JAXA月探査機「SLIM」再び休眠状態に 次の運用挑戦は3月中旬以降

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2024年3月1日、X(旧Twitter)の小型月着陸実証機「SLIM」プロジェクト公式アカウントにて、着陸地点が夜に入ったためSLIMが再び休眠状態に入ったことを明らかにしました。JAXAは2024年3月下旬にSLIMの運用を施行する予定だということです。【最終更新:2024年3月4日13時台】

【▲ 参考画像:小型月着陸実証機「SLIM」から放出された探査ロボット「LEV-2(SORA-Q)」のカメラで撮影された画像。大きく傾きつつ接地した状態のSLIMが右奥に写っている。画像は試験画像で、もう1機の探査ロボット「LEV-1」経由の試験電波データ転送により取得されたもの(Credit: JAXA/タカラトミー/ソニーグループ(株)/同志社大学)】

SLIMは日本時間2024年1月20日0時20分頃に日本の探査機として初めて月面へ軟着陸することに成功したものの、2基搭載されているメインエンジンのうち1基で着陸直前に生じたトラブルによって接地時の水平方向の速度や姿勢が想定外となり、逆立ちして太陽電池を西に向けたような姿勢で安定。バッテリーに充電できないことからSLIMの電源は一時オフにされたものの、太陽光が西から当たって太陽電池から電力を得られるようになった2024年1月28日以降は「マルチバンド分光カメラ(MBC)」による岩の観測が行われていました。

着陸地点が夜を迎えることからSLIMは日本時間2024年1月31日から休眠状態に入っていましたが、太陽電池に再び太陽光が当たるようになった日本時間2024年2月25日にコマンドを送信したところ応答があり、通信機能を維持して夜を越したことが確認されていました。

【▲ 休眠前の日本時間2024年2月29日23時すぎにSLIMの航法カメラで撮影された月面の様子。JAXAがXのSLIM公式アカウントを通して2024年3月1日に公開(Credit: JAXA)】

JAXAによると、SLIMは通信機器の温度が十分下がってから観測を再開できるように準備を進め、日本時間2024年2月29日夜の運用ではMBCも起動したものの、越夜の影響によるものか正常に動作しませんでした。着陸地点は日本時間2024年3月1日3時すぎに日没を迎えたため、SLIMは再び休眠状態に入っています。

月面の温度は昼間は約110℃、夜間は約マイナス170℃と温度差が激しく、電子機器等が故障する確率も上がるものの、JAXAはこれまでに取得したデータをもとにSLIMが再度夜を越してからとなる2024年3月下旬の運用機会に向けて調査を行うということです。

SLIMについては新しい情報が発表され次第お伝えします。

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文/sorae編集部

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