山岳遭難、アプリで発見 茨城県警、事業者と協定 GPS活用 位置を特定

連携協定を締結した県警の薗部修地域部長(左)とヤマップの矢島夕紀子プロジェクトリーダー=県警本部

茨城県警は、山岳遭難者を早期発見・救助するため、遭難者の位置情報を把握できるアプリの活用を始める。これまでは消防を含め大がかりな捜索を実施していたが、アプリを使用する遭難者の居場所が絞り込みやすくなり、早期発見に役立てられる。4日、サービス事業者と連携協定を締結した。

アプリは、登山アウトドア向けのスマートフォンアプリを運営する福岡市の「ヤマップ」が開発。衛星利用測位システム(GPS)を活用し、ダウンロードした地図上に登山者の現在地を表示できる。活動時間や距離、標高も分かるほか、正式な登山届として警察に提出も可能。

これまで登山者の情報は登山口の専用箱やメールで警察に提出された登山届でしか把握できず、捜索隊は遭難場所の特定に時間がかかっていた。警察犬を動員した広範囲な捜索が数日間に及ぶこともあった。

アプリには見守り機能が付いており、通信環境がない場所でもアプリ利用者同士が擦れ違えば、近距離無線通信「Bluetooth(ブルートゥース)」で位置情報が交換できる。いずれかの登山者のスマートフォンが通信可能となった時点で、同社サーバーに情報が送信される仕組み。

遭難した可能性がある場合は、家族などから連絡を受けた県警が、同社に遭難者のアプリ利用の有無を照会。利用している場合、同社が遭難者がいる場所の緯度、経度の位置情報を捜索隊に直接伝える。通報から情報伝達までの作業時間は約10分で、範囲を絞り込んで捜索ができるようになり、発見までの時間が短縮される。

県警によると、県内で2023年に起きた山岳遭難は29件で、22年から8件増加。遭難者のほぼ半数が県外から訪れた登山者で、遭難の原因は道に迷ったことが最多だったという。23年10月には大子町の男体山で登山中の男性が滑落死する事故もあった。

4日開かれた連携協定締結式で、同社の矢島夕紀子さんは「山は楽しい一方、自然なのでリスクがある。しっかりとした準備や最新情報をキャッチして楽しんでほしい」と話した。県警の薗部修地域部長は「早期救助には情報収集が重要。協定締結で安全な登山の実現につながる」と話した。

登山ルートのイメージ。青い線が踏破済み部分となる(ヤマップ提供)

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