EVが値下げラッシュ、「シェア獲得に血眼」に批判の声も―中国メディア

中国では、春節(旧正月、2024年は2月10日)が明けてからEVなどの値下げラッシュが本格化した。従来タイプの燃料エンジン車からのシェア奪取の思惑があるとされるが「不健全」との批判もある。

中国では、春節(旧正月、2024年は2月10日)が明けてから電気自動車(EV)などの値下げラッシュが本格化した。技術の進歩や規模効果の出現などで価格競争力がついたことで、従来型のエンジン車からシェアを奪い、また、他社EVからもシェアを奪おうとするEVメーカーの思惑があるとされるが、「長期戦略として不健全」との批判もある。中国メディアの長城網などが伝えた。

春節明けに先頭を切って値下げを発表したのはEV大手のBYD(比亜迪)で、2車種の最低販売価格を2万元引き下げて7万9800元とした。長安啓源、哪吒汽車(ナタ)、上汽通用五菱などのEVなど新エネルギー車ブランドが相次いで値下げに追随した。値下げラッシュは新エネルギー車に集中しており、下げ幅は5%-15%で、金額としては数千元から、中には1万元を超した例もある。

中国自動車流通協会の王都会長補佐は、新エネルギー車のメーカーは「値下げ能力」を獲得したことで、ガソリン車との「直接対決」を始めたとの考えを示した。BYDブランド広報処の李雲飛総経理も、規模拡大や産業チェーンの構築で、EVの値下げが可能になったと強調した。かつては全体的に「ガソリン車より高い」と感じられたが、今ではガソリン車よりも低い価格を実現できたので、中国市場における「石油から電気へ」を加速させること可能になったという。

EVなどの値下げ攻勢にはまず、従来型のエンジン車からの「シェア奪取」の思惑があり、当然ながら他のEV車種との競争に勝利する目的も存在する。多くの業界関係者は、24年の自動車市場の競争は非常に激しくなり、値下げによってより大きな市場シェアを獲得することは、多くの自動車メーカーにとって必然的な選択との考えを示した。

しかし、EVなど新エネルギー車の「値下げ競争」には批判的な意見もある。中国EV百人会の張永偉秘書長は、企業は競争の圧力に直面すると、価格面で市場を獲得することを考えるようになると一定の理解を示した上で、価格競争は「企業にとって短期的な発展のための1つの策略に過ぎない」と述べた。

問題は、EVなど新エネルギー車分野では、高度な技術が求められ、しかも技術の進歩が速いことだ。値下げによって「利益を度外視してもシェア獲得」が過ぎると、研究開発への投資に「ブレーキ」がかかることになりかねない。技術開発が滞れば、競争力は低下する。

張秘書長は、自動車メーカーの今後について、長期的に勝つためには新技術を繰り返し獲得し、新製品を迅速に発売することで競争力を確立し、そのことで市場を穫得することこそ「根本的な道」と指摘した。

中国製EVでは輸出増も目立つ。例えば上海汽車は1月、全世界での納車数が前年同月比20%増だったという。販売台数の増加にともない、中国製EVは世界各地でブランド力を獲得しつつある。

前出の中国自動車流通協会の王会長補佐は、中国自主ブランドの自動車は、23年において500万台規模の輸出台数を獲得したと指摘した上で、中国の自動車メーカーは国外の自動車メーカーよりも利益を出しており、海外での販売拡大は中国企業の研究開発を支え、発展を促すことができると主張した。そのため、中国の自動車メーカーにとって輸出増は極めて大きな意味を持つという。(翻訳・編集/如月隼人)

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