新人時代はミスをして当然とも言われますが、大きなミスをしてしまうと焦りますよね。しかし、失敗から気付くこともあるものです。 今回は、実際に筆者が経験したエピソードをご紹介します。
グラス長すぎません?
私が、会社の受付をしていた頃の話です。当時、新人だった私は、世間知らずでミス連発。それでも、朝は女子社員で一番に出社する、仕事ノートを作るなど、自分なりに認められるように努力はしていました。
そんなある日、社長の来客対応でアイスコーヒーを出すことになりました。いつもはホットコーヒーでしたが、この日は初めてのアイスコーヒー。それも「この新しいグラスで淹れてね」と先輩から渡されたグラスが、長さ20センチほどの異様に細長いグラスでした。
私は「運びづらすぎる!」と思いながら、そーっと来客室へアイスコーヒーを運びました。「どうぞ」と震えながら来客にグラスを差し出した瞬間……ガシャーン! 私はテーブルの上でグラスを倒してしまったのです。
来客は怒らなかったものの……
「や……やってしまった……」
この瞬間、私は頭が真っ白に。すぐ必死に社長と来客に頭を下げ、「申し訳ございません」と謝りました。
これに対し来客は「気にしなくていいですよ~」と優しく言葉を掛けてくれたものの、社長は無言。目も合わせてくれません。このとき、「もしかしたらクビになるかも……」と私の手は汗でびっしょりになりました。
その後、社長に謝罪へ
来客が帰り、社長が社長室に戻ったのを見計らって、私は改めて謝罪に行きました。
「先ほどはお客様の前で大変失礼なことをしてしまい、本当に申し訳ございませんでした」と頭を下げると、社長は「もういいから。頭を上げなさい」と言い、話を続けました。
「正直、グラスを倒したのには驚いたよ。大事な取引先のお客様だったから、私もどうしようかと思ったが……」
これを聞いた瞬間、「本当にクビだ~!」と私は思いました。
心に響いた社長の言葉
しかし、社長はこう続けたのです。
「幸いお客様は気分を害していなかったようだ。『初々しいね』と笑ってくださったからな。新人が失敗をするのは当たり前。ただ、同じミスは二度と繰り返さないように。頑張り屋の君ならきっと上手にできるよ」
社長のこの言葉に、私はジーンと来たのでした。
以前から社長は、私が早く出社して仕事をしていることを知っていたとのこと。とても恥ずかしい思いをしましたが、それと同時に、努力は無駄にはならないと強く思った出来事でした。
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:花澤ひかる