「スイッチが切れてしまう選手が多い」ボーフム浅野拓磨が大敗にこぼした本音。自身は最後まで戦う姿を見せた【現地発コラム】

「全員がやっぱりインテンシティ高く戦えないと、本当に厳しい試合になると今日は改めて感じましたね」

そう語るのはボーフムに所属する日本代表FWの浅野拓磨。アジアカップからクラブへ戻り、3試合連続でスタメンとなった23節ボルシアMG戦でフル出場したが、チームは序盤から守備が崩壊状態で2-5の大敗を喫した。

「ボーフムとして、なかなか思っていたような戦いはできなかった。相手のスカウティングをして、いつも通りの戦い方をして、僕らが思うようなプレーできてたら、はまるだろうっていう考えでプレーしましたけど」

試合後のミックスゾーンでは落ち着いてそう振り返る。戦力的にハイレベルの選手をそろえているわけではないボーフムは、インテンシティ高い守備と攻守の切り替えの素早さが生命線だ。

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全てが機能した時は強い。実際に22節では11連覇の王者バイエルンを相手にホームで見事な戦いぶりを披露し、3-2と勝利している。浅野もカウンターからの鋭い飛び出しとシュートで貴重なゴールをマーク。ホームのサポーターからの熱量高く温かいサポートを受けているときのボーフムは強靭なチームだ。

ただ、アウェーだとそんな面影が一気に消えてしまう。

「3年間ここでやっていますけど、アウェーでプレーしてる時に崩れることが多い。明らかにホームとアウェーでやりやすさやチームとしての活気というのが違うかなというのは感じています。たぶんどこのチームもそうなんかなとは思いますけど、ボーフムは特にそこの違いが激しいチームかなと。ハマることもあればハマらないこともあるとはいえ、ハマらないときにスイッチが切れてしまう選手が多い。そうなるとどうすることもできない」

ボルシアMG戦では前半にPKで2失点目を喫してから完全にチームとしての規律が失われてしまった。あっさりと相手に突破を許し、チャンスを簡単に作られてしまう。

そんな中でも浅野は集中を切らすことなく、うまくいかないならうまくいかないと割り切って、自分にできることに100パーセント取り組む姿勢を見せている。

「今日みたいに守備で追われる試合っていうのは、正直、インテンシティとしてもすごく厳しい試合になる。ボール持ったときに一つ違いを見せれるようにっていうのは、コンディションが良いときだけじゃなくて、常に発揮できるようにしたい」

じり貧な試合展開に焦って攻めようとするチームは、相手が集中するセンターで無理なパスを狙っては、カウンターのプレゼントを与えてしまう。そのたびにまた長い距離を走って戻らなければならない。何とかボールを奪取したのをみて前線に飛び出してもパスが出てこない。孤立状態でボールを預けられることが多く、起点を作ることもままならない。

それでも気持ちを切らさず戦う姿勢を見せてくれるから、トーマス・レッチュ監督も最後まで浅野をピッチに残しているのだろう。

「僕自身、良いときも悪いときもやるべきことをするというのは常に変わってないです。練習前の準備から練習後のケアも含めて、そういう姿勢であったり、自分の行動で、何かチームの力になることができたらいいかなと思ってます。チームの中でも、もう若い方でもないので」

どんな試合でも最後まで足を止めずに戦い続ける。だからファンからの信頼もとても厚い。残留争いを続けるボーフムにおいて、29歳の快足ストライカーは、指揮官やチームメイト、そしてファンの期待を背負って戦う戦士なのだ。

取材・文●中野吉之伴

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