初展示10点、モネの“意外な”パステル作品も 山王美術館「印象派展」 開館15周年を記念

アルフレッド・シスレー≪サン=マメスのマロニエの木≫1880年、山王美術館蔵

今夏、開館15周年を迎える山王美術館(大阪市中央区)は節目の年を記念し、「山王美術館コレクションでつづる 印象派展」を催している。

同館は、「ホテルモントレ」創立者が集めた作品を公開する美術館として2009年8月にオープン。当初は「ホテルモントレグラスミア大阪」(大阪市浪速区)内にあったが移転、2022年9月からJR京橋駅南側、寝屋川沿いに建つ地上5階建ての独立館となり、年2回の企画展と常設展を開いている。

【写真】モネの“意外な”パステル作品。子どもたちそれぞれの個性が際立つ

15年を経て、同館の西洋画コレクションが充実してきたことや、本年がパリで開催された第1回印象派展から150年にあたることなどから今回の展覧会を企画。所蔵する名品の中から、印象派を代表する芸術家であるシスレー、モネ、ルノワール、ドガ、また印象派にの源流ともいえるレアリズムやバルビゾン派、さらに印象派以後の絵画の潮流をつくった画家らの作品29点を選び、紹介している。そのうちの10点は初めての展示となる。

「印象派の先駆者たち」「印象派の画家たち」「印象派をこえて」の3章で構成。「先駆者たち」は、20代後半のミレーが親族をモデルに伝統的な手法で描いた肖像画「ポーリーヌ・オノのおじさん」(1841年ごろ)=初展示=でスタート。ミレーの「鶏に餌をやる女」(1851~1853年)、クールベの「オルナン地方の滝」(1866年ごろ)=初展示=などが続く。

シスレーの作品は、パリ郊外の風景を描いた「サン=マメスのマロニエの木」(1880年)など7作で、空や木々、川面に反射する光が明るくのびやかに表現されている。モネ作品は、一般的なイメージの緑豊かな風景画ではなく、4人の人物の顔が並んだパステル画「オシュデ家の四人の子どもたち(ジャック、シュザンヌ、ブランシュ、ジェルメーヌ)」(1880年代初め)だ。4人はモネのパトロンだったオシュデの子どもたちで、モネと同家は親しく交流していた。オシュデが破産後、オシュデの妻子はモネ家に身を寄せ、モネは自分の家族を含めて8人の子どもたちとともに暮らしていたという。オシュデの妻アリスは、モネの妻の病没を看取り、さらにオシュデも亡くなった後、モネとアリスは再婚した。

ルノワール作品は「読書(赤とローズのブラウスを着た二人の女性)」(1918年)など8作品。注目の1つは、マクリーンセメント(壁面の建築材料)に壁画として描かれた「鏡の中の婦人」(1877年)で、楕円形の鏡の中で、穏やかな表情の横顔を見せる女性が印象的だ。同館によると、ルノワールのマクリーンセメント画は5点しか現存しておらず、同作はそのうちの1点という。

ゴーガンが27歳の時に描いた初期作「カイユ工場とグルネル河岸」(1875年)も初展示。蒸気ボイラーなどを製造する工場を描いたとみられ、ゴーガンが近代的なモチーフに興味があったことが分かる。

そのほか、「印象派展」に連動した常設展示として上松松園、小林古径らによる日本画、黒田清輝、金山平三、小磯良平らの日本洋画コレクションも公開。

今年は国内各地で印象派をテーマとした展覧会が開催される。同館の亀井里香学芸員は「印象派の優品に触れることができる貴重な1年の中で、当館のコレクションも合わせて見ていただき、モネ、ルノワールをはじめとする印象派の画家たちが目指した新しい絵画表現の魅力を再発見してほしい。日本画、日本洋画から成る常設展も含めた全展示を鑑賞して、印象派と日本美術が相互に影響を与え合っていたさまを実感してもらえたら」と話している。7月29日(月)まで。

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