウィン監督

脚本・作詞を託したのは、森崎監督がその才能に惚れる上田一豪。森崎監督は「自分が監督でミュージカル映画を撮るならば、上田さんに脚本を書いてほしいとお願いしました。打ち合わせで、僕が今の世の中で起きている事をどう映画に落とし込もうかと話していく中で今回の物語のベースが出来上がりました」と熱のこもった共同作業を振り返った。

自他ともに認めるおばあちゃん子である森崎監督は、中尾の起用について「今回の物語でおばあちゃんを中心に描きたいと思った段階で、中尾ミエさんのお名前は頭にありました」と念願かなったようで「中尾さんは歌唱シーンが一番ある中でオファーを快諾して下さり、僕が一度共演させてもらった時に築いた関係性は未だに残っていたんだと感謝しています」としみじみ。ちなみにミャンマーにいる祖母にも、いつの日か本作を見せたいそうだ。

森崎監督は俳優としても出演し、歌唱も披露するが「監督と俳優の切り替えは難しくて、演技に集中し過ぎてカットを言い忘れて『あ、俺が言うのか』となった」と思い出し笑い。自身の歌唱シーンは技術的問題で伴奏を聞かずにアカペラで臨んだそうで、カメラの後ろで音楽監修の山野氏が指揮者のようにリズムを取っての撮影になったという。「長回しのワンカットで撮りたかったので、OKになった時は現場中がとんでもない盛り上がりになった」と見どころに挙げていた。

また、『せん』という意味深なタイトルについて聞かれた森崎監督は「戦いの発端になるボーダラインという『せん』の意味もあるし、戦争の『せん』と捉えてもらっても構いません。生きていく中で人間は勝手に線引きをしている瞬間もある。ただタイトルを漢字で『線』にしなかったのは、それだけに捉われてほしくなかったからです」と解説。ちなみに題字は森崎監督自らが書こうとしたものの「僕の字を見た樋浦さんの反応が微妙で……」と残念そうに森崎監督がぶっちゃけると、樋浦Pは「森崎監督バージョンもアナザービジュアルとして解禁しましょう!」と提案。集まったファンを歓喜させていた。

『撮影/鏑木真一』仲里依紗監督登壇イベント

お笑いトリオ・ロバートの秋山竜次がセリフ0でシリアス芝居を見せる『撮影/鏑木真一』を手掛けた仲監督。「今日はパリコレの気分で来ました。ここはもはやパリです」とシルバーのヘッドピース&巨大イヤリングにフワフワピンクドレス姿で登場して「立ち位置に“監督”って書いてある! 嬉しい!」と監督デビューに大興奮だった。

監督としてのオファーを引き受けた心境について仲監督は「今回のオファーを引き受けたのは、新しいことへのチャレンジというか『面白そう! やってみよう!』というというホップステップジャンプ。それでここにいる感じです」と笑わせながら「私は暗い内容やホラーとか恐ろしいモノしか見ないタイプでハラハラしたものが好み。監督をやらせていただく中でハラハラしたものを作ろうと思った」とシリアスなストーリーにした理由を解説。トラウマを抱えた鏑木(秋山)が洗面所で薬を飲むシーンに触れて「朝起きて鏡の自分を見ながら薬を飲むという展開は海外のホラーによくあるシーン。意味はあまりないけれど、それを私もやりたかった」とホラー愛を滲ませていた。

仲里依紗監督

仲監督は秋山への演出について「秋山さんの邪念をゼロにするというコントの時の顔が欲しかった。それをお伝えすればわかりやすいかなと思って、邪念には10段階があるので『邪念5でお願いします。次は邪念7で』という形でお願いしました」と回想。「私は秋山さんのファンなので、いつもとは違った秋山さんを見てみたいという思いがありました」とキャスティングの狙いも説明した。

また仲監督は、今回の監督業を通して「自分の頭の中にあるものを口に出して人に教えるのは大変だと思った。それに監督は意思が強くないとできない。監督は勇気をもって俳優に指示してくれていることがわかった」と監督の立場も理解したそうで「今後は女優としてこれまで以上に監督の思った事をできるような人間になって『わかりました!』と返事もより一層大きく言いたい。監督が意見を言いやすい環境作りをしなければ」と俳優としてのスタンスにも影響を与えたようだった。

さらに、秋山のセリフをゼロにしたことでセリフを言う重要性にも気づいたという。「編集作業の時に、セリフがないのは大変なんだと思った。的確な説明セリフがあるのは、編集を楽にするためなんだと発覚しました」と実感。それでも今回の作業で一番楽しかったのは編集作業だったそうで「なぜならばYouTubeを自分で編集しているから」と普段の活動が監督業にも役立ったという。

最後に仲監督は「普段の私はド派手な恰好をしているので、それからは想像がつかないホラーな作品になっています。大好きな人たちと大好きなジャンルを作れたのが嬉しいです。ホラーサスペンスの中にある社会的なメッセージも受け取ってほしいです」と呼び掛けていた。

ユナイテッド・シネマ豊洲では、3月4日(月)から7日(木) まで4監督の作品を一挙上映。入場者プレゼント「映画フィルム風しおり」も配布中。また、WOWOWオンデマンドでは監督作品に加え、それぞれの監督の挑戦を追いかけた未公開メイキングと個別のロングインタビューも放送・配信する。

<劇場公開情報>
『アクターズ・ショート・フィルム4』

3月4日(月)~3月7日(木) 全4作一挙上映
会場:ユナイテッド・シネマ豊洲

<イベント情報>
『アクターズ・ショート・フィルム4 完成報告座談会』

3月5日(火) 19:00~予定
出演者(50音順):千葉雄大監督、仲里依紗監督、福士蒼汰監督、森崎ウィン監督

※イベントの模様はWOWOWオンデマンドとWOWOW公式YouTubeで無料生配信

<番組情報>
『アクターズ・ショート・フィルム4』

3月8日(金) よりWOWOWプライムで毎週1本ずつ放送

3月8日(金) 午後11:30~ 千葉雄大監督作『ハルモニア』
3月15日(金) 午後11:30~ 仲里依紗監督作『撮影/鏑木真一』
3月22日(金) 午後11:30~ 福士蒼汰監督作『イツキトミワ』
3月29日(金) 午後11:30~ 森崎ウィン監督作『せん』

詳細はこちら:
https://news.wowow.co.jp/825.html

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