処理水海洋放出は「二重の加害」全国初、差し止め訴訟始まる 国・東京電力は全面的に争う姿勢

海への放出が続く東京電力福島第一原発の処理水をめぐり、全国で初めての裁判が始まりました。漁業者などが、国と東京電力に放出の差し止めを求めているのに対し、国と東京電力は全面的に争う姿勢を見せました。

ALPS処理汚染水差止訴訟・海渡雄一弁護士「汚染されたものを排出する権利は誰にもない。当たり前のことを明らかにさせるための裁判」

訴えを起こしたのは、県の内外の漁業者や市民など363人です。福島第一原発では、2月28日から4回目となる処理水の海への放出が行われています。

こうした中、4日から福島地裁で始まった処理水の海洋放出について差し止めを求める全国初めての裁判。原告側は、国に対しては放出する際に出した認可を取り消すことを、東電に対しては海への放出をやめることなどを求めています。

4日の裁判で、意見を述べた新地町の漁師・小野春雄さんは、「放出することに大義名分はなく、漁師を継いだ息子たちのことを思うと不安で仕方ない」と訴えました。

これに対し、国は「審理することなく、速やかに却下されるべきもの」、また、東京電力も「請求を棄却することを求める」として、いずれも全面的に争う姿勢を示しました。

新地町の漁師・小野春雄さん「30年後、50年後に我々の子孫が生活できない、生業ができない、海は漁師のものばかりではなく、みんなのもの。海に放出しては絶対にダメ、止めてもらいたい」

次回の裁判は6月13日に開かれます。

処理水放出 原告側は「二重の加害」

法廷闘争に発展した処理水の海洋放出。訴えのポイントをまとめました。

原告は、県内外の市民や漁業関係者などで、151人の1次提訴の後、2次提訴で212人が加わって、363人となりました。原告は県内のほか、新潟や茨城、千葉、北海道など、全国から参加しています。

被告は国と東京電力です。原告側は国=原子力規制委員会に対して、放出する際に出した認可などを取り消すよう求めています。また、東電には、海への放出をやめるよう求めています。

原告側は放出を「二重の加害」と位置づけました。原発事故という「重大な過失」により、平穏に生活する権利を侵害された当事者に対し、処理水の放出は「故意に行う新たな加害行為」と主張しています。

そして、漁業者に対する政府の支援策について、このように主張しています。「援助をしなければならないこと自体、漁業価値の減少や毀損が生じていることの証左」としています。

原告の主張に対し、国と東電は、全面的に争う姿勢を見せました。

法廷闘争に至った処理水の海洋放出ですが、処理水の放出に関してはIAEA(国際原子力機関)が国際的な安全基準に合致していると評価する中、裁判所がどう判断するのか注目されます。

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