ウェザーニューズからアパレルへ転身「服のストーリー楽しめるものを」吹き込んだ新風

新事業で生み出された服を紹介する菅原さん(舞鶴市上安久・福井センイ)

 京都府舞鶴市魚屋の菅原一輝さん(35)は、70年以上続く縫製会社「福井センイ」(同市上安久)で、従来にない事業を展開して新風を吹き込む。思い出の服の一部を長方形に切ってTシャツに縫い合わせる「ブックマークウェア」や、顧客が型紙に描いたデザインをそのままプリントして服に仕上げるサービスを立ち上げた。

 大量生産・消費になりがちなアパレル業界。そこと一線を画す動きには「服のストーリーをじっくり楽しめるものを作りたかった」との思いがある。

 福井センイで働き始めたのは2020年。以前は民間気象会社ウェザーニューズ(千葉市)に勤め、16年のリオデジャネイロ五輪では現地でラグビーやシンクロナイズドスイミングなどの選手向けに天候を予測した。

 同五輪後はアジアに気象予報を売り込む仕事を任されたが、新型コロナウイルス禍で業務が止まった。「敷かれたレールの上を走るのではなく、自分の力で生きていきたい」との思いが募る。コロナ禍前に生まれた子どもに自然の良さを知ってほしいとの考えもあった。妻の絢子さん(34)の実家の福井センイを継ぐべく舞鶴市に移住。会社のそばに舞鶴湾が広がる環境も決断を後押しした。

 普段は生地の裁断を担当するかたわら、新事業で市内を駆け回る。府立舞鶴支援学校の生徒が手がける藍染めの布にほれ込み、地元の洋菓子店の包装採用に結びつけた。立命館大でスポーツビジネスを専攻した人脈を生かし、地元の中学生がプロ選手から学ぶバレー教室も企画した。

 会社にほど近い伊佐津川沿いの古民家を改修し、宿泊施設にする計画も進めている。「服だけでなく、人と人、自然や文化を縫い合わせたい」と未来を思い描く。

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