東京再発見 第8章 輝葉絨毯~文京区本駒込・駒込天祖神社~

駒込村の総鎮守ということもあり、朝日が昇る前から近隣住民が参拝に訪れる駒込天祖神社。

掃き清めても降る注ぐ輝葉

1189年に源頼朝が奥州征伐に赴く際に、神明を祀ったのが始まりと言われている。そして、祭神が天照大御神ということもあり、伊勢神宮と同じ神明造りの社殿は、荘厳な雰囲気を醸し出している。

江戸時代初期になるまで、宮守が無い時代が続いたが、慶安年間(1648-1652年)に越後村松藩主堀直吉によって、再興されたという。駒込神明宮と称されたお社、空襲によって消失した。そして、氏子たちの熱意によって1954年に再建された。

地域住民のパワースポット、参拝はルーティンワーク

参道には、東京都の木でもある銀杏並木があり、秋が深まると黄金色の絨毯に変わる。そして、日の出から数時間後、東からの強い光が散り落ちた黄色にキラキラと彩りを加える。

三世代の七五三

また、近くの駒込富士神社も神職を兼務している。そのため、6月晦日には、富士神社は「お山開き」、天祖神社は「茅の輪くぐり」と、夏の穢れを払うために、多くの参詣者で賑わいをみせてくれる。

氏子たちが再建した「お神明さま」と呼ばれる神社は地域密着。住民たちが境内全体を大切に守ってきた歴史を感じる。また、七五三の時期になると着飾ったお孫ちゃんのお祝い姿を見受ける。それも三世代で参拝する姿だ。まさしく、ほっこりとする時間を共有してしまっている。

史跡ツーリズムこそ、東京観光の新たな姿

東京は、京都のように有名な神社仏閣は少ない。しかし、由緒正しい古刹・古社も少なくない。その歴史を学ぶことは、次の世代に語り継ぐ、大切なモノ・コトと考える。

偶然、レーザービームのように

鎌倉時代以前の東国は、歴史を語ってくれる遺跡が少ない。また、史跡ツーリズムというカテゴリーは、数多くの観光客が好むものではない。しかし、京都や奈良と肩を並べることができる東京(江戸)の観光コンテンツはたくさん存在する。最先端、現代の東京(新宿や渋谷といった繁華街)だけが東京観光ではない。

これらとは一線を画した観光コンテンツの探求をすることによって、繁華街一極集中から地域分散を進めることができる。それが、真の東京旅行の創造につながるのではないだろうか。

毎朝、神社の方が輝葉絨毯を掃き清める。しかし、しばらくすると、またそれ以上の絨毯が形成される。もしかすると、神様は「掃き清めるな」と言っているのかもしれない。

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取材・撮影 中村 修(なかむら・おさむ) ㈱ツーリンクス 取締役事業本部長

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