[社説]嘉手納騒音激化 実効性のある対策示せ

 米軍機による騒音が深刻さを増し、騒音に関する苦情が大きく増えている。我慢の限界を超える激しい騒音は、基地負担の増大にほかならない。

 米軍嘉手納基地周辺で2023年に発生した航空機騒音が19万6988回に上り、前年より1万7414回(9.6%)も増えていたことが分かった。

 最大騒音値も4.7ポイント上昇し、北谷町砂辺で117.9デシベルを記録。聴覚機能に異常を来すほどのレベルである。

 騒音激化に伴い、23年中に自治体へ寄せられた騒音苦情件数は沖縄市で4.3倍増の439件、北谷町で2倍の204件を数える。悪化は疑う余地がない。

 嘉手納基地では老朽化したF15戦闘機の退役に伴い、一昨年の11月から、騒音の大きいF22ステルス戦闘機やF35ステルス戦闘機などが代わる代わる配備されてきた。以降、騒音回数が著しく増えている。

 さらに県外や海外からの外来機増も、騒音被害に拍車をかける。

 嘉手納基地周辺で暮らす人々は、夜の静寂を切り裂くごう音にたたき起こされることもたびたびという。学校では授業が中断され、爆音におびえる子も。

 航空機騒音に長時間さらされることで、高血圧や睡眠障がいといった健康被害のリスクも高まっている。

 常に「落ちるかもしれない」という不安や恐怖を抱えながら生活していること自体、尋常ではない。  

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 沖縄市、嘉手納町、北谷町で構成する「嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会」は騒音苦情を受け、先月、日米で合意した騒音防止協定の順守などを米軍や沖縄防衛局に要請した。

 そもそも協定では住民の生活環境を守るため、午後10時から午前6時までの飛行が制限されている。にもかかわらず「運用上必要」という規定が、例外的な飛行を可能にしているのだ。

 それだけではない。

 北谷町議会の昨年6月の意見書によると、司令官が出した嘉手納の滑走路運用指示書に、夏場は午前0時まで飛行を認めることが明記されているという。

 米軍が「必要」と言えば深夜の飛行も違反にならない。例外かどうかを決めるのは米軍で、日本政府はその顔色ばかりをうかがっている。

 住民の生活を守るには毅然(きぜん)とした姿勢で「抜け道」を防ぎ、協定に実効性を持たせる必要がある。

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 数次にわたる嘉手納爆音訴訟は「第三者行為論」により米軍機の飛行差し止めが棄却される一方、騒音被害については国の責任を認めている。

 裁判所は「休息や家族だんらんなどの日常生活のさまざまな面で、不快感や不安感など精神的苦痛が生じている」と指摘する。

 司法が権利侵害を認めたにもかかわらず実効性のある対策を打ち出せないのは、政府の怠慢だ。

 周辺住民に半永久的に受忍を強いるものであってはならない。

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