裏金事件で追い風、さらに保守分裂も…衆院鹿児島2区に漁夫の利狙う維新が名乗り 戦いの構図は複雑に

(左上から時計回りに)保岡宏武氏、三反園訓氏、松崎真琴氏、辻健太郎氏

 次期衆院選の鹿児島2区が混とんとした構図になっている。現職の無所属三反園訓氏(66)、自民保岡宏武氏(50)=比例九州=の保守系2人と共産新人松崎真琴氏(65)の争いに、日本維新の会新人辻健太郎氏(37)が保守分裂の間隙(かんげき)を突いて名乗りを上げたからだ。現職の両陣営は「支持層を切り崩されるのでは」と警戒を強めている。

 「政治資金規正法への連座制導入など政治改革を進めたい」。2月、県庁であった出馬会見で辻氏は意気込んだ。

 選挙区内の奄美市生まれで、4人の中で最年少。加えて2区は維新が強みにする、無党派層の多い大票田・鹿児島市南部を擁する。浦野靖人・党選対本部長代理は「有権者にとって新しい選択肢になる」と息巻く。

 維新は、保守分裂を好機とみて漁夫の利を狙う。仮に敗れたとしても一定の得票が見込め、比例復活への道筋が描きやすい。昨年から候補擁立を模索し、自民派閥の政治資金パーティー裏金事件も追い風にする。

 挑戦を受ける三反園氏は谷山地区などで恒例のつじ立ちに励む。「県知事時代から実績を重ねてきた。これまで通り活動を続けるだけ」と多くを語らない。

 ただ、周囲には「(自身か保岡氏の)どちらの票が食われるか」と話す。自民入りを希望し、党重鎮とのパイプをアピールしてきたが、裏金問題浮上後は無所属を強調。陣営関係者は「個人として支持を集めることが大事だ」と語る。

 保岡氏もつじ立ちや集会を重ねる。維新の参戦は「やはり脅威」と身構える。党2区支部長とはいえ、比例選出とあって「今の自分に議席はないものと考えている」と危機感を明かす。

 知名度で勝るとされる三反園氏との差を埋めようと、地域に顔を売ってきた。政治改革を訴える維新について「裏金問題を抱える自民を改革するために活動している。それを有権者に伝えたい」と力を込める。

 松崎氏は他の野党系組織や市民団体と連携を深め、統一候補として臨む準備を進める。「保守系としのぎを削る激戦になる」とみる。裏金事件への無党派層の怒りを引きつけたい考えだ。

 4月の鹿児島市議選を前哨戦と位置付ける。立候補予定者と歩調を合わせ、党勢拡大に余念がない。

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