確定申告の締め切り迫る。医療費控除は「10万円超」でなくていいケースも

所得税がいくら軽減できるのかシミュレーション

2023年の確定申告は、2024年3月15日が期限です。

所得税や住民税の還付を受ける場合は5年間提出できますが、忘れないように早めに対応しましょう。

所得税や住民税の還付が受けられる方法の1つに「医療費控除」があります。医療費控除は、医療費が10万円を超える必要があるとされています。

では、10万円に満たなければ確定申告をする意味はないのでしょうか。

今回は、医療費控除が受けられるケースについて解説します。

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医療費控除とは?

医療費控除は、支払った医療費から保険金などで補てんされる金額を差し引いて、さらに10万円を差し引いて残った額が控除されます。

基本的に、治療を目的とした医療費や介護を目的とした費用であれば、医療費控除の対象です。

交通費や通院費も対象となります。

ただし、美容整形や治療に直接の関係ない眼鏡や補聴器等の購入費用は対象になりません。

自身の医療費に加えて、配偶者や生計が同じ親族のために支払った医療費であれば対象です。

申告にあたっては、医療費が記載されている明細書が必要になります。

医療費控除の計算式は、下図の通りです。

医療費控除の計算式

基本的に、基礎控除である10万円を差し引くため、原則として医療費が10万円を超えないと医療費控除は利用できません。

ただし、例外として医療費が10万円以下でも確定申告できるケースもあります。

医療費控除が使えるケースを確認しましょう。

医療費が10万円以下でも医療費控除は使える?

医療費が10万円以下でも医療費控除ができるケースは、その年の総所得金額が200万円未満の場合です。

総所得金額が200万円未満の場合、その総所得金額の5%が控除額となります。

たとえば、総所得金額が150万円の場合、医療費控除額は7万5000円です。

では、実際に医療費控除を利用して、所得税がいくら軽減できるのか、それぞれシミュレーションしましょう。

医療費控除のシミュレーション

医療費控除を利用した場合に、所得税がいくら還付されるのか、それぞれ確認しましょう。

総所得金額が200万円以上の場合

実際に、年収が600万円のケースだと所得税がいくら還付されるのか確認しましょう。

年収を含めた条件は、以下の通りです。

  • 年収600万円
  • 社会保険料控除は90万円
  • 年間の医療費は50万円
  • 医療保険の給付は10万円
  • 医療費控除以外の控除なし

まずは、年収600万円の所得金額と課税所得について確認しましょう。

まずは年収から給与所得控除を差し引いたうえで、社会保険料と基礎控除を計算します。

  • 総所得金額(収入-給与所得控除):600万円-164万円=436万円
  • 医療費控除以外の控除額:社会保険料控除(90万円)+基礎控除(48万円)=138万円
  • 課税所得:436万円-138万円=298万円

課税所得298万円から、医療費控除で控除する分を差し引きます。

医療費控除額は、以下の通りです。

  • (医療費-保険金)-10万円=医療費控除額
  • (50万円-10万円)-10万円=30万円

医療費控除を受ける場合は、課税所得が268万円になります。

医療費控除を受けない場合、課税所得から必要な所得税を計算すると、20万500円です。

医療費控除を受けた場合の所得税は、17万500円になります。

医療費控除を受ける前と後で、3万円の差になりました。

総所得金額が200万円未満の場合

次は、年収が150万円のケースで、医療費が10万円に満たない場合、所得税がいくら還付されるのか確認しましょう。

年収を含めた条件は、以下の通りです。

  • 年収150万円
  • 社会保険料控除は15万円
  • 年間の医療費は8万円
  • 医療費控除以外の控除なし

まずは、年収150万円の所得金額と課税所得について確認しましょう。

まずは年収から給与所得控除を差し引いたうえで、社会保険料と基礎控除を計算します。

  • 総所得金額(収入-給与所得控除):150万円-55万円=95万円
  • 医療費控除以外の控除額:社会保険料控除(15万円)+基礎控除(48万円)=63万円
  • 課税所得:95万円-63万円=32万円

課税所得32万円から、医療費控除で控除する分を差し引きます。

医療費控除額は、総所得金額の5%です。

  • 医療費-(総所得金額×5%)=医療費控除額
  • 8万円-(95万円×5%)=3万2500円

医療費控除を受ける場合は、課税所得が28万7000円になります。

医療費控除を受けない場合、課税所得から必要な所得税を計算すると、1万6000円です。

医療費控除を受けた場合の所得税は、1万4350円になります。

医療費控除を受ける前と後で、1650円の差になりました。

医療費控除の還付は申告してすぐに受け取ろう

総所得金額が200万円未満であれば、医療費が10万円以下でも医療費控除が受けられる可能性があります。

医療費控除は、確定申告をしないと還付されません。

対象となる場合は、早めに確定申告をして医療費控除を受けてください。

参考資料

  • 国税庁「医療費控除を受ける方へ」

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