パン屋で、子どもが【穴を開けたパン】に → ケチ親「もう売れないでしょ、ちょうだい♡」店員「はぁ?」

小さい子どもを連れて買い物に行くと、子どもが商品にいたずらをしてしまったという経験のある人もいるのではないでしょうか。その後どういう対応をするかで、親の責任が問われることもあります。今回は、いたずらされるお店側の経験をした私の知人Mさんのお話です。

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パート先のパン屋

Mさんは当時、週に3日ほど近所のパン屋でパートをしていました。

子どもが幼稚園に行っている間の短い時間でしたが、家族経営のアットホームなお店なので働きやすく、たまに形の悪いパンや試作品のパンなどをもらえるため、楽しんで働いていたのです。

「Mさん!」
ある日のパート中、お客さんの一人がMさんに話しかけてきました。パンを並べる手を止めて顔を上げると、そこには子どもが同じ幼稚園に通っている、ママ友のYさんが立っていました。
「あ、こんにちは…… あれ、今日幼稚園休んだの?」
Yさんがいつもなら幼稚園に行っているはずの子どもを連れていたので、不思議に思って尋ねました。
「今日ちょっと熱があって、今小児科の帰りなの。そんなことよりMさんここでパートしてたのね! ねえ、この店儲かってるんでしょ? 時給はいくら?」
Yさんはいきなりそんなことを聞いてきます。Mさんは苦笑いをして、仕事中だからとその場を離れました。

実はこのYさん、幼稚園でも有名なセコケチママ。

ママ友がスーパーでパートしていると聞けば社員割引きで自分の買い物をしろと迫ったり、ママ友の旦那さんが高級ホテルで働いていると聞けば優待券をもらうために家に突撃したりと、困った噂の絶えない人なのです。

パンをたかられて……

「ねえ、残ったパンとかもらえるんじゃないの? うちにもちょっとわけてよ~」
「ごめんね、それはできないの」
「えー、ケチね!」
どっちがケチなのかと思いながら、Yさんは作業を続けます。

「あ、Yさんちょっと厨房入ってー」
このパン屋の娘さんであり店長でもある女性が、作業を代わるから厨房の手伝いをするようにYさんに言いました。
「あの人ちょっとややこしいでしょ。もうすぐ上がりの時間だし、中でちょっと片付けしてて」
店長は、子どもをほったらかして真剣にパンを物色しているYさんをチラッと見て言いました。
「ありがとうございます……あの人のこと知ってるんですか?」
「たまに来ては形が悪いから値引きしろだの、無料のパンの耳をもっとよこせだの。嫌でも顔を覚えちゃう」
店長はそう言って肩をすくめました。

子どものイタズラ

「ちょっと、何やってるんですか!」
Mさんが厨房に入ってまもなく、店長の声が響きました。Mさんは何事かと売り場をのぞき込みます。

「ちょっとくらいいいじゃない、子どものしたことなんだからうるさく言わないでよ」
店長に怒鳴られて、Yさんはふてくされている様子。

「やっていいことと悪いことがあるでしょう!? こんなにたくさんパンに穴をあけて……」
店長がYさんの子どもの腕を掴んで言いました。

よく見ると、先ほどMさんがキレイにトレーに並べたクリームパンやカレーパンの陳列が乱れ、何個かは破れて中身がこぼれています。どうやら退屈になったYさんの子が、売り物のパンに次々と指を突っ込んだようでした。

「ひどい…… 」
Mさんが売り場に出ていくと、Yさんはそれを見て嬉しそうにこう言いました。
「良かった、Mさん! このパンもう売り物にならないでしょ? 友達のよしみで全部タダで引き取ってあげる!」
「……はあ? 」
Mさんにはその言葉が理解できませんでした。自分の子どもがダメにしたパンを、タダでひきとってあげるなんて、普通の神経では想像がつきません。

「いや友達とか関係ないし。全部買い取ってもらいますよ」
店長がクールに言い放ち、Yさんの子が指を突っ込んだパンを回収して袋に詰め始めました。

「子どものやったことなのよ? 大目に見てよ!」
「子どものやったことは親が責任を取ってください。あと、もう二度とご来店いただかなくて結構ですから」
ぴしゃりと言われ、Yさんはしぶしぶパンの代金を支払いました。

幼稚園も卒園間近だったため、その後MさんがYさんと顔を合わせることはほぼありませんでしたが、風の噂でYさんが色々な店を出禁になり、いたたまれずに引っ越したと聞きました。

子どものしたことの責任をとるならまだしも、子どものイタズラをきっかけに人にものをたかるのは親としてあり得ない行動ですね。

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:齋藤緑子

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