【シン・マモルミカタ】 楽しみながら職業や社会を体験し、未来のタネを見つけるきっかけに

出典:リビング大阪Web
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子どもの職業・社会体験施設「キッザニア甲子園」を運営する「KCJ GROUP」代表取締役副社長の宮本美佐さんに、子どもの未来を育むヒントを聞いたよ。

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子どものうちにどんな体験をさせるかは親にとって気になるところ。お仕事体験は楽しいだけじゃなく、将来にもつながりそうよね。

リアルな職業・社会体験を通して、子どもたちに何を感じてほしいですか?

キッザニアのコンセプトは、「エデュケーション(学び)」と「エンターテインメント(楽しさ)」をあわせた「エデュテインメント」です。楽しさの中に、学び・成長の機会があることを大事にしています。

子どもたちが夢中になれるように、施設内はリアルさを追求しています。約3分の2サイズの街並みに、実在する企業が出展するパビリオンが建ち、リアルな機材や道具、ユニフォームでアクティビティを楽しみます。子どもが大人になりきって体験できる工夫があちこちにあります。

また、「こどもが主役の街」なので、病院や警察など街に欠かせない職業をはじめ、実社会のさまざまな職業が体験できるよう、バラエティ豊かな職種があります。子どもたちが知らなかった職種を含めた「仕事の多様性」や、ほかの仕事と連携する「チームワーク」の重要性を知ってほしいですね。

アクティビティの種類や内容は変えているんですか?

キッザニア甲子園には約100種類の職業・社会体験があります。今年でオープン15周年を迎えますが、社会の変化や技術の進歩を積極的に取り入れ、アップデートしています。例えば、専用アプリを用いてリフォームプランを作る「キッチンリフォームセンター」や、タブレット端末でパッケージをデザインする「パッケージング・ラボ」など、ここ数年でIT技術を活用した体験が増えています。ほかにも警察署で顔認証システムを使って捜査をするなど、実社会に仕事内容を近づけることを大事にしていますね。タブレットやアプリは、3歳くらいのお子さまも使いこなしていてこちらが驚くほどの吸収力です。

2021年に立ち上げた「キッザニアSDGsセンター」も、時代をとらえた取り組みですよね。

キッザニアの理念は、“Get Ready for a Better World”で、「よりよい世界のためにこども達が立ち上がってこどもが主役の国をつくった」という建国ストーリーと、SDGsの考え方は合致しています。SDGsは2030年までの目標達成を目指していますが、子どもたちが生きる未来はそれ以降も続きます。私たちは、子どもたちがこれからの世界をより良くしていくのは自分たちだと意識し、SDGsを自分ごと化できる機会を提供し、支えていくために「キッザニアSDGsセンター」を立ち上げました。

小学生以上になると、SDGsについて学校で習い、なじみがある子どもが増えますが、キッザニアSDGsセンターではできるだけSDGsというワードは使わず、地球が抱える課題として考えてもらうことを大事にしています。就学前のお子さまからも「知らなかったけど、やってみたら難しくなかった」との声が寄せられています。

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SDGsを身近に感じる体験ってどんなものかしら?

まずキッザニアSDGsセンターで地球が抱える課題について理解を深めた後、「未来を変える!アクションラリー」へ。施設内に点在する展示スポットをめぐり、スタンプを集めます。その中から気になるテーマ(地球が抱える課題)を1つ選び、自分にできる行動を「アクション宣言」として言葉にします。

SDGsには17のゴール、169のターゲットがあるので、まずは興味を持てるテーマを見つけてほしいですね。キッザニア甲子園では、4月5日(金)まで「食品ロス」「日本の木材」「多様性」の3つのテーマでアクションラリーを開催中です。アクション宣言では、「必要なものだけ買う」「食べられる部分はできるだけ食べる」(食品ロス)、「山間部に配達ドローンや道路の整備をしたい」(日本の木材)など、さまざまなアイデアが届いています。

ほかにも、キッザニアには、模擬選挙の投票体験など社会の仕組みを学ぶ仕掛けがありますが、SDGsはまさに自分たちの未来に関わることなので、社会について考え・行動するきっかけになればうれしいですね。

キッザニアが目指す未来の目標は何ですか?

