「一生消えないと思います」平均値の15倍のPFOA、化学工場元従業員の血液から確認 20倍超の同僚も=静岡市

「体の中から消えることはない」元従業員の悲痛な叫びです。静岡市清水区の化学工場周辺で発がん性が指摘される有機フッ素化合物「PFAS」が検出されている問題で、工場の元従業員の血液から最大で平均値の20倍を超える濃度のPFOAが確認されていたことが分かりました。

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<元従業員の男性>
「これです。高いのか低いのか…」

静岡市清水区の化学工場「三井・ケマーズフロロプロダクツ清水工場」で働いていた男性が見せてくれたのは、2024年2月に実施された血液検査の結果。そこには驚くべき結果が記されていました。

<元従業員の男性>
「私の場合は15倍か、15倍なんでちょっとどうすればいいかと聞こうと思って」

男性が言う15倍とは体の中から検出されたPFASの一種「PFOA」の濃度。全国平均の15倍という内容でした。

「三井・ケマーズフロロプロダクツ清水工場」をめぐっては、工場周辺で高濃度のPFASが検出されていることが問題となっています。

この問題を受け、工場側は2024年2月、2013年までにPFOAを扱っていた元従業員の希望者を対象に血液検査を実施。当時の同僚の中には、平均値の20倍を超える濃度が検出された人もいるといいます。

男性らは当時、「テフロン」と呼ばれるフッ素樹脂の製造を担当し、PFOAを素手で扱っていました。

<元従業員の男性>
Q.PFOAを扱う時にマスクや手袋は?
「してなかったですね。そういう指示は何もなかった」

男性は3年前、舌がんを患っています。ただ、PFOAとの因果関係は分かっていません。

<元従業員の男性>
「まだ私の中に30ナノグラム残っているので、それはたぶん一生消えないと思いますね。だからどこかでがん化しなければいいなと思う」

PFOAについてアメリカの学術団体は、健康にリスクが生じるのは血漿1ミリリットル当たり20ナノグラムとしています。

男性が工場で働いていたのは15年前まで。PFASに詳しい専門家は、かつてはもっと高い濃度のPFASが体内にあったのではと推察します。

<京都大学大学院 原田浩二准教授>
「一般的な生活の中で出てくるような数値ではない。この濃度からすれば(在職時は)数百ナノグラムあったのは間違いない」

「永遠の化学物質」とも呼ばれるPFAS。消えない不安をいかに払拭していくのか、工場や行政には継続した対策が求められます。

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