アメックスが「ゴールド以上、プラチナ未満」のメタルカード発行 識者は「“使わせる”特典満載のカード」

金色の券面でメタル製が特徴の「アメリカン・エキスプレス・ゴールド・プリファード・カード」

2月20日に、アメリカン・エキスプレス(アメックス)から発表された「アメリカン・エキスプレス・ゴールド・プリファード・カード」が話題となっている。

これまで、アメックスの“顔”ともいうべき存在だった「ゴールド・カード」は年会費が3万1900円(税込み、以下同)だったが、「ゴールド・プリファード・カード」は3万9600円と、7700円の差がついている。ゴールド・カードとの違いは? そしてどんな人が、どのような使い方をするとお得になるのか? クレジットカードの“達人”でもある、ポイント交換サービス情報の総合サイト「ポイ探」を運営する菊地崇仁氏に話を聞いた。

「今回の特徴は、リニューアルではないこと。ゴールド・カードの既存ユーザーはそのままの年会費で継続でき、これから申し込む人は、ゴールド・プリファード・カードになるという形です。アメックスは2023年、プラチナ・カードの年会費を2万2000円上げたときに、想定以上の退会者が出たのかもしれません。今回は、そういったことを防ぎ、既存ユーザーに影響を与えない方法を選んだ印象です。もちろん、ゴールド・プリファード・カードへの切り替え希望者は切り替えられます」

ゴールド・プリファード・カードは旧ゴールドカードの特典をほぼ踏襲しているが、大きな違いは3つ。まずは、券面がメタル(金属製)になったことが大きい。

「メタルの券面は非常に人気が高く、現在、メタル製のカードを日本で発行しているのはアメックス、ラグジュアリーカード、ダイナースクラブの3社で、それぞれ年会費がアメックス(プラチナ・カード)が16万5000円、ラグジュアリーカード(チタニウムカード)が5万5000円、ダイナースクラブ(プレミアムカード)は14万3000円。ダイナースのプレミアムカードの場合、メタルの申込みには発行手数料が2万円かかりますが、ダイナース側が想定していた以上に申し込みが多かったようで、発行が間に合わず、一時、申込みを止めたぐらいです。

クレジットカード会社に話を聞くと、顧客から『メタルカードを出す予定はないのか』という声がけっこうあるそうです。それだけ、メタルの券面を欲している人は多いので、反響は大きいように思います」

メタルカードが人気なのは、カードを出したときの優越感だという。

「メタルカードは持った感じが違うので、そこに惹かれる人は多いと思います。高級カードに多いブラックの券面よりも、さらにステータスを感じるのでしょう。以前に比べ、タッチ決済などが増えたことで、クレジットカードを出す場面は減ったとはいえ、高額支払いの場合などは、出すこともしばしば。そのときの印象が変わってくるのでしょう。

実際、メタルカードを出したいからということで、クレジットカードの利用頻度が上がるらしいんです。これは、クレジットカード会社にとってはメリットしかない。今回のアメックスも、メタルカードのコストはそこそこかかっても、利用金額が上がればペイできるでしょう」

2つめは「フリー・ステイ・ギフト」。これは継続特典で、年間200万円以上のカード利用で、1泊2名分のホテル宿泊券がもらえるというもの。

「国内40カ所以上のホテルに宿泊でき、対象ホテルは東京マリオットホテル、シェラトン・グランデ・トーキョーベイ・ホテルなど、一流ホテルが対象です。これだけでも、年会費が上がった以上の価値はあると思います」

3つめが、カード会員専用の旅行予約サイト「アメリカン・エキスプレス・トラベルオンライン」。これも継続特典だが、同サイトで予約をすると1万円分のトラベルクレジットがもらえる。実質1万円オフとなるので、このサービスを利用すれば、ゴールド・カードとの年会費の差額はペイできることになる。

「このほか、追加になった特典は、レストランの予約をすると20%キャッシュバック(最大で年間1万円)される『ポケットコンシェルジュダイニング』、スターバックスカードへのオンライン入金で20%キャッシュバック(最大で年間5000円)などです。なかでも大きいのが『メンバーシップ・リワード・プラス』が自動付帯になったことです。入会すると、マイルの交換レートがアップしたり、ポイントの有効期限が無期限になったりします。また、アマゾンやヤフーショッピング、ヨドバシカメラなどの特定の加盟店ではポイントが3倍になります。この特典は、ほかのカードでは別途追加登録が必要ですが、ゴールド・プリファード・カードの場合は自動エントリーになります。メンバーシップ・リワード・プラスは入ったほうがお得なのですが、ゴールド・カードの場合は年間3300円の支払いが必要でした。ゴールド・プリファード・カードは、無料で追加のエントリーの必要もありません。実質、ゴールド・カードからゴールド・プリファード・カードに切り替えると、年会費は7700円アップになりますが、この分を引くと4400円になります」

菊池氏は、ゴールド・プリファード・カードの特典について“使わせる”特典だと話す。逆にいえば、カードの年間利用が200万円を超えなければ、魅力は半減するという。

「『フリー・ステイ・ギフト』は、年間200万円のカード利用実績がないと、サービスは受けられません。今回、新しい特典となった『ポケットコンシェルジュダイニング』も、専用サイトからレストランを予約して利用したら20%キャッシュバックと、要はすべてキャッシュバック系。ただ置いておくのではなく、カードを使ってもらうための特典を増やしているんです。利用して、初めて恩恵が受けられるので、利用しない人には意味がありません。

たとえば、年会費無料のクレジットカードでポイ活をしている人は、そのポイントを貯めて高級ホテルの宿泊券を手にすればいいわけです。そもそも年会費の3万9600円があれば、高級ホテルに宿泊できます。ゴールド・プリファード・カードは、年間200万円以上、カードを利用する人には、魅力的なものということになります」

意外とシンプルな「年間200万円」という目安。積極的に“使う”人には検討の余地はありそうだ。

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