メキシコ発祥のキッザニアは、現在、アメリカやヨーロッパ、東南アジアなど世界17カ国26施設で展開しています。メキシコは考古学者、韓国なら漢方医など、お国柄が職種に反映されていておもしろいですよ。

キッザニアの建国のストーリーは世界共通なので、将来的に、子どもたちが各国のキッザニアを通してつながり、地球の未来に向けて声を発信できる機会をつくれたらと考えています。信条や宗教などの違いなどを乗り越えて、よりよい未来に向けて目線を一つに、子どもたちによる“キッザニア国連”のような場ができれば、素敵だと思いませんか。

今年15周年を迎えるキッザニア甲子園で、注目してほしいことは?

キッザニア甲子園は、阪急阪神ホールディングス、タカラスタンダード、江崎グリコなど、関西に根差した企業に数多く出展いただいています。また、大成機工による“水道管理技士”、三浦工業による“ボイラエンジニア”など、街のライフラインを支える職業が多いこともも、キッザニア甲子園ならではの魅力です。

15周年を迎える3月27日(水)には、3つのパビリオンがオープン。「動画制作スタジオ」(動画クリエイター)、「モデルハウス」(大工)、「メガネショップ」(お客さん)の体験が加わります。さらに、期間限定で「ランドセル工房の」体験やダンスコンテストなども実施する予定です。

また、当社は2025年に開催される大阪・関西万博の「TEAM EXPO 2025」の共創パートナーとして参画し、万博の場を生かして子どもたちが描く未来への声を世界に発信できる機会づくりにも取り組んでいます。今後も、パートナー企業と連携したワークショップなどを計画しています。

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職業体験は、子どもの未来にどんな影響をもたらすでしょう?

アクティビティを通して、子どもたちは「得意」や「興味」を発見できます。また、学校とは異なる場所なので、周囲の目を気にせず、「失敗してもいい!」と行動できるのも、キッザニアならでは。基本的に保護者の手を離れて子どもたちだけで体験するため、自然に自立心が芽生えます。キッザニアは、子どもたちのチャレンジを、大人が全力で応援する場所でありたいと思っています。

2023年に発行した「キッザニア白書」では、20代へのアンケートをもとに「キャリア自律性」について筑波大学と共同研究を行いました。キャリア自律性とは、自分のキャリア構築を主体的かつ継続的に取り組む姿勢のこと。調査結果から、キッザニアにはリピーターも多く、複数回来場した子どもは、来場したことのない子どもと比較すると、数年を経ても「自らのキャリアは自分の意思や責任で決めている」という意識が高い傾向がありました。実際、キッザニア東京で開催したファッションコンテストを機に、デザイナーを目指して英国に留学し、ファッション業界のごみ問題に対応するため、徳島県で事業を立ち上げた若者もいるんですよ。

「キッザニアでは30分で転職できる」と言われるように、興味の赴くまま、さまざまなことに挑戦できるチャンスを届け、子どもたちが描く未来をかなえるきっかけになれたらうれしいですね。

KCJ GROUP 代表取締役副社長

宮本美佐さん

1990年、国際電信電話(現・KDDI)に入社。海底ケーブル投資・建設・運用計画の策定のほか、位置情報、地域活性化支援など、新規事業立ち上げに多数従事。2020年4月1日から現職。マーケティング本部を統括し、施設外でのキッザニア体験や教育的価値の研究発表など幅広く活動。モットーは「迷ったらよりおもしろい方へ」。“キッザニアダンス”をはじめ、ダンス好きな一面も。https://www.kidzania.jp

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